「家庭内で家事や育児が女性に偏っている場合、女性の満足度は低下していく」
そんな現状を数値化した内閣府の調査結果がある。
平日1日あたりの家事時間や、育児休業の取得率には男女間で大きな開きがあり、政府も少子化の原因の一つとして目を向けている。
家庭と仕事の両立。家事や育児の負担。性別が違うだけでどれくらいの差があるのだろうか。
0〜10点満点で評価
調査は、内閣府が2022年7月に公表した「満足度・生活の質に関する調査」。
全国の1万633人(15〜89歳)が昨年2月10〜28日、インターネット上で回答した。
「仕事と生活(WLB)」や「子育てのしやすさ」といった13分野について聞き、それぞれの満足度を0〜10点満点で評価してもらったりした。
調査は、経済社会の構造の変化が生活にどのような影響を及ぼすのかを明らかにするため、内閣府が2019年から毎年実施している。
女性に偏る家事時間
この調査によると、平日1日あたりの家事の時間は、女性が男性より長い傾向にある。
配偶者がいる男性(回答者2297人)と女性(同1699人)の場合、家事の時間が「2時間」と答えた男性の割合は16%だったが、女性は2倍の34%に上った。
「3時間」では、男性は3%しかいなかったが、女性は23%もいた。「4時間」は、男性の1%に対し、女性は12%と“5人に1人”の割合となった。
女性は、8割超が2時間以上、5割ほどが3時間以上の家事をしているということだ。
女性は働いていても……
また、正規雇用者の男性(回答者2904人)と女性(同1620人)でも同様の傾向がみられた。
男性は「1時間」(39.2%)が最も多く、「30分」(22.7%)、「2時間」(17%)、「やってない」(15.8%)と続いた。
一方、女性で最も多かったのは「2時間」(31.8%)で、男性でほとんどいなかった「3時間」も12.4%に上った。「4時間」と「5時間以上」も計8.5%いた。
つまり、家事に2時間以上かけている割合は、男性は2割程度にとどまるが、女性は正規雇用者であっても5割超を占めている。
家事時間が長い→WLB満足度が低下
一方、家事の時間が長くなるにつれ、正規雇用者の「仕事と生活(WLB)」満足度(0〜10点満点)が低下することも判明した。
男性で満足度が維持されていたのは「2時間」で、男性が5.42点。女性は5.54点だった。
ただ、「3時間」になると、男性は0.45ポイント減の4.97点となり、中央値の5点を割った。女性は0.23ポイント減ったが、5.31点にとどまった。
「4時間」では、女性も5点を下回る4.94点で、男性は4.86点だった。
正規雇用者の場合、平日1日あたりの家事の時間は、男性は3時間から、女性は4時間から、それぞれ著しくWLB満足度が低下した。
なお、“非正規雇用者”の女性は、「3時間」で5.46点、「4時間」で5.21点、「5時間以上」で5.50点と、時間が長くなってもWLB満足度は低くならなかった。
育休を両者で取得すると……
これまで、女性が男性よりも家事を長くしていることや、正規雇用者は家事の時間が伸びた場合、男女ともWLB満足度が低下することがわかった。
では、女性に負担が偏りがちな育児はどうか。カップルごとの育休の取り方で、認識が変わる事が分かった。
「育休の取得と子育ての楽しさの関連性」について、男性630人、女性777人がそれぞれ回答した。
その結果によると、育休を「配偶者が取得」した場合、子育てを「楽しい」と回答した人の割合は、男性が30.4%、女性が18.8%だった。
配偶者が育休を取得した場合、子育てを「楽しい」と回答した女性の割合は、5人に1人にとどまった。
しかし、カップルのいずれも取得した場合は、女性の50%が「楽しい」と回答した。
「どちらかと言うと楽しい」も加えると、86.8%という高水準となった。
「仕事と生活(WLB)」満足度でも同様の傾向があった。
育休をカップルで取得した場合、女性は6.66点に達した。これは、「自分が取得」(6.23点)、「配偶者が取得」(5.94点)よりも高い数字だ。
男性も6.24点と低くはないが、「自分が取得」(6.80点)、「配偶者が取得」(6.38点)を下回る結果となった。
つまり、カップルで育休を取得すれば、女性は子育てを楽しいと感じ、WLB満足度も高くなる傾向にある。