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「投票しろ!だけ言うのは無責任」26歳が作った“頑張らない”選挙情報サイト

「政治に興味を持て、勉強しろ、理解しろ、ってしんどいじゃないですか。頑張りたくない人が大多数なんですよ」

衆院選に向けた選挙情報サイト「JAPAN CHOICE」がオープンした。コンセプトは「より合理的に、もっと楽に意思決定を」。

サイト上には候補者や各党に関する情報がまとまっているのみ。「日本の未来のために」「投票に行こう」などの啓発的な文言は見当たらない。

「投票を呼びかけるだけでは限界があるし、何より無責任だなと思ったんです」

運営するNPO法人Mielkaの徐東輝さん(26)は、学生時代から若者の政治参加を促す活動に携わってきた。「投票しよう」。同世代に向けて積極的にそう呼びかけてきたのは、他ならぬ自分自身だった。

その考えが変わったのは、2016年の米大統領選だという。

BuzzFeed Newsは「JAPAN CHOICE」を立ち上げた経緯や、今、政治情報をわかりやすく伝えることに取り組む理由を聞いた。

投票前の10分だけでいい

「JAPAN CHOICE」では

  • 地図をクリックして選べる、住んでいる町の候補者比較(小選挙区向け)
  • 「消費税増」「教育無償化」など争点別にまとめられた各党の政策比較(比例向け)
  • 20の質問に答えて考え方の近い政党をマッチングする「投票ナビ」


などのコンテンツを掲載している。

意識したのは、必要最低限の情報をコンパクトにまとめること。徐さんは「投票に行く前に10分でも、15分でも目を通してくれればいい」とあっさりと話す。

学生の頃は、若者の投票率を上げるための活動をしていた徐さん。自身が在日韓国人で選挙権を持たない中、同世代に権利を行使しない人が多いことが悲しかったという。

しかし、数年間にわたって啓蒙活動をする中で、迷いが出てきた。これでいいのか? もっと根本的な問題があるのでは?

投票する側に甘えるな

2016年秋、米大統領選に合わせて渡米し、3カ月かけて各陣営の戦い方を見て回り、市民の声を聞き、NPOや第三セクターと議論した。

最も大きな違いを感じたのは、情報公開への姿勢だった。

政治家側が積極的に自らのデータを公開するのは当たり前。そのデータを組み合わせ、有権者が求める情報をわかりやすく伝えるメディアや団体が、いくつもあった。

「そうか、有権者は頑張らなくていいんだな、と思ったんです。今そこにあるデータとファクトをわかりやすく見せることで、本当はもっと楽に、合理的に判断できるはず」

「日本の選挙では、政策や政党を理解するために、さまざまなメディアに張り付いて見比べたり読み比べたりしなきゃいけない。どう考えても大変すぎる。毎日情報を追いかけるほど、今の人たちはヒマじゃない」

現地で自分の日本での活動に対するアドバイスを求めると、何度か「怒られた」と振り返る。

「『ただ投票を促すのはおかしい、投票する側の意識に甘えるな』と。それは自分自身感じていたことでしたし、無責任だったと反省したんです」

イデオロギーと切り分けて、ファクトを示す。テクノロジーやデザインを駆使して、現状のデータをわかりやすく見せる。

「楽に判断できる」素地があってこそ「楽に投票にも行ける」と考えた。

「興味を持て、ってしんどいじゃないですか」

「JAPAN CHOICE」が目指すのは「投票に行く気のない人」の意識を変えることではなく、「選挙に対する意識はあるけれど、日々忙しくて情報収集できていない人たち」だ。

「今回の選挙、よくわからないから行くのやめようと思ってたけど、これざっと読んだら投票できる気がしてきた……という人が少しでもいたらいい」

徐さんたちの目的は、選挙に限らず政治情報の可視化。今回のプロジェクトはまだ実験的なもので、今後、さらに広く国会の動きや行政のデータを貯めていくサービスの開設を目指して準備中だ。

「政治に興味を持て、勉強しろ、理解しろ、ってしんどいじゃないですか。頑張ろうよって言われても、そもそも頑張りたくない人が大多数なんですよ。2017年にもなって、なぜ政治だけは一生懸命勉強して“意識高く”いないと判断すら許されないんでしょうか?」

「求める情報に楽にアクセスできるようになったら、私たちはもっと合理的に意思決定できるはず。それはきっと、民主主義の前進につながると思うんです」

BuzzFeed JapanNews