トランスジェンダーの権利はどれだけ支持されているのか。世界23カ国を調査

BuzzFeed Newsと調査会社・イプソスの調査結果。

Mark Makela / Getty Images

米国ではトイレの使用をめぐる論争が起き、トランスジェンダーの権利が大きな政治問題となっている。その一方、ジェンダー・アイデンティティ(性自認)をめぐる基本的な議論をしている国もある。

書類に記入するだけで法律上の性を変更できる国は、少数だが急増しており、2016年にはノルウェーがその仲間入りをした。英国議会の委員会も、後に続くよう政府に求めたインドの議員たちは、最高裁判所命令を受けて、トランスジェンダーに対する差別を禁止し、差別是正措置をとる法案について慎重に検討している。

また、精神疾患のリストからトランスジェンダーを外そうとする世界保健機関(WHO)の国際的な取り組みは前進しており、リストが次に更新される2018年までには実現する構えを見せている。

トランスジェンダーの権利に関する国際世論をつかむため、BuzzFeed Newsと市場調査会社イプソスは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校法学院のウィリアムズ研究所と提携し、これまでに類を見ない調査を実施した。調査対象国は23カ国で、トイレの使用や性別適合手術(SRS)などについて質問した。

以下は、その調査結果だ。

調査対象国におけるトランスジェンダーの権利の支持状況を、政策に関する6分野の質問への回答に基づいてランク付けした。質問内容は、差別防止、トイレの使用、性別適合手術、結婚、妊娠・出産、養子をとることについてだ。

Ozan Kose / AFP=時事通信

LGBT(性的少数者)の権利に関して長年にわたって欧州で先頭に立ってきたスペインとスウェーデンは、ランキングの上位にいる。

スウェーデンは1972年に、西欧で初めて、法律上の性の変更を可能にする手続きを導入した。スウェーデンのジェンダー・アイデンティティ関連法は、他の諸国のモデルになった。

ランキング3位のアルゼンチンは、2012年にジェンダー・アイデンティティの「自己決定権」を認める法案を可決し、新たな金字塔を打ち立てた。これにより、西半球で初めて、手術や医師の許可がなくても、書類に記入するだけで法律上の性を変更できるようになったのだ。

トランスジェンダー擁護団体「トランスジェンダー・ヨーロッパ」によると、その後、欧州の4カ国がアルゼンチンの法律をモデルにした自己宣言法を採択し、さらに18カ国以上が同様の法案を検討中だという。

ロシアは、ほぼ全ての指標で最下位となっている。これは恐らく「同性愛宣伝禁止法(反同性愛法)」成立をめぐる反LGBT運動が理由だろう。


報道によると
、この法律を提案したサンクトペテルブルクのビタリー・ミロノフ市議会議員は、 性別適合手術を行う医者の起訴を可能にする法の制定に取り組んでいるという。

「トランスジェンダー」という単語は、多くの国で幅広く知られているわけではない。そのため、今回の調査では「出生時とは違う性別の服装や生き方をしている」人々に対する意識について尋ねた。

Shailesh Andrade / Reuters

調査では、「性別、性」を意味する単語として、「ジェンダー」ではなく「性(sex)」という語を用いた。大勢の人々が両者の違いを理解しておらず、多くの言語で区別されていないからだ(「ジェンダー」は社会的・文化的性差、「性(sex)」は生物学的性差を指していう言葉だ)。

技術・予算面の制限のため、全世界を対象とする調査は行うことができなかったため、インターネット普及率が高い国を中心に調査をした。(こうした国ではオンライン調査のほうが、一般の人々の声を代表するものとして信頼できる傾向がある)。その結果、アフリカやアジアの、先進国以外の国々からの数字が少なくなってしまった。

インターネットが普及している16カ国でオンライン調査を実施したほか、インターネットの普及率がやや低い6カ国でも調査を行った。インターネットの普及率がやや低い6カ国の調査結果は、人々の考えを知る手がかりになるが、世論を幅広く代表してない可能性がある。

さらに、インドでは、インターネット普及率が低いので、調査員に対面での聞き取り調査を委託した。イプソスは、これらの調査結果が、各国の標本の大きさに応じて3.1~4.5%の誤差範囲内で正確だと考えている(調査方法に関する詳細はこちら)。

BuzzFeed News

法律上の性別変更の許可は「無条件であるべき」との回答を過半数がした唯一の国がスペインだった。法制化されているアルゼンチンでも、この割合は48%だった。

大半の国では、性別変更を希望する者はまず、「性別適合手術後を条件とすべき」「手術は必要ないが、医師や裁判官などの許可を条件とすべき」という回答がかなりの割合を占めた(性別変更に関する世界各国の要件を調べたい場合は、トランスジェンダー擁護団体ILGAによる新しい報告をチェックしてほしい)。

米国では、回答者の24%が「どんな場合も認められるべきではない」と回答した。法律上の性の変更に反対する回答者の割合は調査対象国の中で最も大きく、ロシアの割合すら、やや上回っている。

BuzzFeed News

「トランスジェンダーには自認する性に合ったトイレを使う権利があるべきだ」と回答したのは調査対象国の3分の2だった。

スペイン、アルゼンチン、インドでは70%を超えた。この3分の2には、トルコやペルーなど、トランスジェンダーの権利支持に関する指標が最低水準の国も含まれている。

トイレの使用が、トランスジェンダーの権利をめぐる主要な争点となっている米国では「自認する性に合ったトイレを使う権利があるべきだ」と回答した人は47%にとどまった。ブラジル、日本、ロシアなどの諸国でも、この割合は半分を下回っている。

BuzzFeed News

身近にトランスジェンダーの知り合いがいる回答者は、トランスジェンダーの権利を支持する傾向がかなり強い。BuzzFeed Newsの計算では、トランスジェンダーの知人がいる回答者は、トランスジェンダーの権利を支持する割合が30%高い。

