27歳、アラサー会社員。100万人のファンがいる人気YouTuberになるまで。

    「最初の8カ月は鳴かず飛ばずでしたね」「正直、周りの人はみんな『えっ? アラサーでYouTuber?』って感じだったと思いますよ」

    27歳で会社をやめ、28歳でYouTubeを始めた元同僚。いつのまにかチャンネル登録者数100万人超えの人気YouTuberになっていた――。

    これはまさに今大人気のフィットネス系クリエイター、竹脇まりなさんのお話。30歳の彼女は、2年前まである大手金融系企業の会社員でした。

    会社をやめ、YouTuberデビューしたのは2018年末。半年以上は泣かず飛ばずで、チャンネル登録者数300人程度を推移していたそう。

    一気に状況が変わったのはこの数カ月。

    昨年12月には5万人だったチャンネル登録者数は、2月には10万人、5月には100万人を超え、7月末には145万人に! 今もぐんぐん伸び続けています。

    テレビや雑誌にも引っ張りだこの忙しい毎日。しかし、ここに至るまでは平坦な道ではありませんでした。

    正直、周りの人はほとんど「えっ? アラサーでYouTuber?」って感じだったと思いますよ。「おばさんなのに?」「痛いやつ」みたいな……。

    今はだいぶいろんな人が出てきていますが、「YouTubeは若者向け」という空気は今よりずっと強かったですから。

    世間の目も気になる、なかなか成果が出ない中でも心折れずに続けられたのは、チャレンジを全肯定してくれるある人の存在があったから。

    「ごく普通の会社員が、人気YouTuberになるまで」を聞きました。

    ヨガのインストラクターを目指したけど

    ――今は人気YouTuberのまりなさん。以前は会社員だったんですよね。

    はい、2017年の冬まで。新卒で入社した会社を27歳でやめました。

    ――当初からYouTubeをやろうと思っていたんでしょうか。

    いえいえ、全然! 最初はヨガのインストラクターを目指していたんです。

    退社して、インドとロサンゼルスに計2カ月留学し、インストラクターの資格を取りました。

    これでバリバリやっていくぞ! とやる気満々で帰国したんですが、まったく雇ってもらえなくて……。いろんなヨガスタジオに応募しましたが、こんなに!? ってくらい落ちまくりました。

    留学したとはいえ、インストラクターとしては未経験ですからね。資格があるだけでどうにかなると思っていた自分が甘かったです。

    ――いきなりの挫折ですね。

    一人でやろうとしたところで、スタジオを自力で借りるのもまず大変なんですよ。どこもオーディションがあって、使わせてもらえるスペースはなかなか見つからず……。

    近所のカフェに「ここ、使わせてください!」ってお願いして、営業時間前にスペースを貸してもらう、なんてことをしていました。

    ――飛び込み営業!

    本当にそんな感じです。インスタでお客さんを集めて、少しずつ軌道に乗ってきたところで、今度は日系アメリカ人の旦那さんの仕事の都合でニューヨークに移住することになり。

    ――せっかくうまくいきはじめたところで。

    そうなんです。渡米してしまったら当然レッスンはできないし、サブ的に始めたのがYouTubeでした。

    これまでもインスタでエクササイズの方法や食生活は書いていたのですが、テキストより動画の方がもっとわかりやすく伝えられるかなと思ったんです。

    ――なるほど。最初はあくまでヨガのかたわら、だったんですね。

    なんとなく始めてみたものの、最初の8カ月くらいは鳴かず飛ばずでした。本数も少なかったですし、やりたいことも定まってなかった。チャンネル登録者数もずっと300人くらいでしたね。

    ――300人から1年経たずに100万人……すごいですね。

    何倍だろう? 300倍? ……3000倍ですね!(笑)

    「うちの妻はYouTuberなんだよ!」

    ――なかなか成果が出ないなか、「もうやめよう」とはならなかったのでしょうか。

    正直、インスタのフォロワーさんたちも、リアルな友人や元同僚たちも、ほとんどは「えっ? アラサーでYouTuber?」って感じだったと思いますよ。「おばさんなのに?」「痛いやつ」みたいな……。

    今はだいぶいろんな人が出てきていますが、その頃は「YouTubeは若者向け」という空気が今よりずっと強かったですから。

    ――確かに友人が「会社をやめてYouTuberになった」と聞いたらちょっとびっくりするかもしれません。

    そうですよね。自分ですらちょっと迷いや気恥ずかしさがあったのに、旦那さんだけは最初からず〜っと、100%全力で応援してくれたんです。「まりなの動画、面白いよ!自信持って!」って。

    【旦那が最強】 私「会社辞める!」 夫「いいよ!」 私「アメリカとインド行く!1人で」 夫「行ってらっしゃい頑張ってね!」 私「動画本気でやる!登録者50人だけど」 夫「じゃ家事は俺がやるね!頑張れ!」 私「編集疲れた」 夫「美味しいチョコ買ってきたよ」 【夫のおかげで今の私がいます】

    現地の友達に会ってもいつも「まりなはYouTuberなんだ、チャンネル登録してね!」って笑顔で紹介するんですよ。たった300人なのに!

