人生を取り戻すため、彼女は顔面移植手術を受けることを選んだ

    顔にひどい損傷を受けてから3年が経ち、ケイティ・スターブルさんに2回目のチャンスが訪れた。それは新しい顔を手に入れるチャンスだ。

    2014年に顔のほとんどの部分を失ったケイティ・スターブルさん。彼女は21歳の若さで顔面移植を受けることとなった。

    2017年5月、オハイオ州にあるクリーブランドクリニックの外科チームにより、この複雑な手術は成し遂げられた。それ以前に、ケイティさんは、自身の顔を再建するための手術を12回以上も受けている。

    手術から1年以上が経ち、ケイティさんは順調に回復しており、話したり、食べたり、感情を表現したりできるようになってきた。自殺をしようとした際の銃創で負った外傷のために、こうしたことも今までは困難だった。

    21歳のケイティさんは今、自身の経験を他の人を助けるために活用しており、自殺予防の提唱者になった。

    ケイティさんが辿ってきた人生は、「ナショナルジオグラフィック誌」9月号の特集記事に取り上げられた。『顔の話(原題:The Story of a Face)』というタイトルの長編ドキュメンタリーだ。

    2014年、ケイティさんは、ミシシッピー州オックスフォードの高校に通う12年生(日本の高校3年生)だった。「ナショナルジオグラフィック誌」によると、10年生(高校1年生)のときに、家族と一緒にフロリダからケンタッキーに引っ越した後に、ミシシッピー州に引っ越してきた。

    2度の大きな引っ越しに加えて、ケイティさんは、他にも問題を抱えていた。慢性的な胃腸疾患のため、前年に盲腸を摘出していたが、今度は胆嚢の摘出が必要になっていた。胆嚢の摘出手術を受けた数ヶ月後、母親アレシアさんが、突然失職した。

    そして同年の3月に失恋。これらの出来事が重なり、彼女は自殺を試みた。一命を取り留めたものの、鼻、副鼻腔、額、口、顎に大怪我を負い、視力も損傷した。

    「ナショナルジオグラフィック誌」によれば、ケイティさんは、そのときの記憶がなく、病院で両親から知らされただけだった。

    「そんなこと考えたこともなかったので、話を聞いて、どうしたらいいか分かりませんでした」とケイティさんは同誌に答えている。

    「家族をこんなに苦しませてしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいで、最悪の気分でした」

    その出来事から5週間後、ケイティさんは、クリーブランドクリニックを訪れ、形成外科医であるブライアン・ガストマン博士の治療を受けることになった。

    数回におよび顔の再建手術を受けた2014年のことは、ケイティさんはほとんど覚えていない。傷を覆うために脚の組織を移植する手術も何回かした。

    だが、顔の再建手術だけでは、ケイティさんの生活の質を改善するには十分ではない。ついに、ガストマン博士の外科チームは、顔面の移植を検討した。死亡した提供者から顔の組織を移植する複雑な手術である。

    顔面移植の候補者として適任か、リスクを理解しているかを確認するために、ケイティさんは広範囲にわたり精神面と社会面において精査された。リスクには、免疫系が移植した組織を拒否する可能性も含まれる。

    移植はまだ試験的であったが、ケイティさんは手術を受けることにした、と「ナショナルジオグラフィック誌」は紹介している。

    2016年、ケイティさんは、顔面移植の候補者となり、医師たちは、3Dモデルを使いながら手術の計画を立て始めた。2017年5月、ケイティさんは、薬物の過剰摂取で亡くなった提供者と適合した。

    5月4日、ガストマン博士が率いる医師団によって、31時間もの間、顔面移植手術が行われた。クリーブランドクリニックで行われた3例目にして、最も広範囲にわたる顔面移植手術であった。

    同クリニックは、2008年にアメリカ初の顔面移植手術を行っている。医師らは、ケイティさんの顔の組織を完全に交換することができた。移植の後、ケイティさんは、何度かフォローアップの手術を受ける必要があったが、飲み込んだり、話したり、食べたりする機能は徐々に改善された。

    世界初の顔面移植は、2005年にフランスで行われ、それ以来、世界で約40例の顔面移植手術が行われている。成功率は定かではないが、顔面移植のリスクは低くはない。だが、免疫系を制御し、拒否反応を防ぐ手術技法や薬物療法が生まれるなど大いに進歩している。

    視力に関しては期待していたほど回復しなかったが、点字を覚えることで生活も改善。だが、将来的には、目の移植の可能性も視野に入れている、とケイティさんの両親は「ナショナルジオグラフィック誌」に答えた。

    いずれは、大学のオンラインコースに登録して、カウンセラーになりたい、とケイティさんは語る。10代の人たちに、自殺防止について、人生の価値について話したい、と明かした。

    「とても多くの人に助けてもらいました。なので、今度は私が他の人を助けたいのです」

    もし自殺が頭をよぎったら。全国の相談窓口は自殺総合対策推進センターにまとまっています。

    また、いのちと暮らしの相談ナビは、悩みや条件別に相談窓口を検索することができます。

    社会的包摂センターはLINEでの相談も受け付けています。

    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:五十川勇気 / 編集:BuzzFeed Japan