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「エビフライの原材料に昆虫のバッタ粉末」拡散した画像ツイートは根拠不明。原材料表示にある“バッタミックス粉”とは

お惣菜の揚げ物の原材料表示にある「バッタミックス粉」が、昆虫のバッタに由来するかのように発信するツイートが拡散しています。しかし、バッタミックス粉は、昆虫のバッタとは無関係の「バッターミックス粉」を指していると考えられます。ツイートは「根拠不明」です。

コロッケやエビフライなどお惣菜の揚げ物の原材料に、昆虫のバッタの粉末が使われているかのように読める画像ツイートがTwitter上で拡散している。

画像は、原材料表示に「バッタミックス粉」と記載のある揚げ物のパッケージを写したもの。この粉が昆虫のバッタに由来するかのように発信されている。

だが、この「バッタミックス粉」は、揚げ物に使用する小麦粉などの粉類を主な原料とした「バッターミックス粉」を指していると考えられる。

昆虫のバッタに由来した原材料であるという根拠はなく、ツイートは「根拠不明」だ。

BuzzFeed Newsはファクトチェックを実施した。

お惣菜の揚げ物と昆虫のバッタとの関連を匂わせる画像ツイートは昨年以降、複数のアカウントから投稿されている。

最初に拡散したのは、昨年3月11日に投稿された以下のツイート。

昨日買って忘れてたコロッケを食いながら原材料を見るやいなや、バッタミックス粉という力のある言葉に目を奪われ、まだ慌てる時間じゃないと検索してみたところ安心材料は見つからなかった

投稿には2枚の画像が添付されている。

1枚目は、ビーフコロッケのパッケージ上の原材料表示を写したもの。その中には、じゃがいも、パン粉などに続いて、「バッタミックス粉」と記載がある。

2枚目は、食用の乾燥バッタのオンラインサイトの商品ページ画像。「【昆虫食】バッタ ミックス orthoptera mix」という商品だ。

ビーフコロッケの原材料のバッタミックス粉が、昆虫食のバッタと関連があるかのように読み取れる。

この投稿に続いて、今年3月26日には、原材料表示に「バッタミックス粉」とあるエビフライのパッケージの画像が、以下の文言とともに拡散した。

揚げ物面倒いから近所のスーパーで惣菜買ったら普通に虫入ってんのね

ツイートはすでに削除されているが、画像は他の複数のアカウントによって拡散している。

「気持ち悪すぎだろ」という文言とともに画像投稿されたツイートがとりわけ多く拡散しており、28日時点で91.2万回表示されている。

これらのツイートの拡散を受けて、昨年3月11日に投稿された画像ツイートも再び拡散されている。28日時点で、1万リツイート、3.5万いいねされている。

バッタミックス粉とは

拡散した2つの画像の原材料表示に見られる「バッタミックス粉」とは何か。

辞書やネット検索で調べても、「バッタミックス粉」という言葉は見当たらない。ただし、バッタの後に長音符を付けた「バッターミックス粉」というものは実在する。

バッターミックス粉とは、小麦粉やでんぷんなどの粉類や食塩、砂糖などを混ぜ合わせたもので、主に業務用の揚げ物に使われる。水に溶いたものに食品をくぐらせ、パン粉をつけて揚げると、衣になる。

なお、バッター(batter)とはもともと「料理で、揚げ物の衣にするための生地。小麦粉と牛乳・卵などを水で混ぜ合わせたもの」(デジタル大辞典)という意味だ。

昨年3月11日に拡散した画像では、原材料表示に「バッタミックス粉(でんぷん、大豆粉)」とあり、複合原材料が括弧内で明記されている。でんぷん、大豆粉という材料からも、これは「バッターミックス粉」から長音符を省いてしまったもの、つまり一種の誤記だと推測できる。

3月26日に拡散した画像については、「バッタミックス粉」の複合原材料が明記されていない。また、製造元の記載も投稿者によって隠されているため、製造元に確認も取れない。

だが、食品表示内に揚げ物に本来使われるべき小麦粉やでんぷんなどの粉類などが他に見当たらないことからも、「バッタミックス粉」とは「バッターミックス粉」を指していると考えるのが自然だ。

以上のことから、拡散している「バッタミックス粉に昆虫のバッタの粉末が使われている」という言説を誤りとは完全に証明できないものの、拡散した画像にあるバッタミックス粉は「バッターミックス粉」である可能性が極めて高い。よって、ツイートは「根拠不明」である。

“バッタミックス粉”、食品表示基準では不備あり

ただし、昨年3月に拡散したツイートの添付画像にあるように、食用の昆虫のバッタを使用した「バッタ ミックス」「バッタ目 ミックス」という商品が実際に販売されているのは確かだ。

それでは、こうした商品が加工食品の原料として使用される場合は、どのような食品表示となるのか。

まず前提として、食品表示法に基づく食品表示基準では、加工食品の原材料表示において「原材料に占める重量の割合の高いものから順に、その最も一般的な名称をもって表示する」ことが定められている。

消費者庁食品表示企画課の担当者によると、たとえばバッタの粉末が含まれていた場合は、「粉末」や「パウダー」といった表示では不適切で、「バッタパウダー」「粉末バッタ」などの表示が適切だという。

では、バッタを原材料に使用した場合、「バッタミックス」や「バッタミックス粉」などと記載をすることは、食品表示基準に合致するのか。

消費者庁の担当者は「バッタミックスだけでは何がミックスされているか分からないため、『最も一般的な名称をもって表示する』という食品表示基準からは外れている。もしくは、複合原材料を括弧書きで説明する必要がある」と話す。たとえば、「バッタミックス粉(バッタ粉末、コオロギ粉末)」などといった具合だ。

担当者はさらに、拡散した画像にある「バッタミックス粉」という記載について、こう指摘した。

「(バッターミックス粉から長音符を取った)バッタミックス粉は、ネットの検索でも出てこない言葉で、『最も一般的な名称をもって表示する』という食品表示基準から外れている。複合原材料の記載もないのであれば、消費者に混乱をもたらす。消費者から問い合わせがあった場合は、事業者には説明責任がある」

昆虫食を巡っては最近、さまざまな陰謀論や誤情報が拡散しており、注意が必要だ。

【訂正】本文で取り上げた画像ツイートについて、投稿日時を2023年3月11日としていましたが、正しくは2022年3月11日でした。お詫びして訂正致します。


BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。

ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。なお、今回の対象言説は、FIJの共有システム「Claim Monitor」で覚知しました。

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  • 正確 事実の誤りはなく、重要な要素が欠けていない。
  • ほぼ正確 一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない。
  • ミスリード 一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。
  • 不正確 正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。
  • 根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
  • 誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。
  • 虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
  • 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
  • 検証対象外 意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。