    ――まだまだひよっこYouTuberなのに!

    自分から堂々と言っていくその姿勢は、アメリカ育ちだからこそかもしれないですね。

    私たちの感覚だと、300人くらいでYouTuberを名乗るのって恥ずかしいじゃないですか。いや、もちろんYouTuberなんでしょうけど……でもなんか、恥ずかしいですよね?

    でも、彼は胸を張って「うちの妻はYouTuberだよ!」って言うし、「今日は3人にチャンネル登録してもらったよ〜」ってニコニコ教えてくれる。

    一番近くにいる人がチャレンジを全肯定してくれたことはすっごく大きかったですね。彼の常にポジティブな姿勢には助けられました。

    【旦那の考え方】 私「YouTubeってリスクじゃないの?」 夫「最大のリスクは何もしないことだよ」 私「結果が出なかったら?」 夫「浪費したのは俺が家事やった時間とカメラ台くらいでしょ?時間は最も大切な資産だけど、まりなの動画にはかける価値あるよ」 【生き方を教えてもらっています】

    ――「フィットネス動画に集中した方がいい」とアドバイスをくれたのは旦那さんというお話もありましたけど、素晴らしいマネージャーさんですね。

    彼は理論派、私は感覚派で、ビジネスパートナーとしても相性がいいんです。ただ仲良くやっているという以上に、お互いの強みを生かせていますね。

    だいぶチャンネルが大きくなってきてからは、動画の内容や今後の戦略も一緒に考えています。チャンネルは「竹脇まりな」名義ではありますが、中身は二人三脚。2人のプロジェクトという意識です。

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    一番身近で、一番憧れ「おか

    ――家族の協力という意味だと、ご両親の温かさも素敵です。時たま登場する「おかん」!

    おかん、ファンの皆さんにもすごく人気あります(笑)。ダンスがキレキレすぎて!

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    母は秋田で30年間、私が生まれる前からインストラクターをしているんです。

    ジャズダンスにヨガ、ズンバ(ダンス系エクササイズ)……還暦を迎える今もフリーランスでレッスンしているんですよ。すごいですよね。

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    選曲&振り付けもできるおかん

    社会人になって数年経って、「このままこの会社でずっと働いていくんだろうか? 長い人生、自分は何をして生きていきたいんだろう?」と思った時に、ずっと近くで見てきた母の生き方が理想だと思ったんです。

    いつまでも若々しく元気で、外見だけじゃなく内面も含めた美しさがある。一番身近で、一番憧れの女性だなと思ったんです。

    そういう人になりたいな、自分のことを好きな自分でいたいな、と。

    自分のことを好きになるために

    ――「自分のことを好きな自分でいたい」はまりなさんのチャンネルから強く伝わってくるメッセージですよね。

    自分に自信持って! とか、自己肯定感を高めよう! とか言われても、正直難しいじゃないですか。

    私も、以前は自分のこと全然好きじゃなかったです。今もコンプレックスはたくさんあるけど、それでも自分を認めてあげられるようになってきたなと思います。

    運動って、自己肯定感を高めるいい方法のひとつなんですよ。

    「今日も1つ、このエクササイズをやれた」「ちょっと身体締まってきた」「筋肉ついてきた」「同じ動きのはずなのにキツくなくなってきてる」……毎日コツコツ続けることで、自分の身体の小さな変化に気付けるんですよね。

    もちろん「痩せたい」「かわいくなりたい」「健康になりたい」という大きな目標も大事なモチベーションですけど、その過程で「自分、やるじゃん!」「すごいじゃん!」と褒めてあげられるのが、すごく心の健康にいいと思うんです。

    毎日私の動画を見て身体を動かすことで、「なんか自分のこと好きになってきたかも」と思ってくれる方が増えてくれたらいいなと思っています。

    アラサーからでも何も遅くない

    ――28歳でYouTuberデビューしたまりなさん。自分らしく挑戦し続ける姿に勇気づけられている人も多いと思います。

    2年前まで普通の会社員だった私が、今YouTubeで生計を立てられているって本当にすごいことですよね! 私はアラサー、彼はアラフォーなので、アラサー&アラフォーYouTuberなわけで……。

    何かを始めるのに遅いことはない、何歳からでも新しいことに挑戦できる、ということは、もっともっといろんな形で伝えていきたいですね。人生100年時代と思えば、30代なんてまだまだ序盤ですから!

    「100万人おめでとうございます」とよく言っていただくのですが、本当はスタートライン。まだまだやりたいことがたくさんあるので、これからも二人三脚で頑張っていきます!

    【竹脇まりな(たけわき まりな)

    1989年生まれ、フィットネス系動画クリエイター。「心も身体も健康に」をモットーに、思わず一緒にやりたくなるエクササイズや健康的なライフスタイルを発信している。

    大手金融企業を退社後、ヨガのインストラクターを経て、2018年末にNY移住を機にYouTubeを開始。運営する"アラサー健康ちゃんねる"「Marina Takewaki」は、2020年5月にチャンネル登録者100万人を突破した。日系アメリカ人の夫とともに、二人三脚でチャンネルを運営している。