毎月くる生理や、避妊への苦痛や不安……どうにかならない?

「毎月くる生理痛が辛い…」「コンドームでしっかり避妊できているのか不安…」など、性に関する悩みってつきませんよね?
そんな悩みの解決策として、「ミレーナ」を使用する方法があります。1度装着すれば5年間、過多月経、月経困難症の治療や、避妊に効果があるというミレーナですが、その効果や使用方法について知っている方は、少ないのではないでしょうか?
そこで、現役大学生が実際にミレーナを使用した、その体験の一部始終を取材しました。
《※日本ではミレーナの注意事項として、出産未経験者に対しては、経産婦と比較して出血・疼痛などの頻度が高いとの報告があるため、「第一選択の避妊法としないこと」とされています。使用を検討する際は、医師とよく相談してください。》
そもそもミレーナって?

ミレーナ(製薬会社の商品名は「ミレーナ52mg」。)は、黄体ホルモンを子宮の中に持続的に放出する子宮内システムです。低用量経口避妊薬の避妊効果と、子宮内避妊用具の長期の避妊が可能であるという特徴を持っています。
2007年に避妊薬として国内で承認され、2014年9月から過多月経、月経困難症の治療に対して保険適用となりました。
費用は施設によって異なりますが、避妊目的だと自己負担額は5万~10万円程度。過多月経や月経困難症の治療が目的だと、保険適用で自己負担は2万~3万円程度だといいます。

ミレーナの長所として、
・過多月経や生理痛の症状緩和について、1回の装着で5年間有効であること
・同じ目的で低用量ピルやその他のホルモン製剤を5年間服用した場合と比較し、安価であること
・月経困難症(生理痛)や原因がはっきりしない過多月経の症状緩和に非常に効果があること
などが挙げられます。
短所としては、装着後初期に月経時以外の出血が続くことがあることや、医師による装着・除去が必要であることが挙げられます。
また副作用として、月経出血日数の延長、月経周期の変化、卵巣のう胞、ミレーナ除去後の出血、月経時期以外の出血、腹痛などがあります。また、稀に重大な副作用として、 骨盤内炎症性疾患(PID)、異所性妊娠(子宮外妊娠)、穿孔、卵巣のう胞の破裂などがあります。
BuzzFeed Newsは、現役大学生で、性教育プロデューサーの中島梨乃さんを取材しました。

今回ミレーナを利用したのは、慶應義塾大学のSFC2年の中島梨乃さんです。
中島さんは、高校生の頃からSNSやYouTubeで性教育についてのコンテンツを発信しています。
現在は性教育プロデューサーとして、産婦人科医の高橋幸子先生らの医学的監修を受けながら、生理用品や避妊薬に関する取り組みや、テレビやラジオへの出演、ABEMAオリジナルドラマ「17.3 about a sex」の台本監修など、幅広い活動を展開しています。
以前から、性教育の発信者として「もっとミレーナを身近に感じて欲しい」と思っていたという中島さん。実際に自分でミレーナを入れた体験について、お話を聞きました。
きっかけは友達の付き添いだった。
当初ミレーナを入れる予定がなかったという中島さんは、友人の付き添いとしてミレーナを入れることを決めたといいます。
「『避妊をしない、コンドームを使わない』と話していた友達に、ミレーナを勧めたかったのが理由です。また、既に使用している友人から『めっちゃ便利だよ』とも聞いていたので、『1万円ちょっとで出来るなら』と思い、一緒に行くことにしました」
今からミレーナを入れにいく…! 今日は検査だけで終わるのか、挿入するのかまだわからないけど緊張🥺 このツイートのリプライ見て勉強してる https://t.co/rjSK1mPesq
装着後の痛みには個人差が。「おもい生理痛程度の痛み」
ミレーナの装着前には、子宮頸がんの検査と、卵巣の超音波検査を受けますが、中島さんは子宮頸がんの検査を事前に受けていたため超音波検査のみを受けた後、すぐにミレーナを装着しました。
装着にかかった時間は約5分だったといいます。「本当に、一瞬でした」
「事前に『入れた後、痛みが続く』と聞いていたので、怖かったのですが、入れたときは重い生理痛程度でそんなに痛くなかったです。でも1、2時間くらい痛みが続いたので、その時点ではまだ入れたことを後悔していました」

「病院を出た時点では『平気かな』と思ったのですが、帰りの電車で痛みが強くなったため、ロキソニンを自分で購入して飲んだら、我慢できる痛みに落ち着きました」
装着後の痛みには、個人差があるようです。中島さんと、一緒に行った友人は痛みが強く、しばらくベッドで休んでいたといいます。
「痛みは個人差だと思います。後から先生から聞いたのですが、事前にロキソニンを飲んで痛みを抑える裏技もあるらしく、もっとそういった知識が広まればと思います」
ミレーナを入れて1ヶ月。「生理痛が来なくなった」
装着直後は、痛みが続き入れたことを後悔していたという中島さんですが、入れてから1ヶ月ほどが経ち、徐々にその効果を実感し始めているといいます。
「まだミレーナを入れて1ヶ月ほどしか経っていないので(取材時点)、微量の出血は続いているのですが、吸水ショーツを履いたら、気にならない程度です。痛みはもうありませんね。もう生理がくる時期なのですが、出血量は増えず、生理痛もきません。今は、本当に入れてよかったなって思っています」

どうしてミレーナを入れるだけで、避妊ができるの?

