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「世界中どこからでもつながれる」新型コロナで見えた、オンラインの学びの可能性。

新型コロナウイルスの影響で生じた長い休校期間。ネット上に生まれた学びの場では、オンラインだからできる新しい学び方が生まれました。困難な状況の中で生まれたこれからの「可能性」を聞きました。

新型コロナウィルスの感染拡大を受け、3月2日に突如始まった臨時休校。

学校の授業のオンライン化がなかなか進まないなか、民間によるネット上の学びの場がいくつも生まれました。

そのひとつ、NPOカタリバが運営する「カタリバオンライン」は、3月4日とかなり早い時期に立ち上がりました。

同サービスの特徴は、教科学習以上に「子どもたちの居場所を作る」ことにフォーカスしていること。受動的に動画を再生するのではなく、参加者同士がオンラインで語り合うことを大事にしています。

フィリピンに住む先生たちと英会話を楽しんだり、ヨガをしたり、同じように休校が続く世界各地の子どもたちと中継をつないだり。音楽やイラスト、演劇などを楽しむクラブ活動の時間まであります。

スケジュールを見ているだけで楽しそう……自分も子どもだったら参加したかった!

「学校の宿題がめちゃめちゃ進んでいます」

保護者の皆さんの声を見ても、子どもたちの楽しみ方は人それぞれ。

決められたプログラムをこなすだけかと思っていたのですが、子どもの声を丁寧に吸い上げてくれました。娘が「折り紙が得意だ」と話したら、娘が企画した折り紙教室を開催することになり、すごくはりきっていました。(小5女子、母)

ただお話したりする時間も多いみたいですが、実は学校の宿題がめちゃめちゃ進んでいます。気にかけていてくれているのと、時々声が聞こえるのが良いのでしょうか。驚くべきスピードで進んでいます。(小2女子、母)

初めて参加した朝、「動画編集をしている」と話す男の子がいたみたいなんです。息子自身ももともと独学で取り組むほど動画編集が好きだったので、その発言に感化されたみたい。お友達の作品を見て「全然俺のレベル追いつかない!頑張らなきゃ!」と話してくれました。(小4男子、母)

単なる学校の代替ではなく、子どもたちの世界と可能性を広げる場に。カタリバの代表、今村久美さんに手応えを聞きました。

「ひとりぼっちでつまらないこども」を減らしたい

カタリバは、2001年に発足した教育系NPO。全国の10代の子どもたちに向けたコミュニケーションプログラムや支援策を展開してきました。

とはいえ、これまでの活動の場はオフライン。オンラインで本格的に実施するのは初めてです。

「試行錯誤でしたが、ベースにあったのはこれまでやってきたこと。多くの10代の若者たちと丁寧に重ねてきたコミュニケーションのやり方を、オンラインに置き換えたイメージ」と今村さんは話します。

NPO法人カタリバが2001年よりリアルの場で活動してきたノウハウを、オンラインでお届けする、新しいチャレンジです。日本全国の子どもたちに、安全に双方向でやりとりできるオンラインの居場所を届け、「ひとりぼっちでつまらないこども」を一人でも減らすことを目指します。

(「カタリバオンライン」公式noteより)

事前説明会を経て登録しているユーザーは約1900人(5月末時点)。

実際の規模感としては「小中学生を中心に、よく参加している子が100人、少し頻度は下がるけどたまに来てくれる子が100人くらい」。全国各地はもちろん、海外からもアクセスがあります。

海外に友達を作ろう!

オープン時間は、平日の午前9時半〜午後5時半と、土日の午前9時半〜14時半です。当初は平日だけでしたが、要望を受けて週末も開催しています。

運営に当たるのはカタリバスタッフとボランティアの大人たち。

大学生や保護者から、NYで活躍する音楽家まで――子どもたちを見守る大人たちのバックグラウンドはさまざまです。

普段は教室で教えている、学校の先生たちも多いそう。確かにオンラインでの子どもたちとの向き合い方、学びになりそうです。

オンラインならではの参加型の多彩なプログラムも魅力。

韓国、イタリア、インド、モロッコなど、世界各国の子どもたちと中継を結び、お互いの国の文化や状況を知る国際交流の時間も設けています。

YouTubeでこの動画を見る

youtube.com

韓国の子どもたちとも。『鬼滅の刃』の話で盛り上がってる…!

記憶の薄い3.11が「自分ごと」に

3月11日には、東日本大震災で大きな被害を受けた石巻市の大川小学校から「命の授業」を配信

同校で12歳のお子さんを亡くした、女川第一中学校元教諭・佐藤敏郎さんが、子どもたちに当時のことを語りかけました。

授業のはじまりの言葉は「おはようございます、9年ぶりに授業を始めます」

参加した子どもたちの中には、震災時にまだ生まれていない、記憶にない子どもたちも少なくありません。佐藤さんの説明を聞きながら、「こんなところまで津波がきたんだ」「怖い」など率直な感想を寄せていました。

(小5の)娘は震災当時2歳。私から震災の話はするようにしていましたが、今までは娘の中でどこか「絵空事」だった気がします。

それが、あの中継を見て、震災を経験した方のお話を聞いて、彼女の中で3・11が「自分ごと」になったように感じました。「現実にこんなことがあっていいの?」という、今までとは少し違う感情を抱いていたように思います。黙とうをしたのも初めての経験だったと思います。(保護者インタビューより)

今村さんは、オンラインならではの可能性をこう語ります。

「支える側も子どもたちも、世界中どこからでもつながれるのが面白さ。何かを学ぶ機会というより、今まで知らなかった誰かとつながる機会だと思っています」