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「妊娠できる保証はない。それでも…」30代の彼女が卵子凍結を“お守り”にしたいと考える理由

「妊娠できなくなっちゃうのが怖い」30代で湧き上がってきた焦り。キャリアに集中するための「お守り」としてーー。卵子凍結への関心が高まる背景には、何があるのでしょうか。3人の思いや経験を聞きました。

将来の妊娠に備えて、若いうちに卵子を採取し保存する「卵子凍結」。

女性の間で近年、関心が高まっているが、その背景には何があるのだろうか。

卵子凍結をめぐる、3人の思いや経験を紹介する。

(この記事での「卵子凍結」とは、抗がん剤治療などの医学的理由で卵巣機能の低下などが懸念される女性を対象とするものではなく、健康な女性を対象とするものを指します)

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「結婚の前に妊活する選択肢もあるんだ」

都内に住むサヤカさん(仮名・35歳)は2020年1月、33歳のときに15個の卵子を凍結した。

きっかけは、30代になり、周囲に妊娠や出産をする友人が増えてきたことだ。それまで妊娠を具体的に考えたことはなかったが、急に「焦り」の感情が湧き上がってきたという。

「子どもがほしいというよりも、とにかく(加齢とともに)妊娠できなくなっちゃうのが怖いという気持ちでした」

交際し始めたばかりの男性がいたが、当時は結婚の話は一切出ていなかった。それに、心の底から愛情を確信できる相手と結婚したいと思っていたため、妊娠のために急ぎたくもなかった。

そんなとき、たまたまネットで知ったのが卵子凍結の技術だった。

「あ、結婚の前に妊活する選択肢があるんだ、と。これだったら婚活も焦らなくていい」。そう感じたという。

採卵手術と初回の保管費には約87万円かかった。2年目以降は年間約16万5000円の保管費がかかり、最長の45歳まで保管した場合は総額250万以上になる見通しだ。

「相当高いのは事実。でも、33歳の若い卵子を45歳まで残しておけるということを考えれば、私にとっては十分払う価値があるものでした」

サヤカさんは2022年12月、結婚をした。相手は先述の男性だ。優しくて頼りがいのある性格が結婚の決め手になった。

3月から妊活も始める。自然妊娠が希望だが、新たに採卵した卵子で体外受精をすることも検討している。

凍結した卵子は保管し続けるという。第2子以降の妊娠で使う道を残しておきたいからだ。自然妊娠ができなかった場合、その時点の卵子で体外受精をするより、若い頃に凍結した卵子を使用した方が妊娠率が高い可能性もある。

電話口のサヤカさんの声からは、愛するパートナーと結婚し、念願だった本格的な妊活を始められることに気持ちが高まっている様子が伝わってきた。

「卵子凍結をする前はとにかく焦る気持ちでいっぱいでしたが、卵子凍結をしてから気持ちがふと楽になった。だからこそ、夫とも順調に交際が進んで、今こうやってハッピーでいられるのかもしれません」

キャリアに集中するための「お守り」

一方で、卵子凍結をしたい気持ちはあるものの、ためらう女性もいる。

都内在住のマイさん(仮名・30歳)は現在、将来海外でキャリアを積むことを見越して、数年以内に現在の仕事を辞め、海外の大学院への進学を検討している。

しかし、不安に感じていることがある。キャリアを優先することで、もう一つの大切な目標ーー「母になること」を逃してしまわないか、ということだ。

「仲の良い家族に育ったということもあり、子どもや家庭を持たない人生なんて想像したことがありません」

「でも、留学して現地で就職することを考えると、子育てできるお金や時間の余裕が持てるのは30代後半になってしまう。その時私はちゃんと妊娠できる身体なのか、と想像すると怖くなります」

そんななか、未婚の友人たちとの間で卵子凍結の話題が持ち上がるようになり、真剣に考え始めた。

「これから数年キャリアに集中するためにも、『お守り』として卵子凍結をしておきたいという気持ちがあります」

「もちろん、卵子凍結をしても妊娠できる保証はない。ただ、そうなったとしても、やることはやったよねって後悔は残らない気がするんです」

ただ、留学費用を貯めるため日々の生活費すら切り詰めるなか、高額な卵子凍結の費用を捻出する決心は固まっていない。

だからこそ、東京都が少子化対策として健康な女性が卵子凍結を受ける際の助成制度を検討しているというニュースを見て、期待が膨らんだ。

「助成してもらえるならば、私のようにお金がボトルネックになっている人にとってはありがたい。海外で暮らすとなると助成を受けるのが難しそうですが、今後国などに支援が広がると嬉しいです」

ニューヨークでは…


BuzzFeedの公式LINEアカウント「バズおぴ」で、卵子凍結をめぐる意見を聞いたところ、ニューヨーク在住のノンバイナリーの方から声が届いた。ノンバイナリーとは、性自認が男性か女性の一方に当てはまらない人を指す。

ジュンさん(仮名・35歳)は12年前にニューヨークに渡り、2022年6月に現地で出会った英国人の女性と結婚した。

ジュンさんの周りで卵子凍結は「かなりポピュラー」だという。

「パートナーがいてもいなくても、30代半ばで妊娠の予定がない人は、とりあえず卵子凍結しようと考える人が多い。友だち同士でも、ごく日常的に、費用やおすすめのクリニックについて情報交換します」

ジュンさん自身も1年以内に自身の卵子を凍結保存をする予定だ。パートナーとは数年以内に子どもをもうけることを検討しており、今のところ、パートナーが自身の卵子と提供を受けた精子で妊娠することを計画している。だが、パートナーの卵子で妊娠がしづらかった場合や、第2子以降で、ジュンさんの卵子を使用することを考えているという。

ジュンさんは、卵子凍結に関連して、日本とアメリカにある「大きな違い」も指摘した。

“選択的シングルマザー”になることの難しさだ。

「アメリカでは、卵子凍結をした女性が、精子バンクなどで精子提供を受けることで、選択的シングルマザーになるケースも多いです」

「運命の人に出会うのを待つのではなく、自分のタイミングで子どもを作って、その後は子どものいる自分として恋愛をすることができる。また、恋愛や結婚には興味がない人も母親になれます」

「でも日本では、婚姻関係がないと、医療機関で第3者の精子提供を受けて、人工授精や体外受精などをすることが難しい。だから、ネットなどを通じて個人から精子提供を受ける人が多く、トラブルも起きていると聞いています」

日本には、精子提供を規制する法律が存在しない。一方で医療機関では、日本産科婦人科学会の見解に基づき、夫以外の第3者から提供された精子による人工授精(AID)を受けられるのは、「法的に婚姻している夫婦」に限られている。

このため、SNSなどで知り合った人から提供を受けてトラブルになる例が起きている。

「卵子凍結が少子化政策の一つとして検討され始めているなら、未婚の人でも、安全に精子提供を受けて子どもを授かれるような仕組みを整えるべきと感じます」


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