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「外国人留学生は税金で月13万の生活費が支給」拡散した情報はミスリード「受け入れ反対」などと広がったが…

外国人留学生について「学費免除のうえ、生活費として1人13万程度が我々の税金から支給されている」といった情報が拡散しています。しかし、日本政府からこうした支援を得ている留学生は全体の約3%に過ぎません。

外国人の留学生について「学費免除のうえ、生活費として1人13万程度が我々の税金から支給されている」といった情報が拡散している。

確かに日本には、政府による国費留学生制度があり、学費の免除や毎月約12〜15万の奨学金の支給がある。しかし、この制度で奨学金を受けているのは、日本への留学生全体の約3%に過ぎない。

留学生一般がこうした待遇を受けていると読み取れる当該ツイートは、ミスリードと言える。

12月3日に未明に発信されたのは、以下のようなツイート。

既にご存知だと思いますが、外国人留学生は学費免除の他、生活費として別に13万程度が我々の税金から支給されます(返済不要)、この金は一括して留学生の国に支払われるために、留学生は日本に感謝する事は殆どありません。日本人学生への奨学金は返済義務がある上に数%の利息さえつきます。

外国人留学生への待遇が日本人学生への待遇よりも手厚いと主張するもので、発信者はリプライで「これは日本人差別以外の何者でもありません」と投稿している。

このツイートは、7日16時半現在、8000リツイート、2.3万いいねと広く拡散している。

「外国人留学生受け入れ反対」「自国の学生より海外の学生が優遇されてるとは理解不能」というコメントとともにリツイートされているものもある。

ツイート内容は、約3%の外国人留学生の待遇に言及したもの

まず、日本政府が外国人留学生に対してどういった支援をしているのかを見ていこう。

現在、政府が提供している奨学金制度は以下の3種類。①が国費留学生に対する支援で、②③が私費留学生に対する支援だ。


国費外国人留学生制度 
・奨学金が月額11万7000円〜14万5000円、授業料は文科省が負担、往復渡航費支給
・支給は最長7年

文部科学省外国人留学生学習奨励費
・月額3万〜4万8000円
・支給は1年間

海外留学支援制度(協定受入)
・月額8万円
・支給は8日以上12ヶ月以内


投稿者がツイートしている「学費免除の他、生活費として別に13万程度が支給される」という内容は、上記3種類の制度の中では、①の国費外国人留学生制度と一致する。ここから、投稿者は国費留学生の待遇について言及していると推定できる。

それでは、この待遇を受けている国費留学生は留学生全体のうち、どれくらいの割合を占めているのだろうか。

日本学生支援機構(JASSO)によると、2021年の国費留学生の数は8197人で、外国人留学生全体(24万2444人)の約3%に過ぎない。

したがって、「外国人留学生」を主語にしつつ、そのうちの極めて少数の国費留学生の待遇に言及した当該ツイートは、ミスリードを招くものだと言える。

また、投稿者は「日本人学生への奨学金は返済義務がある上に数%の利息さえつく」と投稿しているが、この点もミスリードだ。

国は、日本の学生の大学・専門学校への進学に際して、有利子の貸与奨学金のほかに、無利子の貸与奨学金や返済不要の給付奨学金も提供している。

給付奨学金については、世帯収入の基準を満たせば、住民税非課税世代の場合、国公立でひと月あたり最大6万6700円、私立で最大7万5800円がもらえる。さらに、大学・専門学校等の授業料・入学金も免除または減額される。2021年度は全国で32万1833人の学生がこの給付奨学金を利用した。

外国人留学生の待遇について誤解を与える当該の言説は、外国人留学生及び外国人の差別や排斥につながる懸念がある。拡散には注意が必要だ。



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