脚本すごい!1話から期待の声が続出 演劇×深夜ドラマ「下北沢ダイハード」ができるまで

    演劇界の才能×テレビドラマの異色のタッグ「下北沢ダイハード」がおもしろすぎてプロデューサーに聞きました。

    何これ、めちゃくちゃおもしろいじゃん……。7月21日にスタートした深夜ドラマ「下北沢ダイハード」、超おもしろいです。テレ東さん〜〜!

    「下北沢で起きた人生最悪の1日」をテーマに、小劇場で活躍する人気劇作家11人が各話の脚本を書き下ろし。

    シチュエーションも役者も毎話異なる、何が起こるかわからない1話完結型のオムニバスドラマです。

    第1話は「裸で誘拐された男」。タイトルからしてヤバいですが内容もすごかった……。

    7月21日放送! #神保悟志 さん演じる政治家の秘密は…SM愛好。生粋のドMが女王様の命令で全裸でスーツケースに!?街中で他人の荷物と取り違えられた💬外からは身代金を要求する誘拐犯の声!どうなっちゃうの!? #下北沢ダイハード… https://t.co/qmj2aFoptY

    いろいろあって全裸でスーツケースに入ってしまった男が、ちょっとした手違いで「身代金の入ったスーツケース」として誘拐犯のもとへ運ばれる羽目に。絶体絶命のピンチ……一体どうなる!?

    まぁ、こんな風に説明してもわけがわからないと思うので(いやでも本当に、字面のとおりなんです)ぜひ見てほしいのですが、たった30分のドラマの中で二転三転。予想外のラストに着地します。1話完結なのできちんとオチが付いて気持ちがいいです。

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    下北沢ダイハード、昨日からはじまったみたいですね。面白いひとたちが集まってつくってるドラマ、11話全部、全然ちがう。1話のおじさんの裸と2話のおじさんの裸と6話のおじさんの裸は、全然ちがう。おじさんの裸の見せ方のバリエーションも楽しんでほしい。

    細川徹さんは2話「違法風俗店の男」で脚本・監督を担当

    演劇界の才能&深夜ドラマの化学反応。BuzzFeed Newsは、この企画を産んだテレビ東京の濱谷晃一プロデューサーにお話を聞きました。

    寄りで見ると悲劇、引きで見ると喜劇

    ――1話からすっごくおもしろかったです! 濱谷プロデューサーが長年あたためていた企画とおうかがいしました。

    「下北沢ダイハード」の前身として、最初は「すすきのダイハード」という企画が頭にあったんです。

    すすきのの風俗ビルが火災にあい、中にいる風俗嬢と客がなんとか脱出しようと必死で奮闘する。

    当人たちにとっては「タワーリング・インフェルノ」(1974年制作、パニック・ムービーの金字塔)なんだけど、外から見ると「な〜に仕事サボって風俗行ってんだ」ってツッコミたくなっちゃう、そんなギャップをやりたかったんです。ただまぁ、なかなか地上波向けの内容にならないなと(笑)。

    この「寄りで見ると悲劇、引きで見ると喜劇」なコンセプトは何か生かしたかったんですよね。1シチュエーションで人間の悲喜こもごもを表す、1話完結のオムニバス。

    それなら、普段自分が好きでよく観ている、小劇場演劇を手がける劇作家の人たちに頼むのはどうだろう、とひらめいたんです。

    “テレビっぽくない”脚本たち

    ――11話すべて別の脚本家。中には映像作品の経験がない方もいらっしゃいます。

    一人の演劇ファンとして好きな人、この企画に向いていそうな人、逆に「この人にやらせたらどうなるんだろう?」という人まで。作風もいろいろ、推薦された方も含めてお声掛けしていきました。

    「ダイハード」、つまり命がけでピンチを脱出するというテーマだけ決めて、各々にアイデアを出してもらって。劇団のカラーや作家の個性を前面に出したものにしたいと思っていました。

    ――普段、テレビドラマを作る時と勝手が違うことはありましたか?

    出てくる脚本を見て、舞台っぽいなと思ったのは「どんでん返しにこだわる」ところ。

    テレビ番組の場合、最初の10分でいかにヒキを作るかが最重要で、そこで興味をひいたまま、いかに最後まで見てもらうかを考えることが多いのですが、舞台の作り方は逆。終盤でこれでもかと畳み掛けてくる脚本ばかりで、いい意味でテレビ的でなく新鮮でした。

    簡単に“途中退出”できるテレビと違って、演劇は一度席についた人は最後まで観る。そして、最後にちゃんと満足させないといけないものなんですよね。

    今のテレビがなんとなく揶揄されるのって「最後まで見たのにこれだけかよ!」「あれだけ引っ張っておいて!」っていう肩透かし感だと思うんです。

    視聴者のみなさんの反響を見ていると、想像以上に脚本への評価が高くて、僕がこのドラマで見せたかった演劇の魅力がきちんと伝わったようでうれしかったです。

    1話を見た上司に「まだ最後の10分観てないけど、結構おもしろかったよ」と言われて「いやいや! 最後の10分見ないとダメなんですよ!」って返しました(笑)。

    ――確かに「最後まで見て!」と言いたくなります。私自身「この脚本の人、普段はどんな演劇やってるんだろう?」と興味を持ちましたし、実際に舞台に足を運ぶフックにもなりそうです。

    それはうれしい感想ですね。演劇を観る人自体も増えてほしいですし、埋もれがちな演劇界の才能に光が当たってほしい。

    このドラマで「こんなおもしろい人がいるんだぞ!」をもっと広く伝えたいです。

    新人脚本家の起用、は難しい?

    ――ドラマの脚本に経験の浅い人を使うのが難しくなっている傾向などはあるのでしょうか?

    おそらく今、脚本家には2つ大きな需要があると思います。

    1つは、有名脚本家。ヒット作を多く手がけてきて、「この人の脚本なら出たい」と大物俳優・女優をキャスティングできる、一人の作家としてネームバリューがある人。当然オファーも多いですし、各局順番待ちです。

    もう1つは、漫画や小説の原作を、映像作品としておもしろく料理できる職人肌の人。原作もののドラマは増えていますし、さまざまな立場の意見や要望を踏まえた上で脚本を作れるタイプの人のニーズは高まっているはずです。

    そうなると「自分のカラーがある新進気鋭の脚本家」が入り込める隙って……そうそうないですよね。90年代のテレビなんかを見ると実験的な枠が多かったですが、なかなか今は難しい。そういう意味でも今回はかなりチャレンジングな試みだとは思います。

    ――Twitterでもトレンド入りしていましたが、放送後の反響はいかがですか?

    金曜深夜の放送から週明けまで、寝る間を惜しんでエゴサーチしてたんですけど(笑)、新しい試みを歓迎してくださる声が多くてありがたかったです。

    僕、会社の偉い人に「お前が作るドラマは有料チャンネルっぽいんだよな」ってよく言われるんですよ。今回なんて特にそうかもしれないですよね。各回まったく違う脚本、役者、テイストという形で今の視聴者にどれだけついてきてもらえるか、まだ不安なところもあるのですが、出だしはとりあえず安心しました。

    いろいろ感想を見る中で「1話はおもしろかったけど、この形式だと2話もおもしろいかわからないよね」って声もあって、痛いところをつかれたなと……(笑)。

    でも、どの回も本当に自信作です! 11種類の「人生最悪の1日」、最後まで楽しんでもらえますように!


    脚本家の「いつもの芸風」を知っていた方が、より楽しめるはず……! 濱谷プロデューサーに、11人の作家の魅力、各話の見どころも聞きました