ほぼ全ての調査対象国で、トランスジェンダーだと自認する回答者の割合は3%未満だった。3%を超えた唯一の国が米国で、「出生時とは違う性別の服装や生き方をしている」という回答が5%あった。

こうした少数派の率を正確に測定するには調査回答者の規模が不十分だった。そのため、調査結果からは、どれだけの人がトランスジェンダーと自認しているのかは、わからない。だが、これらの回答者と、トランスジェンダーの友人や家族、知人がいる回答者と合算し、各国で人々がトランスジェンダーにどれだけ馴染みがあるのか計算したところ、大きな割合をしめた。

ブラジルはこの指標で首位を占め、回答者の50%が、トランスジェンダーの知人がいると答えたが、トランスジェンダーの権利支持に関する総合指標では14位となっている。ブラジルは、トランスジェンダーに対する暴力の発生率が世界で最悪の水準なため、この順位には特に注目すべきだ。

トランスジェンダーの権利を支持する人が最も多いスペインでは、トランスジェンダーの知人がいるとの回答した人は25%にとどまった。

トランスジェンダーへの拒絶感が最も強いロシアでは、トランスジェンダーの知人がいる回答者の割合は、英国、インド、ドイツと統計的にはほぼ同じだった(16~20%)。

日本は、トランスジェンダーの知人がいる人が最も少ないようだ。日本では、2003年に成立した「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」で、特定の要件を満たす者については、家庭裁判所の審判により、法令上の性別の取扱いと、戸籍上の性別記載を変更できるようになったのにも関わらずだ。

BuzzFeed News

トランスジェンダーに対する意識について知るために、自分と違うタイプの人々が隣人であった場合に抱く感情について、回答者に質問した。

多くの国では、「ゲイかレズビアンの隣人」を望まないと答えた回答者と、「トランスジェンダーの隣人」を望まないと答えた回答者の数はほぼ同じだった。だが、米国を含むいくつかの国では、回答者は、ゲイやレズビアンの隣人より、トランスジェンダーの隣人に対する抵抗感のほうがはるかに強いと答えた。

ゲイとレズビアンの隣人のほうが、「自分と違う人種や民族の隣人」よりも回答者にはるかに受け入れられている国もある。特に欧州ではそうであった。

法律上の性別を変更するのに精神科の診断が必要とされる国は少なくない。しかし、ほとんどの国で、回答者の過半数がトランスジェンダーを精神疾患の一種だと考えていなかった。

BuzzFeed News

ジェンダー・アイデンティティの自己決定権を認める法律がある少数の国を除いて、法律上の性の変更を求める場合はたいてい、医師から、「性同一性障害」または「性別違和」と診断してもらう必要がある。トランスジェンダーの権利の擁護者や医療従事者の多くは、これが(同性愛が精神疾患として分類されていたのと同じように)トランスジェンダーへの差別を助長すると指摘し、トランスジェンダーを「障害」と呼ばないよう医師会に迫ってきた。今、その努力は大きな勝利を収めようとしている。WHOの改訂版診断リストの原案では、トランスジェンダーが精神衛生上の問題に分類されておらず、「性同一性障害」という用語が使われていないのだ。

過半数の人がトランスジェンダーを「精神疾患」と考えていると回答した国は、ロシア、インド、トルコの3カ国だけだった。ロシアとインドだけは、トランスジェンダーを「身体障害」と考えている回答者が過半数に達している。

インドではジェンダー・アイデンティティについて、激しい議論が続いている。

Punit Paranjpe / AFP=時事通信

人口約12億5000万人のインドでは、国内のトランスジェンダーの保護に向けた法案が審理中だ。

数百年前からインドに存在するトランスジェンダー女性のコミュニティ「ヒジュラ」は、英国の植民地だった頃に成立した法に従って、犯罪者扱いされていた。現在は、物乞いや売春をして生活をしている人が多い。

インドの最高裁判所は2014年に、こうした歴史を修正する広範な改革を政府は実施しなければならないとの判決を下した。政府に求められたのは、ジェンダーアイデンティティに基づく差別の非合法化、雇用や教育へのトランスジェンダー差別撤廃措置の導入、福祉的な給付などだ。2015年には、この裁判所命令に従う法案がインドの国会の上院を全会一致で通過したが、ナレンドラ・モディ政権は2016年8月、これを骨抜きにした独自の法案を提出し、トランスジェンダーの活動家から広く批判されてきた。

インドでの対面調査は、2016年8月にインド政府がこの法案を発表する直前に行われた。調査では、最高裁の当初の判決を支持する声が圧倒的で、47%がこの決定について「強く支持する」と回答、35%が「ある程度支持する」とした。判決の各条項の支持率は80%に達し、64%は、女性の議員割当枠と同様に、トランスジェンダーへの議員枠割り当てについても支持すると回答した(裁判所命令にはこの項目は含まれていなかった)。

だが、今回の調査に対する回答は、インド人がいまだに、社会でのトランスジェンダーの地位について葛藤していることを示唆している。インドには、トランスジェンダー・コミュニティと、トランスジェンダーが祝福をもたらすという宗教信仰の長い歴史がある。

そうした背景は、トランスジェンダーが「社会の中で特別な立ち位置にある」にあるとの回答が60%を超え、トランスジェンダーには「特別な霊的資質がある」との回答が48%に達し、両指標で他のどの国をも上回っている事実に反映されている。だがその一方で、トランスジェンダーは「自国の伝統に背いている」との回答は55%、トランスジェンダーは「罪深いことをしている」との回答も49%にのぼり、いずれもロシアに匹敵する。

この記事は英語から翻訳・編集されました。翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan

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