「JRが東京の駅で乗車券を確認したら、3万8000人がキセル(不正乗車)をしており、その7割が女性だった」という趣旨のツイートが拡散している。
しかし、この情報は「ミスリード」だ。
JRが最近に調査したような文言だが、実際は1979年の国鉄時代の話だ。
BuzzFeed Newsはファクトチェックした。
経緯を振り返る
この情報は、1月22〜23日にかけ、複数のまとめサイトが発信した。
なかでも6万人以上のフォロワーがいる「ツイッター速報〜BreakingNews」というアカウントは1月22日に以下のようにツイート。
JR「職員413人を東京の改札に配置し臨時で乗車券確認したら3万8000人がキセルしてました。7割が女」
26日午後3時現在、1100リツイート、2800いいねと拡散。30万インプレッションを獲得している。
「News Everyday」「ツイッター速報」なども同じタイトルの情報を発信し、同様に拡散していた。
いずれのまとめサイトも、不正乗車(キセル)の実態を解説した交通・運輸系ニュースサイト「Merkmal」の記事が貼り付けられていた。
添付された記事に書かれていたこと
では、Merkmalの記事には何が書かれていたのか。
記事は1月22日、【「キセル = 犯罪行為」なのになぜ平気でいられるのか しかも、かつては「キセル研究会」まで存在していた!】という見出しで配信されている。
内容は、同月に新幹線で起きた無賃乗車事件に関するものだが、関連する話として次のような記述もあった。
1979(昭和54)年7月29日、夏休みも始まったばかりの日曜日に、当時の東京南鉄道管理局では、東京、新橋、川崎など14駅のホーム階段付近に臨時改札口を設け、413人を動員して特別改札を実施した。
時間は午後3時半から同7時半までの4時間だけ。ところが、この4時間だけで、不正乗車でひっかかった乗客は約3万8000人。実に乗客の10人に2人がキセル乗車をしようとしていたのである。
多くが海水浴に出かけた者だったのか、9割は若い男女。しかも7割は女性だった。
つまり、国鉄時代の1979年に東京など14駅で特別改札を実施したところ、約3万8000人が不正乗車をしており、うち7割が女性だった、ということだ。
JR東日本は取材に
なお、Merkmalの記事に紹介されていた情報は事実だ。
BuzzFeed Newsは、1979年7月30日付の読売新聞夕刊でもこの「特別改札」に関する記事が掲載されていることを確認した。
まとめサイトが記したように、東京だけでなく神奈川でも特別改札を実施していたこともわかる。
「国鉄」は1987年に民営化され、JR各社が発足している。それ以前に、そもそも特別改札の調査も40年以上前のものだ。
これを現在のJR東日本が実施した調査のように紹介したまとめサイトの見出しはいずれも「ミスリード」であるといえる。
JR東日本首都圏本部の広報担当者は取材に「国鉄時代の話となり、弊社としてコメントする立場にない」と回答した。
拡散には注意が必要だ。
BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。
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- ほぼ正確 一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない。
- ミスリード 一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。
- 不正確 正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。
- 根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
- 誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。
- 虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
- 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
- 検証対象外 意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。