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iPhoneを盗まれただけなのに……“謎のおじさんの自撮り”が毎日送られてくるようになった

世界のいろんなお話を届ける「ベッドタイムストーリー」。今回は、とある盗まれたiPhoneが辿った摩訶不思議なお話を3章にわたって配信します。

※この記事は、2016年2月にBuzzFeed Japanで公開した記事を再編集したものです。


インターネットとは不思議なもの。書いている自分でさえ、未だに本当に起きたことだというのが信じられない……!

むかし、むかし(2014年1月)...

この物語は2014年の初めごろ、イーストビレッジのお気に入りのバー、EVSで飲んでいたところから始まる。


何度も言っていることだし、聖マルコに誓ってもいい。EVSは断じてダサいバーではない!ニューヨークでハッピーアワーをやっているバーを見つけるのはひどく難しい。僕の行きつけだから、みなさんはどうか通わないでほしい。本当に来ないでね!


……とにかく、2014年の2月ごろ、ハッピーアワーに1本20ドルのワインを飲んでたら、iPhoneがなくなった。誰かがテーブルの上から盗んだようだった。いやあ、感心した。拍手喝采だ。きっとそいつはその夜だけで、20台くらいは電話を盗んだんだろう。携帯電話を盗むにはうってつけの場所だ。天才的だよ。ブラボー。


iPhoneがなくなったことに気づいた僕は、すぐに自分の番号に電話した。繋がったのは留守電。電話が死んだ時の世界共通語だ。


僕のiPhoneは、消えた。

それから1年後……


新しくしたiPhoneで、フォトストリームを友達とソファに座って見ていた。撮った覚えのない写真が次から次へと出てくる。


特に印象的だったのが、知らない男がオレンジの木の前で写っている自撮り写真だった。笑えるけど、怖い。


興奮した僕は、友達に写真を見せて回った。なぜこんなことが起こるのか。みんなで小一時間推理した。


北朝鮮にハッキングされた? それとも怪奇現象? iCloudのトラブル? いろいろ考えたが、明らかなのは1年前に盗まれたあのiPhoneを、どこかの誰かが持っているということだ。

一ヶ月間、オレンジの男はフォトストリームに現れ続けた。彼の写真が日々更新されるのにも慣れた。慣れたというより、毎日新しい写真をチェックするのが楽しみになってきた。不思議なものだ。

やたらと枚数の多い、花火の写真(どこで誰が打ち上げたのか…)

可愛らしい小さな手…

汚れた窓から見える身をかがめる人の写真。怖い。

謎の写真は、ずっと放っておいた。だがある友人が、怖いことを言い出した。


友人「電話をなくしたのは最近?」

僕「1年以上前だよ」

すると彼は言った。


君のiPhoneは、中国にあるよ


中国。そう、多くの盗まれたiPhoneが最後に辿り着く、かの地。なるほど。謎が解けた。僕の盗まれたiPhoneは中国にある。そして僕のiPhoneを持っている男は、僕のiCloudにログインしたまま使い続けている。


Appleストアに行って確認した。


案の定、僕の古いiPhoneはiCloudがオンになっていた。もう自分のものじゃない。リモートから削除してもらった。僕のiPhoneを持っている男は、もう僕のiCloudにログインすることはない。


正直、ホッとした。謎は解けたのだから。

でも、物語はまだ終わらなかった。〜第2章に続く〜

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