アメリカン・ドリームを夢見て…。労働階級の目からみたアメリカの現実

    「アメリカに来たことがないメキシコ人は、自分もアメリカにさえ来ればすべてが上手くいくと考えています。実際は違います。もうそうではありません」

    サム・コメン氏は、ロサンゼルスを拠点とする写真家だ。彼の「人」に対する興味は尽きないようで、たくさんのポートレートを集めた作品が多い。

    彼の最近のプロジェクトのひとつ「Working America」(働くアメリカ)は、「移民であること」と「労働者」であることが交差する部分を、包括的に捉えている。

    「Working America」から12枚の写真と、そこに写る労働階級の移民たちが語るそれぞれの現状を紹介する。

    1. ヘスース・セラさん、皿洗い

    Sam Comen

    「私はアメリカ生まれですが、アメリカ人というよりも、メキシコ人だと思っています」

    「私と双子の兄弟はハリウッドで生まれましたが、両親はメキシコのチワワ出身です。25年前にアメリカに来ました」

    「英語よりも、スペイン語を話す方が楽です。妻はアメリカ生まれで英語しか話せず、私はスペイン語で答えます」

    「移民にとって今は状況が違います。新しい法律ができ、入国するのが難しく、すべてが以前よりも高価です」

    「母国では、支援を受けられない家族が多いです。アメリカに着いても、何も知らない。法的な書類がないと、仕事を見つけるのも容易ではありません。最近は難しいです」

    3. チョン・ヨンエさん、仕立て職人

    Sam Comen

    「韓国で、夫を事故で失いました。悲しくて働けませんでした。長いことひとりでいました」

    「アメリカの印象は良かったので、すでにこちらにいた家族に手伝ってもらい、アメリカに渡って子ども達とやり直そうと思いました」

    「隣人を愛し、富を分け合う考え方は、私にとって重要です。アメリカはこの理念に基づいて築かれていると私は考えています。だから、アメリカが好きです」

    2. シンシア・パトリシア・アギュラーさん、シェフ兼給仕

    Sam Comen

    「一度移住したら、自由をみつけられるのですよね? しかし実際は、自由がないみたいなのです」

    「米移民・関税執行局(ICE)が家に来て、両親を連れて行くのは、アメリカのやり方とは思えません。そしてその場には子どももいるのです。かなり度肝を抜かれます」

    「何が起こっているのでしょう? 悲しいことです。まったく人道的ではありません」

    「このような経験をすると、考えさせられます。私はアメリカで、光も、道も、人々も、あらゆるものを見ました。しかし、それだけではありません。アメリカでの生活はもっと大変だということにも気づかされました」

    「憎しみもたくさんあります。政治家は今、人々をもっと怒らせていると思います。みんな戦い合っているのです。これまでにもありましたが、悪化しています。毎日、新しい増悪表現(ヘイト)を耳にしますが、恐ろしいです」

    7. ボリス・マカンさん、給仕人

    Sam Comen

    「私の職業では、(人種の)構造が実に明快です。誰がラテンアメリカ系で、どこで働いているのか。誰が白人で、どこで働いているのか」

    「私は移民だと認識していますが、他の移民よりもチャンスが多いと思っています。私は店の表で働いています。ラテンアメリカ系の人は店の裏で働いていることが多く、そういうものだと思われています」

    「(表に出ている)私の方が、恐らく稼ぎがいいでしょう。必ずしも公平ではありません。私よりも長くここにいて、私よりも英語が話せる人もいますから」

    「少なくとも外見に限っては、私は馴染んでいると思います。ですから、ここに辿り着くのにあまり問題はありませんでした。しかし、そういうチャンスがなかった人がいることも知っています」

    4. ヒシャム・アバフサインさん、撮影現場の電気技術者

    Sam Comen

    「人々は親や周りの人々から学び、属している社会から、世界についての意見を形づくります。これは、とても恐ろしいことです」

    「私には、11歳の息子がいます。自分の責任のもとで、話し合いや議論ができるように息子を育てたいと思っています」

    「このような世界に住んでいるのは、本当に怖いです。自分が若かったときは、まったく逆のことを考えていました。でも今は『彼ら』と『私たち』に二分化されています」

    「でも、この障害を乗り越えられると私は確信しています。実のところかなり楽観的でもありますが」

    「私はアメリカ人です。何を持ってアメリカ人だと見なすか見なさないか、他の人がどう考えるかは気にしません」

    6. モニカ・ボツィオ・エッサンドーさん、仕立職人

    Sam Comen

    「私はアメリカン・ドリームを成し遂げました。学資援助を得て、学校へ行くことができました。そうしたら、(アメリカ政府は)助けてくれます」

    「学ぶ意欲があれば、道を示してくれます。賄賂を要求したり、向上心を奪おうとしたりする人はいません。成し遂げると心がけていたら、やり遂げられます。アメリカに来て、英語をまったく理解できない人もいますが、それでも学校に行けます。すべては決意次第です」

    「私たちはみんな平等です。誰もが可能性を秘めています。みんなが幸せでいられるように、誰にでもやることがあります」

    「道を掃除する人もいれば、弁護士になる人もいます。全員が弁護士になったら、誰が道を掃いてくれるのでしょうか。誰が看護師になるのでしょうか。誰が洋服を縫うのでしょうか」

