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初任給、どのくらい貯金すればいい?投資は?おかねのプロが新入社員に伝えたい「給料の使い方」4つのポイント

毎月もらう給料、何にどれだけのお金を使えばいいのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの岩城みずほさんによると、最大のポイントは“給料の手取りを「8:2」に分けること”だと言います。

もうすぐ新年度。この春から働き始める新入社員の方は、人生で初めて、まとまった額のお給料をもらうという人がほとんどではないでしょうか。

使い道を想像して気持ちが高ぶる一方で、「何にどれだけのお金を使えばいいか分からない」などと不安な気持ちを抱いている人も多いはず。

そこで、新入社員の方に知っておいてもらいたい「給料の使い方」について、ファイナンシャルプランナーの岩城みずほさんに聞きました。

ポイントは4つです。

・手取りの8割を生活費、2割は貯金・投資に
・給料の半年分の貯金をつくろう
・すぐ使わないお金は「つみたてNISA」や「iDeCo」で増やそう
「どんな人生を送りたいか」からマネープランを考えよう

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1. 手取りの8割を生活費、2割は貯金・投資に

岩城さんは、給料の使い道を考える上でまず知っておいてほしいこととして、「給料には2つの用途がある」と話します。

一つが、“現在の自分”を支えるためのお金。そしてもう一つが、“将来の自分”を支えるためのお金です。

前者は、家賃、食費、交際費など、手元のお財布から日々出ていくお金を指します。一方後者は、結婚やキャリアアップのための学び直し、万が一の怪我や病気、老後のための費用など、将来使うお金のこと。

では、これらをどういった「配分」で給料から振り分ければいいのでしょうか。

岩城さんはこう話します。

「会社員 / フリーランスなど働き方やライフプランによって、一人一人違います。ただ、新入社員の方は会社勤めが多く、ライフプランもまだ明確ではないと思うので、まずは、給料の手取りを『8(現在のためのお金):2(将来のためのお金)』の配分で振り分けることをおすすめしています」

たとえば、手取りが20万円の人の場合を例にしてみましょう。

8割にあたる金額は16万円。これを現在の生活費として使います。残りの2割にあたる4万円は将来のために貯金や投資に回す、という具合になります。

では、「手取りの2割」をどのように貯めたり、増やしたりしていけばいいのでしょうか。

2. 給料の半年分の貯金をつくろう

まず、「貯める」から見てきます。

岩城さんは「急な入院や失業、減給など想定外の出費に備えて、"給料の半年分"を普通預金に貯めておきましょう」と話します。

「日本は公的保険制度が充実しています。高額な医療費がかかった場合は後から払い戻しが受けられる高額療養費制度がありますし、会社員であれば病気やけがで仕事ができなくなった場合に賃金の3分の2の傷病手当金が受け取れます。ですから、給料の6ヶ月分くらいを確保しておけば心配ありません。また、この資金があれば、必ずしも民間の医療保険にも入る必要はないと考えています」

「このお金は、必要となった時にすぐに使えることが重要なため、引き出すのに手間がかかる定期預金などではなく、普通預金に置いておきましょう」

3. すぐ使わないお金は「つみたてNISA」や「iDeCo」で増やそう

続いて、「増やす」です。

銀行にお金を預けておいても、金利が低く、お金は増えていきません。

岩城さんは「すぐに使わないお金は、株式や投資信託で、ゆっくり時間をかけて増やしていきましょう」と話します。

その際には、税制優遇のある「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」と「iDeCo(個人型確定拠出年金)」を優先的に利用するのがポイントだといいます。(※つみたてNISAとiDeCoは、この後のミニ解説で説明します)

なお、「投資は『早めに始めて長く続ける』ことが重要なので、貯金と並行して始めるのがおすすめ」とのこと。

たとえば、「手取りの2割」が4万円の人の場合、2万を貯金し、残りの1万ずつをつみたてNISAとiDeCoで資産運用するなどが考えられるといいます。

「給料の半年分の金額が貯まったら、貯金は一旦ストップして大丈夫。4万円全てをつみたてNISAとiDeCoで運用して良いでしょう」

最後に、NISAとiDeCoと運用したお金は、どんなタイミングで引き出せばいいのでしょうか。

岩城さんはこう話します。

「iDeCoは原則60歳まで引き出しができないため、老後資金として考えます。60歳未満で、結婚や海外旅行、マイホーム購入、学び直しなどでまとまった費用が必要になった場合は、つみたてNISAを取り崩して使うことができます」

ミニ解説①:「つみたてNISA」とは

少額から長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度。通常、投資で得た利益には約20%の税金がかかりますが、つみたてNISAは年間40万まで、20年間非課税で運用できます。なお、2024年には新NISAが始まり、非課税期間が無期限となり、非課税枠も大幅に拡充される予定です。

ミニ解説②:「iDeCo」とは

個人で年金を積み立てる制度の一つ。毎月、一定金額を積み立て、投資信託など自分で決めた方法で運用します。積み立てたお金は「年金」として原則60歳から受け取ることができます。掛金、運用益、そして給付を受け取るときに、税制上の優遇措置を受けることができます。

4. 「どんな人生を送りたいか」からマネープランを考えよう

ここまで、お給料をどのように使えばいいかについて考えてきました。

しかし、岩城さんは、「お金は目的ではなく手段。どんな人生を送りたいかを考えることが最も重要」と話します。

「お金は、持っているだけでは意味がなく、使うことで初めて価値が生まれます。言い換えれば、目的を達成するための手段がお金であって、お金を増やすこと自体は目的ではありません」

「ですから、まず『ライフプラン』を設計してほしいのです。家族や友人、仕事、趣味、健康。人生には沢山の大切なものがありますが、あなたにはどんな夢や目標がありますか。何があなたの幸せですか。それが設計できたときに初めて、『実現するための費用をどうやって用意したら良いか』というマネープランが見えてきます」

「新入社員の皆さんはこれから忙しい日々が待っているかとは思いますが、時々立ち止まって、自分の人生や幸せと向き合う時間を作ってほしいなと思います」

岩城みずほさんのプロフィール

CFP® FIWA® 社会保険労務士。企業年金管理士(確定拠出年金)。高度年金・将来設計コンサルタント。MZ Benefit Consulting 株式会社代表取締役。オフィスべネフィット代表。NPO法人みんなのお金のアドバイザー協会副理事長。金融商品を販売することによるコミッションを得ず、お客様の利益を最大限に、中立的な立場でコンサルティング等を行っている。著書に、『結局、老後2000万円問題ってどうなったんですか?』(サンマーク出版)、『増補版 人生にお金はいくら必要か』(東洋経済新報社)、『「保険でお金を増やす」はリスクがいっぱい』(日本経済新聞出版社)など多数。