「謝罪ではない」 オバマ大統領の広島演説、側近が明かした裏話

    「旅の間、大統領は絶え間なく演説に手を入れていた」

    米ホワイトハウスのベン・ローズ大統領副補佐官が、オバマ大統領の広島演説の手書き原稿を自身のブログに公開した。大統領は、何度も手を入れたという。

    「人類が自分自身を破壊する能力」が一本線で消され、そのすぐ後に「人類が自分自身を破壊する手段」と書き換えられている。非常に細かい修正だ。

    ローズ副補佐官は、2009年から大統領の国家安全保障問題担当のスピーチライターをしている。キューバとの国交回復、イランの核合意など、その主要な外交演説のすべてを大統領と「共作」してきた敏腕ライターだ。

    「謝罪をしに行ったのではない」

    オバマ大統領によるベトナム、そして日本への歴訪に同行した彼は、それを「歴史を振り返る旅」と名付けた。そのうえで「謝罪ではない」と強調した。

    ブログには、こう記している。

    オバマ大統領は広島に謝罪をしに行ったのではない。アメリカ人は第二次世界大戦で、自由を守った。その誇りを持ち続けている。

    しかし、原爆で破壊された街に訪れる初のアメリカ大統領として、オバマ大統領は核兵器のない世界を追求することが、喫緊の課題であることに言及することができた。

    旅の間、大統領は絶え間なく演説に手を入れていた。歴史から何を学ぶべきか熟慮するにつれて、演説内容は幅広くなっていった。人類は争いを起こす衝動を抱えているという非常に現実主義的なメッセージと、国や人々に対する理想主義的なメッセージを組み合わせている。

    大統領と被爆者の「共通の人間性」

    こうして作られた「歴史的」なスピーチ。本来数分だった予定の演説は17分間に及んだ。その格調高さには、国内外のメディアや被爆者者からも評価の声が上がった一方で、「具体性に欠けた」との批判もあった

    その批判に答えるように、ローズ副補佐官は、ブログの最後をこう締めくくった。

    この演説に冷笑することは簡単だ。私たちがこの理想に達していないことを示す事例は世界中にある。しかしまた同時に、大統領が今回の訪問で見たような事例もある。この2カ国は、文化や歴史が完全に異なる。米国にとって、20世紀で最も残酷な戦争相手であった2カ国だ。

    今日、ベトナムは新たなパートナーであり、日本は熱狂的な同盟国、そして友達だ。ホーチミン市内でオバマ大統領と出会った若い観衆、そして、広島で会った被爆者。オバマ大統領と彼らが、共通の人間性を見いだすのは全く難しくないことだった。


    YouTubeでこの動画を見る

    The White House / Via whitehouse.gov

    5月27日、広島市の平和記念公園にて演説するオバマ大統領