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Updated on 2020年5月5日. Posted on 2020年5月5日

「本当に深刻、助けてください」悲鳴を上げる医療現場にマスクと優しさを。市民による草の根運動が始まった

新型コロナの影響で、世界的に供給が不足しているN95マスクや医療防護服。悲鳴を上げる全国の病院や施設に、家庭や企業に眠るマスクを送る草の根プロジェクトが有志により発足し、話題を呼んでいます。「最前線」が直面している現状を聞きました。

最前線で働く医療従事者に、生命を守るマスクと医療防護具を届けたい――。有志によるプロジェクト「"最前線にマスクと防護具を"実行委員会」(@covid19maskjp)が注目を集めている。

4月4日に発足し、TwitterやFacebookでマスク寄贈の呼びかけをスタート。

「家の掃除をしていたら、N95マスクが見つかりました」「新型インフルエンザの時に購入していたものが数枚なら」

あっというまに1日100件以上のDMが寄せられるようになった。

@covid19maskjp 先程マスクの寄付のことを知り、家を探したら昔買ったマスクが170枚ほどありました。結構前に買ったものなので実用に耐えるか不明ですが、問題ないようでしたら寄付させてください。よろしくお願いいたします。

大変にお忙しいと思われる中、ご連絡をいただき、昔買って使わず物置に眠っていたマスク備蓄を、送らせていただく事になった😃 どうか最前線で頑張っている皆さんのお役に立ちますように🌟 @covid19maskjp の皆さん、活動していて下さりありがとうございます❗️#マスク #N95マスク

自宅に未使用のN95マスクがあったので @covid19maskjp さんへ寄付します。陶芸の釉薬を吹き付ける際の吸引防止に使っていたのを思い出したので。

@covid19maskjp はじめまして。大掃除していたらN95マスクが出てきました。鳥インフルエンザがニュースになったころ購入したもので外観上損傷はなさそうです。ただ保管状態は悪くないものの10年前のもの、かつたった1箱20個。これでも役立ちそうであれば送りしたいと思います。送付方法教えてください

発足から1ヶ月を待たず、全国延べ20施設以上、3000枚を越えるマスクを「最前線」に届けている。

全国から寄せられたマスクを受け取り、仕分け、病院からの要望を吸い上げ、使い慣れている型を送付する。ボランティアベースの草の根運動だ。

今、医療現場の状況は? 私たちができる協力は? 同プロジェクトの発起人の一人である秋山真理さんに聞いた。

Twitter: @covid19maskjp / Via Twitter: @covid19maskjp

全国から寄せられたマスクたち

「もっと大変なところがあるから」

秋山さんの本来の肩書きは、三陸アーカイブ減災センターの代表理事。医療ではなく防災の分野に携わってきた人だ。

東日本大震災の1ヶ月後に東京から岩手・陸前高田市に移住し、防災教育や陸前高田市思い出の品返却事業、被災写真を救済する活動などをしてきた。

当初は危機管理の目線で、新型コロナウイルスの状況を注視していた秋山さん。

以前から知り合いだった萩野昇医師(帝京大学ちば総合医療センター)のFacebookで、医局でマスクを干す様子の写真を見たのが3月半ばのこと。

「どこもそうではないかと思いますが、ウチも今こんな感じです…」とコメントが添えられていた。

被災地支援に関わる秋山さんの事務所には、瓦礫の中で作業する際に使用するN95マスクが340枚保管されていた。

(※N95マスク:0.3マイクロメートルの微粒子を95%以上捕集するマスク。もともとは製造・建設現場で用いられていたが、結核やSARSをはじめとした感染症の防止にも効果が認められ、医療現場でも使われるようになった)

時事通信

新型コロナウイルス患者を受け入れている自衛隊中央病院の看護官=4月30日

萩野さんに「送りましょうか?」と伝えると「ちょっと待って、もっと大変なところがあるから」と紹介され、N95マスクとサージカルマスクを兵庫県の病院に発送した。

「マスクを受け取ったドクターが『N95は現状では確定症例が多いところで非常に必要としている』『本当に貴重』と繰り返しおっしゃる様子を見て、このマスクの重要性と共に、各地の病院が置かれている状況をあらためて認識しました」

N95マスクだけは代用できない

その後、欧米でも一気に感染が拡大し、マスクを巡る“争奪戦”は世界的に激しさを増していく。萩野さんやマスクを寄贈した医師と会話を重ねる中で、医療物資の流通が増える気配が全く感じられないことがわかってきた。