    5. マリオ・ロサレスさん、パン職人

    Sam Comen

    「実のところ、(トランプ政権の移民に関する構想の何が悪いのかは)分かりません。確かに、私たちの中には、やってはいけないことをやる人もたくさんいます」

    「ですが本当に助けが必要な人もいます。多くの人がアメリカに辿り着き、学校へ通っています。法的な書類を持っていなくても、ご存じのように、みんな努力しています」

    「政府には助けて欲しいです。まずは、助けるべき人々が誰なのか、どのように生きているのかを、政府は確認すべきです」

    「アメリカに来たことがないメキシコ人は、自分もアメリカにさえ来ればすべてが上手くいくと考えています。実際は違います。もうそうではありません」

    8. シャロン・チョイさん、造園工具修理店 店主

    Sam Comen

    「1990年に事業を始めたときは、ゼロからのスタートでした。夫は夜学に通い、自動販売機で25セントのコーヒーも買えませんでした。そのときと比べたら、今は贅沢に暮らしています」

    「今は、稼ぐだけではなく、他の人を助けるために、ここで働いています。神様が私たちに与えてくれたものを考えると、それが私の義務だと信じています」

    「他の人がどう成功を定義するのかは分かりません。でも私は聖書に従って、日々正直に生きることに注力しています」

    9. オトン・ゴンザレスさんとマヘル・ショロキアンさん、ガラス工

    Sam Comen

    ゴンザレスさん(左):「私の一番上の義理の息子は16歳なのですが、セラピーを受けています。入国管理の問題です」

    「入国管理局が家に来て、私を拘束し、私は1週間拘留されていました。その後息子の成績が落ちて、本当に心配していました。入国管理局がまた来て、私たちを引き離すのではないかと、常に恐れて過ごしていたのです」

    「私の面会予約が入っていると、息子は指を鳴らしはじめ、常に爪を噛み、ものすごく神経質になります」

    ショロキアンさん(右):「ベイルートからアメリカに来たとき、私たちは何も持ってきていませんでした。ゼロからのスタートでした」

    「家族を養うために働かなければなりません。ガラス工は家業でした。電話帳に小さな広告を出したら、電話がかかってきました。フランクという名前でした」

    「小口の仕事をしたところ、店はあるのかと尋ねられました。店は持っていない、と答えたら、ついてくるように言われました」

    「ハリウッドにあるケンモアへとついていったところ、『ここで店を3カ月、6カ月やってみなさい。無料でいい。できるかどうかやってみなさい。やりたくなかったら、店を返してくれればいい。金はいらない』と言われました」

    「ああ、神様、彼は私に働く術を与えてくれた、と私は思いました。そして、事業を始めました。ハリウッドのノース・ケンモア・アベニュー1703番地、1986年4月24日の出来事です」

    「私はアメリカに来たばかりで、どうやればいいのか分かりませんでした。アメリカはとても大きな国です。レバノンはとても小さくて、みんな顔見知りなのに、アメリカでは知っている人なんていません。互いを理解するには、とても長い時間がかかります」

    10. アントニオ・ゴメスさん、牧場従業員

    Sam Comen

    「私の両親は当時、多くのチャンスを目にしていました。だから私をここへ連れてきて、学校へ入れました」

    「多くの人は、夢を持っていません。私には、家を持って生活をより良くしたいという夢があります。私の子ども達にも、より良い生活を送って欲しいです」

    「私は両親の教えを守っています。『もっと上手くやる』こと。どこでも(周りの人と)差をつけること」

    「カリフォルニアは、チャンスがある場所です。チャンスが来たら、掴んで離してはいけない。仕事もそうですし、職業もそうです」

    「何を手に入れたいのか。人生で何を成し遂げたいのか。ここにその手段はあります。ここに来て、手に入れればいい。それが私の考え方です」

    11. マリア・レオノール・ガルシアさんとエリザベス・ガルシアさん、レストランオーナー、マネージャー

    Sam Comen

    レオノールさん(左):「正直なところ、今はアメリカに来るのは望ましくないです。メキシコで、入国管理局がどんな状況下は分かるでしょう。ここと同じか、もっと酷いか」

    「(アメリカでは)外国人としかみられません。ここにいるラテンアメリカ人でさえも(私たちへの視線は)同じです。(移民を)見つけ出して、入管を呼び、連れ出します」

    「すでに多くを失っています。多くの人が、私たちが働くためにここにいるとは思えないみたいです」

    「(店を)始めたとき、レストランは取るに足らないものでしたが、店を大きくできると思いました。もちろん、たくさん働きました。多くを望んだことはありませんが、何でも手に入れらました。子ども達も、必要なものは持っていました」

    エリザベスさん(右):「子ども達には毎日、おばあちゃんを見て、おばあちゃんに感謝しなさいと伝えています。残念ながら、母は私のそばにはいられなかったから」

    「母は、私の人生の半分を見損ないました。6年次の卒業式にも、試合にも参加できませんでしたし、高校の卒業式にもほとんど参加できませんでした。朝6時から夜10時まで働いていたからです」

    「今、私は自分の子どもの運動会にはすべて参加できます。私がすべてを手に入れられているのは、母が苦労したからであり、そのことにはいつも感謝します」

    12. サフワン・アルマルキさん、バレーパーキング係員

    Sam Comen

    「いい仕事をして、一生懸命働き、一生懸命学んだら、アメリカは100%確実に『ウェルカム』と言ってくれると思います」

    「アメリカは、優秀な人が欲しいからです。間違いありません。悪い人は欲しがっていません。ですから、私の経歴は全て『綺麗』でないといけません。傷がついてはいけないのです」

    「いつの日か、アメリカに住んで、アメリカで仕事を見つけ、永住権を取り、働いて、何でもできるようにするために」

    「目標を達成するためにすべてのエネルギーを注ぎ込めば、(アメリカン・ドリームは)叶います」

    📷近日中に、写真家サム・コメン氏のインタビュー記事も配信予定です。

    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:五十川勇気 / 編集:BuzzFeed Japan

    UPDATE

    人物名の表記を一部修正しました。