
17歳のムスリムの女性がTikTokに投稿した動画がネット上で拡散している。メイクのチュートリアルから始まるが、最後には「中国がムスリムを強制収容所に入れている」と批判しているものだ。
投稿主はアメリカ・ニュージャージー出身のフェロザ・アジズ。投稿から数日後、TikTokの運営側により動画は削除され、アジズのアカウントは凍結された。
これには多くの人が憤慨した。TikTokを運営する中国のデベロッパーByteDanceは、中国共産党に反対する意見の検閲を行っており、これがTikTokの微妙な立ち位置につながっていると噂されている。
しかしTikTokはBuzzFeed Newsに、アカウント凍結の理由は別の動画(オサマ・ビン・ラディンのジョークの動画)にあると話した。
「まず、最初はまつ毛カーラーを使って、まつ毛をカールさせるのよ。いいでしょ?」と、TikTokの動画で話すアジズ。
メイクをしながら、彼女は中国についての話を始める。
「そしたらまつげカーラーは置いて、今度はスマホで今中国で何が起こっているのか、罪の無いウイグルのムスリムの人たちが、どのように強制収容所に入れられているかを検索してみて」
「これも一種のホロコーストなのよ。でも、まだ誰も話していないけどね」
i always wondered how girls get they eyelashes so curled up and everything
現在、約100万人のウイグル人のムスリムが、中国北西部の新疆ウイグル自治区の収容所に収容されている。この収容所は、アメリカおよびその他の多くの国から厳しい批判を受けている。
収容所では、ウイグル人のムスリムの家族は離れ離れにされ、また収容されている人は暴力を振るわれたり拷問されたり、そして中国共産主義のプロパガンダを学ばされ、中国政府を称賛する歌を歌わされることもある。
11月25日、アジズはスマートフォンからTikTokにアクセスできないことに気づく。これをシェアしたところ、ネット上で多くの人が、TikTokが中国政府に対する批判を検閲しているとして非難した。
TikTokは、アジズのアカウント凍結と強制収容所の動画は無関係だと話しているが、アジズの考えは異なる。
「強制収容所をネタにした動画を投稿した直後に、TikTokが私の動画を削除したのではないかと疑っています。TikTokが本当のことを言っているようには聞こえません」
今回の事件は、TikTokが「国家安全保障上のリスク」をもたらすかどうかについて、アメリカ議会が疑問を提起した1カ月後に起きた。
「アメリカだけで1億1千万件以上ダウンロードされているTikTokは、無視することができない潜在的な防諜の脅威である」とチャック・シューマー上院議員とトム・コットン上院議員が書いている。
「これらの懸念があるため、インテリジェンス・コミュニティに、TikTokおよびアメリカで運営されている他の中国系コンテンツのプラットフォームによってもたらされる国家安全保障のリスクの評価を実施し、調査結果について簡単な会議を開くよう願いたい」
TikTokは先月のブログの投稿で、「TikTokは、中国に関する感度に基づいてコンテンツを削除することはしない」と述べた。
「中国政府からコンテンツの削除を求められたことは一度もありません。また求められた場合でも、動画を削除することはしません」
.@x_feroza says #TikTok capitulated to China & blocked her account after she posted this fab clip [sound on]
TikTokの広報担当者はBuzzFeed Newsに、アジズのアカウントを凍結した原因は強制収容所の動画ではなく、オサマ・ビン・ラディンを性的にネタにした動画だと話した。
しかし広報担当者の説明は正確ではなかった。確かにアジズは、元アルカイダのリーダーであり、9.11のテロの首謀者のオサマ・ビン・ラディンをネタにした動画を投稿しているが、その内容はTikTokのミーム(ジョーク)であって性的な内容ではないと、彼女は主張している。
「今TikTokでは、『 小さい頃好きだった男の子や女の子のタイプ』を投稿するのが流行っているんです」
「私は、『 私は前は白人の人が好きだったんだけど、今は中東系の人が好きなの』と言い、最後にはジョークとしてビン・ラディンを指したんです」
「もちろん最後のビン・ラディンは、少しブラックなジョークにすぎません。普通の感覚だったら、ビン・ラディンが好みのタイプの男性だなんて(本気で)言うわけないんですから」
アジズは他の投稿で、ジャスティン・ビーバーなどの白人の男性セレブの画像を出している。動画ではジェイソン・デルーロの「Whatcha Say」が流れており、ゼイン・マリクのような白人ではないムスリムの男性セレブが好きだと話している。
そして動画の最後に、ビン・ラディンの写真が出てきたのだ。
アジズは、BuzzFeed Newsのインタビューの前にTikTokに連絡したにもかかわらず、凍結の理由を知らされなかった。
「TikTokにメールで連絡したんですが、まったく連絡が返ってきません」
「月曜日の朝に起きてTikTokを開いたら、『アカウントが凍結されています』と表示されていたので、『まあ、しょうがないか』みたいな感じでした」
アジズのアカウントが凍結されたり、投稿した動画が削除されたりしたのは、今回が初めてではないそうだ。動画の削除やアカウントの凍結は、他の人に通報されたことが原因だと考えている。
アジズの前のアカウントも現在凍結されている。中国についての動画は、新しいアカウントから11月23日に投稿されたものだ。
「前のアカウントでは、多くの動画が削除されました。削除された動画は、すべてイスラム教に関連する動画です。ムスリムの人も笑うことができる内容を、ジョークのつもりで作ったつもりなのですが」
「これが今のTikTokの実情なんです。とにかく何でも通報したがる、『通報厨』みたいな人がたくさんいるんです」
アジズは、明らかにジョークだと思っていることを理由にアカウントを止められることに非常にいら立ち、また混乱していると話した。
「誰だってブラックなジョークを言ったりするでしょう。TikTokには、殺人やその他の非常に暴力的な内容の動画を投稿する人がいますが、そういった動画は削除されていないのです」
「でも私の動画は、同じムスリムの人や中東系の人だったら、楽しく笑えるようなジョークなのです。なのに削除されてしまったのです」
とはいえ、自分の動画が、現在中国で起こっている人権危機について多くの人が知るきっかけになったことは嬉しいと話している。
「私自身がムスリムなのですが、私は常に抑圧され、また同じムスリムの人たちが抑圧されているのをこれまでに見てきました。人権問題には常に関心があったんです」
「2018年からこの人権危機については知っていて、ずっと動画で話してきたのですが、誰も興味を持とうとはしませんでした」
「TikTokのユーザーが関心があるのは、みんながどんな服を着ているか、最新のスタイルは何か、新しいYouTuberで注目すべきは誰か、みたいなことばかりです。なので、TikTokでこの中国の収容所の問題を考えて欲しかったのです」
「困っている人たちを助けたかったのです。TikTokで人権危機の話をすることで、何か助けになるのなら嬉しいです」
この記事は英語から翻訳・編集しました。