特にニーズが高いのがN95マスクやサージカルマスクだ。

N95マスク

ガウンもフェイスシールドも足りないけれど、手作りを含めてなんとか代用できるものはある。しかし、N95マスクだけは手作りすることができない。

世界的に需要が高まっている上に、COVID-19から身を守るほどの高い性能が求められる製品だけあって、当然自作は難しい。

ちょうどその頃、イタリアでPPE(医療保護具)が十分になかったために50名以上の医師が亡くなったという報道を目にした。

マスク不足解消に向けて国も動いていることは耳にしていたが、日本においても医療従事者がより一層危機的な状況に置かれる可能性は高い。

「限られた資源で目の前の命をいかに救うかという意味では、自然災害の応急対応と同じ。ですが、医療現場のニーズを吸い上げて、必要な衛生品を供給する仕組みがほとんど機能していないように感じました」

使用期限切れでも使える

医療従事者の生命を危険にさらさないためには……。萩野さんと相談を重ねながら秋山さんが次に取った行動は、N95マスクを製造する3Mジャパンに使用期限について問い合わせることだった。

N95マスクは使用期限が5年とされている。つまり、2009年の新型インフルエンザや2011年の東日本大震災を機に購入されたものは、多くが期限切れになっているのだ。

この非常事態、フィルター部分さえ無事であれば、活用できるのではないか。「ずいぶん古いから」「期限が切れているから」という理由で破棄される前のものを使うことができるなら――。

秋山さんの予想通り、同社の回答は、「使用期限はゴムや金具の劣化を懸念したもので、フィルター部分には問題はない」だった。

これなら古いものを集める意味があるかもしれない。使用期限にこだわらなければ、可能性はかなり広がる。

各地の災害ボランティアセンター、新型インフルエンザや鳥インフルエンザに備えた企業や大学の備蓄など、ある程度まとまった数がありそうなことは想像ができた。

ありがとうございます! 期限は意外と大丈夫です。 DMいただいてよろしいですか?(フォローなくても大丈夫にしてあります) https://t.co/87znzXG4Pn

実際「期限切れですが」という問い合わせも多い

「本当に深刻、助けてください」現場からの悲鳴

「大変になるけど、どうする?」「やろう!」

「最前線の医師をCOVID-19の前に“丸裸”で立たせない」。萩野さんと秋山さんが中心となりプロジェクトが発足した。

最初の目的は主に2つ。アンケートで病院の現状や今後足りなくなりそうな物資を知り、都道府県や国と共有し改善を図ること。N95マスクを個人や企業から募り、逼迫している医療従事者・医療機関に届けることだ。

【主な活動内容】 1)医療従事者へのアンケート→ https://t.co/N0wIshyvLt アンケート結果は国や都道府県等と共有し改善を目指します 2)ほっこり医療従事者へのメッセージ募集 #最前線にマスクをwithyou 3)企業等から申し出があった計14,000枚のN95マスク。まもなく多くの病院等へ届けていくよ

アンケートで全国約140の病院や施設から集まった声は、予想以上に切実なものだった。地域の診療の要となる基幹病院や感染症指定病院だけでなく、訪問看護や地域のプライマリ・ケア診療所、精神科単科病院、歯科医院などから幅広く寄せられた。

戦う仲間たちを少しでも助けたい思いで書いております。本当に深刻にN95マスクがない状況です、助けてください。(大学病院の状況を見て)

病院ばかりが注目されていますが、在宅医療を支える側も大変困っています。なるべく在宅で完結させようと尽力していますが、こちらの感染防御もままなりません。どうか、在宅医療にも医療機材、マスク、アルコールの供給をお願いします。(訪問看護)

歯医者が一番感染リスクが高いので保証して欲しいです。私たちは患者を断ることが出来ません。辛いです。(歯科医)

医療資源が足りないと、命の選別をしなくてはいけなくなります。医師として助けられるはずの人を助けられないことほど辛いことはありません。(基幹病院)

「地域の一般病院や結核を診る病院、開業医、無医村の離島など、『新型コロナの患者を受け入れる病院』という枠だけでみるとこぼれ落ちてしまいがちな場所がある」

「当初は、国もちろん頑張っているだろうからうまく回り始めるまでの『つなぎ』の活動と考えていました。しかし国から都道府県へ、そして病院へと必要なものをスムースに届けることが難しい現状が伺えます」

「病院単位でなくドクターから直接訴えられるチャンネルを持ち、迅速に動けるのが私たちの強みだと思っています」

やればやるほど、聞けば聞くほど、草の根が大事ということを実感。災害時はいつも、発信力があり知られた施設ほど強い。(後でわかることだが)複数から支援を得られることも可能 一方小さな医療機関やクラスタ真っ只中の病院等は、声を出せていない、届いていない状況も。フォロワーの皆様が頼りです

