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「結局、男女の関係やったんやろ?」卑劣な性暴力を受けた女性が、警察署で直面した“2次被害”

睡眠薬とアルコールを一緒に飲まされた場合、事件当時の記憶がなくなる「一過性前向健忘」という症状に苦しむケースがあります。被害者に話を聞きました。

2人でご飯を食べている時に突然記憶をなくし、気づいたらホテルのベッドにいた。怖くなって警察に相談しても「合意してたんじゃないの?」と疑われたーー。

こんな辛い経験をしたことはありませんか?

睡眠薬などを飲まされて性的暴行された疑いがあるのに、警察に話を信用してもらえず、泣き寝入りする被害者がいます。

お酒と一緒に薬を飲まされると、被害に遭った時の記憶がなくなることがあります。

これは「一過性前向健忘(いっかせいぜんこうけんぼう)」という症状で、話を信用してもらえない要因になります。

BuzzFeed Newsは、こんな被害を受けた女性に話を聞きました。苦しみは、今も続いています。

傷は一生消えない

「被害に遭う前に戻してほしいです。傷は一生消えません」

関西地方に住む女性は2021年1月、マッチングアプリで知り合った男と食事をしました。

男が指定した駅で昼間に待ち合わせ、男が選んだ居酒屋に入りました。ほとんど訪れたことがない土地で、居酒屋では個室に通されました。

女性もアルコールを注文。もともとお酒は飲むほうで、酔っ払った経験はほとんどなかったそうです。

目の前が揺れるような感覚

なんとなく盛り上がらない会話が続き、ラストオーダーでもう1杯アルコールを頼みました。

女性はその後、トイレに行き、再び席に戻ってグラスに残っていたお酒を飲みました。

体に異変を感じたのはこの後からです。これまで4、5杯しか飲んでいないのに、急にふらつくような感覚がありました。

いつもならこの程度では酔っ払いません。

気分が悪くなったため、会計前に再びトイレに駆け込んで吐きました。目の前が揺れるような感覚があり、必死に意識を保ちました。

男が覆いかぶさっていた

男が会計をしているときは、後ろでふらつきながら意識がもうろうとしていたといいます。

会計後、男はなぜか来た道とは逆の方向に向かって歩いていました。

「え?なんで?」。ふと、信号が目に入り、意識がなくなりました。

まるで麻酔を打った時のようにスーッと意識が遠のく感覚があったといいます。

それから上に引っ張られるような感覚がありましたが、次に覚えているのはホテルのベッドで男に覆い被されていた時でした。

財布に現金が入っていない

しかし、体がうまく動きません。また記憶が途切れた後、吐き気がして洗面所に駆け寄りました。

その際、男が着ていた黒のダウンが目に入りました。

それからも吐き気がおさまらず、洗面所にいると、ホテルのフロントがドアをノックし、大声で話してきました。

「お客さん、時間なので出てください。会計は終わっています」

意識もうろうの中、裸だったため急いで服を着ました。かばんの中身を確認すると、財布にお金が入っていませんでした。

パニックで階段を駆け降り……

距離感と平衡感覚がないなか、パニックでホテルの階段を駆け降り、通行人に駅までの道を聞き、電車に乗りました。

その間も震えが止まりません。お腹に痛みがあり、叫びたい気持ちになりました。

女性は「薬物を飲まされた」ではなく、「泥酔してしまった」と思い込んでいました。帰宅後、すぐにシャワーを浴び、警察に電話しました。

電話口の声が男性だったため、なかなか性被害については言い出せず、「お金を盗られた」とだけ伝えました。

しかし、ホテル名は連れ込まれたため知りません。どこで盗られたのか答えられなかったため、後日改めて警察に行くことにしました。

デートレイプドラッグ

事件から1日がたった日の午後、家族に相談しました。

家族は経緯を聞き、睡眠薬などを性的暴行目的に使う「デートレイプドラック」を飲まされた可能性を指摘しました。

そして、家族に付き添われて警察署に行きましたが、ここでも心に傷を負う経験をすることになりました。

結局、男女の関係やったんやろ?

警察署ではロビーで話を聞かれました。

男性警官が対応したため、ここでも性被害のことを言えず、「マッチングアプリで会った人に金銭を盗まれた」と伝えると、「あんたも遊んでたんやろ?」と言われました。

そして、次のような言葉に動悸がおさまらなくなりました。

「場所がわからないんやったら被害届も出せへんで」

「マッチングアプリで被害に遭ってこうやって来る人よくいるんよ。結局、男女の関係やったんやろ?」

女性は意を決して性暴力に遭った可能性を伝えましたが、連れ込まれた場所を知らないために被害届を出せませんでした。

尿から検出されず

女性は家族と一緒にホテルを探すことにしました。

男と待ち合わせをした駅周辺を歩き回り、たまたま入ったホテルのフロントが女性の顔を覚えていました。

こうして連れ込まれたホテルが判明。事件から1週間後にようやく被害届を出すことができました。

警察の捜査では、居酒屋の防犯カメラに女性と男の姿が映っていたことも分かりました。

その後、女性警官に付き添われて産婦人科に行き、尿検査や梅毒検査などをしましたが、事件に使われた薬物の成分は尿から検出できませんでした。

事件性の立証ができず、男は今も自由の身です。

いつ、誰が被害に遭ってもおかしくない

女性はPTSDを発症し、日常生活もできず、外出や男性の話し声、大きな音が怖い状態がずっと続いています。

また、フラッシュバックや悪夢、被害に遭った時間帯は体が強ばる後遺症があります。

「いつ、誰が被害に遭ってもおかしくない。捜査機関に薬物を使った性暴力に関する知識がなければ、被害者は増すばかりです」

女性はこう述べ、次のように訴えました。

「いま生きてるから言えることですが、薬が使われて急に意識がなくなるのはとても怖く、ひとつ間違えれば死んでいたと思います。意識もうろうでホテルに連れ込まれ、加害者の欲望で人権も奪われました」

レイプドラッグによる性犯罪の取材をしています

睡眠薬などの「デートレイプドラッグ」を飲まされて性暴力を受けた。でも、捜査機関が話を聞いてくれない。

BuzzFeed Newsでは、このような卑劣な性暴力と、「一過性前向健忘」による影響を取材しています。

もし、勇気を出して話していただける方がいましたらご連絡ください。

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