声優の緒方恵美さんが海外のアニメファンからの質問にリアルタイムに答えるAMA(Ask Me Anything)をRedditで開催しました。
「幽☆遊☆白書」の蔵馬、「新世紀エヴァンゲリオン」の碇シンジ、「美少女戦士セーラームーン」の天王はるか(セーラーウラヌス)など、これまで演じてきた多くの役に愛のあふれるコメントを寄せています。
多くのQ&Aの中から一部を抜粋して紹介します。全文はこちら。
デビューは「幽☆遊☆白書」。作品やキャラクターとの思い出
Q. 緒方さんが声優になったきっかけはなんですか?
A. 声優になる前はミュージカルの女優をしていたのですが、腰を痛めてしまい、プロとしては踊れなくなってしまいました。舞台で少年役や男装の麗人役をやらせていただいた時のスタッフの方々に、踊れないなら、その声を生かして声優に転向したらいいのではないかとアドバイスされたことがきっかけです。
Q. いろいろなタイプのキャラの声優をされていますが、特に好きな系統はありますか?
A. すべての役が好きですが、13〜18歳くらいの、心が揺れ動く時期の少年が、一番素直に演れる気がします。……私自身が「中二病」なのかもしれません(笑)。
Q.キャラクターを理解するために何か特別なことをすることはありますか?
A. よくします。ドラマCD「るろうに剣心」の剣心役の時は、剣道の道場にしばらく通いました。「SAMURAI DEEPER KYO」の真田幸村役の時は、幸村のベースは実在の人物なので、彼の史跡をめぐり、思いを馳せました。他にもたくさん。
Q. エヴァで一番好きな使徒はだれですか?(ラミエルちゃんだといいなと思ってます)
A. 使徒には酷い目に遭わされてばかりいるので、どの使徒も好きではありません。痛いし!(笑)でも、あえて言うなら、カヲルくんです(笑)。
Q. セーラーウラヌス、セーラーネプチューンについて一番好きな瞬間はありますか?
A. どのシーンでも……いつも、彼女(ネプチューン)を愛しています。いつも。ずっと。
Q. はるかとみちる(美少女戦士セーラームーン)、雪兎と桃矢(カードキャプターさくら)のように「普通でない」関係にある役を演じることになったとき、驚きましたか?
A. 本当の同性愛者になるかどうかは別として、同性の人を好きになる瞬間は誰にでもあると思うので、彼女たちの気持ちは理解できます。同性か異性かではなく、相手を大切に演じるようにしました。
Q. 「幽☆遊☆白書」について何か思い出があれば教えてください。
A. 幽遊白書は、私のデビュー作です。だから想い出はたくさん……たくさんあります。蔵馬と会えて、彼のオリジナル声優として選んでもらえて、本当によかった。幸せでした。
でも、彼は、何百年も生きている妖怪で、中身がとても深い人なので、そこがデビュー当時の自分には、とても難しかった。頑張りましたが。そういう意味では、今の私の方が、蔵馬に近いかもしれず、できればもう一度、彼を演じる機会があったらうれしいなと思います。……まだその予定はありませんが(笑)。
「ポストジブリ」でいいの? 海外ファンの視点
Q. アニメのテレビシリーズや劇場版が注目を集める時に、海外では監督のことを「新たな宮崎駿監督」として紹介する傾向にあります。最近では「君の名は。」の新海誠監督、「おおかみこどもの雨と雪」の細田守監督などがそうです。この呼び方は、彼らのことを知らずに、ただまとめて見ているような気がするのですが、いかがでしょうか。
A. 本当に素晴らしい監督が多いので、ひとまとめにされているのだとしたら、それは残念です。でも、それをひとつのきっかけにして、ひとりでも多くの方が日本のアニメを観てくれるのだとしたら、それはそれでありがたいことだと思います。
Q. 西洋でアニメが実写化される際の「ホワイトウォッシング」(日本人やアジア人の役に白人の俳優が起用されること)についてはどう思いますか? 一部のレイシストのあいだでは問題になっています。最近では例えばドラマ「デスノート」が話題になり、監督はかなり反発を受けました。
A. アニメの実写化に限らないことだとは思いますが、一番大事なのは、原作に対する「リスペクト」だと思います。白人になるか黒人になるかアジア人なのかではなく、元の作品に対する愛情が感じられかどうか。「すごく好き」「リスペクト」の気持ちは、画面を観ているだけで伝わってくるから、すぐにわかりますよね? それは、ファンの方が一番よく感じられると思います。一緒に「好き」を共有したいですよね。
Q. 政府のクールジャパン政策についてはどう思いますか?どうやったら、さらに良くなると思いますか?
A. クールジャパンと言われるほど、この業界に注目してくれているのは、本当にありがたいことだと思います。でも、今は看板だけで、その下にいる私たちの状況は、とても悪いままなので。
……正直にいえば、アニメ・ゲーム・音楽を含む知的財産もTPPの中に加えて貰って、関税を安くしてもらい、他の国に、もっと観て貰いやすい、手に入れやすい形になって届くといいなと思っています。
Q. 今の声優業界は90年代と比べて、何が変わったと思いますか?
A. 90年代から始まった「アイドル声優」文化がどんどん大きくなり、良くも悪くも、今は、そこがメインであるかのようになってしまいました。
同時に、声優という職業に求められることが変わってきた。よりアイドルらしく、容姿も可愛く、歌って踊れて、トークも上手。そんな人でないと、デビューすらできなくなってきた。等身大の、その年齢の女の子(男の子)が必要で、少し年齢をすぎると、もう次の若い子を探し始められてしまう。現場にも先輩が少ないので、学ぶ機会もあまりなく、回転が速く「使い捨て」のようになってしまうのは、とても寂しいことだと思います。
でも、どんな業界でも、今あるところを踏み台にして上がっていく、そういう人でなければダメですよね? 自分の力で、頑張って残っていく人は力量があるので、そういう意味では、悪いことばかりではないとは思います。
海外ファンにも「正規品」を届けられる環境を
緒方さんは現在、声優デビュー25周年を記念したアニソンカバーアルバム「アニメグ。25th」の制作資金を募るクラウドファンディングを実施中。5月12日にスタートし、6月9日時点で支援額は2000万円を超えています。
海外向けにも同様のプロジェクトの英語版を展開。国内向けよりは少ないとはいえ、現在までに1万6000ドル以上を集めています。このAMAもプロジェクトの広報活動の一環でした。
今回のCDは、メジャーレーベルからではなくインディーズで発売予定。海外ファンにも「正規商品」を国内発売と同じタイミングで届けたいという、緒方さん自身の強い思いによるものです。