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「同性愛とか…」「家族ができないで日本は…」自民候補が発言。核家族も“やり玉“に「優生思想的」と批判も。参院選演説で

参院選立候補者の発言に批判が相次いでいます。専門家は「当事者を傷つける」と話しています。

「同性愛とか、いろんなことでどんどんかわいそうだと言って」「家族ができないで、子どもたちは日本に引き継いでいけるんですか?」

参院選比例区に自民党から立候補している井上義行氏(59)が6月22日、自身の出陣式で行った発言が、波紋を広げている。

性的マイノリティへの差別とも受け取れる発言だけに、ネット上で「論外な人権侵害発言」「差別的で攻撃的な言葉」などと批判が噴出。

一方で井上氏は7月1日の演説でも「家族をしっかりとつくるために、私は同性婚には反対」などと発言しており、専門家は「当事者を大きく傷つける」と指摘している。

「あえていいますよ。同性愛とか……」

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井上氏のYoutubeチャンネルより

井上氏の公式サイトなどによると、井上氏は高校卒業後、当時の国鉄に入社。働きながら日大経済学部(通信制)を卒業し、国鉄民営化に伴い総理府(現・内閣府)に入った。

小泉政権時代に官房長官だった安倍晋三氏の秘書官を務め、第一次安倍内閣(2006〜7年)で安倍首相の首席秘書官を務めた。2009年に無所属で、12年には「みんなの党」から、いずれも衆院選神奈川17区に立ち落選。

2013年の参院選比例区にみんなの党から出て初当選。19年参院選比例区に自民党から立候補し、落選している。

井上氏の発言があったのは参院選公示日の6月22日。地元・神奈川県小田原市で行った出陣式だった。

「今、私は分岐点だというふうに思っています。なぜ分岐点か。それは、今まで2000年培った家族の形が段々と、ほかの外国からの勢力によって変えられようとしているんです」

「昔は皆さん考えてみてください。おじいちゃん、おばあちゃんやお孫さんと住んだ3世代を。その時は社会保障そんなに膨れてこなかった。でも、核家族だ、核家族だ、個々主義だ。こういうことを言っている」

「そして、どんどんどんどん、僕はあえて言いますよ。同性愛とか、いろんなことでどんどんかわいそうだと言って、じゃあ、家族ができないで、家庭ができないで、子どもたちは本当に日本に、本当に引き継いでいけるんですか?

「しっかりと、家族を生み出し、そして、子どもたちが多く日本に、しっかりと産み育てる環境を私たちが、今、つくっていかなければいけないと思いませんか皆さん」

支援者からも大きな歓声

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井上氏のYouTubeチャンネルから

井上氏は7月1日に小田原市で行った演説でも「同性婚」について触れた。

「私は今、ここに目の前にいる家族がいます。この家族と一緒に、この選挙カーに乗って戦いを挑んでいます。私はこの家族がいたから、今こうやって立っています」

その家族をしっかりとつくるために、私は同性婚には反対!そして、そのための、青少年健全育成法をつくって参ります」

「そして、どの家庭でもしっかりと家庭が持てるために、家庭教育支援法をしっかりと制定していきます!」

演説では支援者から拍手と歓声が上がっていた。

識者「優生思想的な発言」

Twitter上では井上氏の発言について、「日本の少子化は同性愛のせいじゃない」「自分が自分らしく生きることの何が悪い?」といった批判が相次いでいる。

BuzzFeed Newsは、LGBTに関する政策提言や当事者のための法整備に向けた活動をしている「LGBT法連合会」の神谷悠一事務局長に取材した。

神谷事務局長は一連の発言について、「同性愛だけでなく、『核家族』もやり玉にあげています。今の日本では核家族の家庭が多数を占めてますが、こんな発言を総理の元秘書官がしていること自体、本当に恐ろしいこと」と指摘した。

また、井上氏の発言が選挙期間中だったことに触れ、「同性愛を『おもちゃ』にしているのでしょうか。もし、同性愛や核家族の話を出して票が取れると思っているのであれば憤りを感じるし、当事者を大きく傷つけることになります」と話した。

そして、「子どもがいるかどうかで優劣がつけられるのは、極めて優生思想的な話。それが同性愛から核家族まで波及している。全体的に差別的な話だと思います」と語った。

差別的な内容が書かれた冊子が配布

LGBTに関する政治家の問題発言はこれまでも度々、起きてきた。

自民党の杉田水脈衆院議員は、2018年7月に発売された月刊誌で「彼ら彼女らは子どもをつくらない、つまり『生産性』がない」と考えを示し、その後「生産性という言葉は不適切だった」と謝罪した。

また、同じく自民党の平沢勝栄衆院議員は19年1月、山梨県で開かれた集会で少子化問題に触れ、「この人たちばかりになったら、国がつぶれてしまう」と発言した。

最近では、自民党の議員が参加した会合でLGBTらに差別的な内容が書かれた冊子が配布されていたことも明らかになった。

朝日新聞によると、冊子は6月13日に開かれた「神道政治連盟国会議員懇談会」で議員らに配られた。

「同性愛は先天的なものではなく後天的な精神の障害、または依存症」や「個人の強い意思で依存症から抜け出すことは可能」などと書かれていたという。

極めて非科学的な事実誤認

これを受け、LGBT法連合会は7月4日、抗議声明をホームページ上で発表。次のように批判している。

「性的指向や性自認が、自分の意思で選択できるかのような言説や、医学的に治療可能であるかのような主張は、半世紀以上にわたり、世界の当事者コミュニティを苦しめてきた。極めて非科学的な事実誤認」

「人権を蹂躙した非科学的な言説をもとに、政策を検討、議論することなど決して許されない。立法府をはじめ、多様性に関する議論は、人権の尊重を大前提としてなされるべきで、この認識は国際的にも共有されている」

「今回の言説は、その中でも最も筆舌に尽くし難い、目を覆わんばかりの差別そのものであり、当事者に与える悪影響は計り知れない」

BuzzFeed Newsは井上氏の選挙事務所に発言に関する見解を問い合わせている。4日夕現在で回答はない。届き次第、追記する。