感謝の気持ちがSNSでつながる

マスクを寄せた方からは医療従事者への感謝のメッセージが、医療従事者からは「届きました」といった声が可視化されることで、協力が連鎖しているのもSNSを使った運動ならではだ。

N95マスクの寄付をいただきました! 本当にありがとうございました😊

貴重な物資のご寄付をいただきました! ありがとうございます! #最前線にマスクと防護具を @covid19maskjp

どこかで「マスクどうしたらいいかな」「N95がなくて困ってくる」というつぶやきを見れば「こちらにどうぞ」と案内をしてくれる。タイムラインで見かけた写真でこんなプロジェクトがあるんだ、と知って興味を持つ人も少なくない。

活動を続ける上で、秋山さんが大切に思っていることが、マスクと一緒に同封される手紙を通して、「あたたかい心」を届けることだ。

最前線にいらっしゃるすべての医療従事者の皆様に、マスクなどとともにお礼や体調を気遣うメッセージがたくさん届いています。(こちらはごくごく一部) これからも、n95マスクなどと共に皆さまからのお気持ち、想いをお届けしていきますね。#最前線にマスクと防護具を

どうか、お身体に気をつけて。少しでも休める時間がとれますように…

医しゃかんごしのみなさまへ わたしはもしかんせんしてるかもとなったとき ちゅうしゃをしなきゃいけないとしったので あまりかんせんしそうな所には、いかないことにします。がんばって!!ください

どうかこの先もあなたとあなたの周りの皆さんが笑顔でいられますように。日本の片隅で強く強く祈り、応援しています。来年の春には、満開の桜の下をお互い大切な人と並んで歩きましょうね。

「涙が出るほど嬉しかった」

「一人でないと感じられるのが一番の励みになる」

「応援をしてくれる人がいる、企業があるということが心の支えになる」

受け取った病院関係者から、日々多くの感謝の声がDMやメールで寄せられているという。

明日お送りするドクターといまお話をしていました。 たくさんお送りできるとお話ししたら、↓

「ダイヤモンド・プリンセスで新型コロナウイルスに早期に相対してきた医療従事者やそのご家族をはじめ、差別や中傷でとても傷ついてきた。非医療従事者とのあいだで意識の乖離や断絶を感じている方は多いと思います」

「医療現場が満身創痍なのはもちろんですが、一般の方も自粛ムードが続いて苛立ちが高まっていますよね。こうした取り組みを通して少しでも気持ちが和らいでほしい。医療従事者をメンタル面で少しでもサポートしたいです」

企業から大口の寄贈 1万4000枚を確保

SNSを中心とした活動がテレビや新聞に取り上げられ、企業からの「備品として保管していたものを、大口で寄贈したい」という連絡につながっている。

複数社の協力で、N95マスクが約1万4000枚という規模で確保できる見通しがたちつつある。第1弾として、寄付を希望する医療機関の公募も始めた。

【お知らせ】おかげさまで個人の方のみならず企業様からもN95マスクのご提供の話をいたただくようになってきました(とはいえまだ長丁場。引き続きご提供を)。ここまでドクターつながりで提供してきましたが間口を広げて「寄付先の病院等」を募集させていただきます。 https://t.co/Gm39FF3B1Q

「SNSで呼びかけに応じてくださった皆さんのおかげ。引き続き個人の寄贈はもちろん、企業や研究所等が持っているまとまった枚数の“蔵出し”をこれからもっともっと期待したいです」

「古くても、ゴムが伸びていても構わない。最前線ではそうしたことをすべてご理解いただいたうえで使っていただいていますので心配することなく、ぜひご連絡ください」

優しさと温かさをすべての医療従事者へ

「マスクは送れないけれど何か協力できないか」という問い合わせも多い。

陸前高田市の倉庫から、全国の医療機関に配送する送料など実費にあてる寄付の募集も始めたところ、口座を公開してから数時間で複数の振り込みがあった。

もしまだ「支援してもいいよ」という奇特な方がいしたら…(もしかするとまた一歩別な歩みを進めるかも…)  東北銀行高田支店(店番号302)普通預金 5015514 一般社団法人三陸アーカイブ減災センター 引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます m(_ _)m

「『何かしたいと思っていたので、こういう機会を作ってくれてありがたい』とおっしゃってくださる方が本当に多い。皆同じ気持ちで、医療従事者を助けるとともに、この困難に立ち向かっているという実感があります」

「どちらかというと前向きになりづらいニュースが多いですが、Twitterの@covid19maskjp のタイムラインをみるといつも優しさがあふれている。医療従事者の生命を守るマスクや医療防護具(PPE)を迅速に届けることはもちろんですが、皆さんのその温かい気持ちを、すべての医療従事者に届けたい」

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