ミレーナは避妊薬としても効果があります。
ミレーナから放出される黄体ホルモンは、子宮内膜の増殖を抑える働きがあるため、内膜は薄い状態にして受精卵の着床を妨げたり、子宮の入り口の粘液を変化させて精子の子宮内への侵入を妨げたりすることで避妊効果を発揮します。
高い避妊効果がありますが、100%妊娠が防げるわけではありません。1年間に妊娠する確率は約500人に1人(0.2%)です。
ミレーナを装着中に妊娠した場合、「子宮外妊娠」が約半数にみられるほか、関連性を否定できない出生児の外性器異常の報告があります。また、ミレーナを避妊目的で使用する場合には、保険適用されない点にも注意が必要です。
コンドーム以外にもたくさんある!様々な避妊方法。

実際に自身でミレーナを使用した中島さんは、その効果を実感しながらも、「子宮内に入れる避妊方法って、正直抵抗がある方も多いと思います」と、避妊方法の主流になるには、時間がかかるのではないかという考えを示しました。
だからこそ、様々な避妊方法について認知を広めることの重要性を唱えます。
「今は、女性主体で使用できる避妊薬って、日本ではまだまだ市場が小さい現状があります。低用量ピルも約40年かけてやっと承認されたのに、4〜5%くらいしか利用されていない現状がありますし。また私自身、避妊シールの日本での承認に向けて、大学で研究しています」
絶えない「パートナーが避妊してくれない」の相談……中島さんが考える、若者に必要な「変化」とは?

性教育プロデューサーとして活動する中島さんの元には、日々避妊に関する相談が多く寄せられるといいます。
「やはり『パートナーが避妊をしてくれない』という相談は多いです。また、中高生の中には、膣外射精を避妊方法だと勘違いしている子も多いです。『コンドーム付けてる子の方が少ないんですよ』という声を聞いたときは、『あ、これは本当にやばいな』と思いました」
こうした相談を通じて、若者への性教育が足りていない現状を痛感した中島さんは、避妊について正しい知識を持つことの重要性を強調します。
「例えば、コンドームは避妊効果は(他の避妊方法と比べて)低く、性感染予防対策としての効果の方が高いんです。『避妊はまた別問題』という認識が広まり、女性主体の避妊法や、ホルモン剤を用いた男性側の避妊法なども確立されたらいいと思います」

また若い世代の性に関する話題への意識を変える必要性も唱えます。
「『避妊に詳しい子はビッチ』だとか、まだまだ避妊という話題について『エロい』というイメージもあるかと思うのですが、避妊って本来『産む、産まない、いつ産むか、何人産むか』を決めることだと思うんです。妊娠は身体に負担のかかることだし、女性の人生に大きく関わっていくことです。だから、避妊も健康に関するトピックの1つだ、という認識が広まるべきだと考えます」
「避妊って、あたりまえの権利」。同世代に伝えたい大切なこと。
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「女性主体でできる避妊って、あたりまえの権利だと思うんです。でも、未だに男性がコンドームをつけるかつけないかで、女性のライフプランが変わってしまうという現状があると思っていて。女性が自分自身で自分のことを決めるという当たり前のことが出来ていないというのが日本の今の現状だと思います」
また、中島さんはパートナーとのコミュニケーションも正しい避妊を行うための鍵となると話します。

「『避妊して欲しい』という女性に対して、男性がそれを断る行為って、相手を思いやっていないに等しいと思うんです。それくらいの願いを叶えられない関係って、続けていけないじゃないかなって思います」
「一方で女性側にも、避妊に関する知識が薄いという問題があると思います。実際『生理がこない』と相談をしてくれる女性の中には、普段から完全に男性側に避妊を任せてしまって『コンドームをつけているかどうか分からない』という方も多くいます」
「すぐできる避妊法として、女性が自分で相手にコンドームを付けることをおすすめします。女性側が正しい方法でしっかり相手にコンドームを付けて確認できた方が、セックスもお互いにとって安心できるいいものになると思います」
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誰にとっても他人事ではないけれど、どこか話しづらい「性」。BuzzFeed Japanは、10月29日(木)から11月4日(水)までの1週間を「性教育ウィーク」として、性にまつわる様々な記事を集中的に配信します。
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専門家の指摘をもとに、ミレーナに出産未経験者に対し、「第一選択の避妊法としない」という注意事項があることを加えました。