ADHDの人が知ってもらいたい21のこと
勇気を出すから受け止めてほしい
1. ADHDはれっきとした神経行動の障害
ADHDは主要な機関によって認められた「神経障害」だと、Adult ADHD Clinic of Central Massachusetts理事長のケビン・マーフィー博士話します。
多くのADHDの人が自分の行動や考え方を周囲の人に理解してもらえず、「私はダメな人間なんだ」と思い込んでいます。でも、ちゃんと治療できる障害なのです。
2. みんなと「脳」が違う

ADHDの人の前頭葉は通常とは異なる接続をしています。血流、グルコース代謝、神経伝達物質のレベルが低下しているため、脳が不活性化しています。
マーフィー博士はこれを「ガソリンで走る車が煙で動いているようなもの」と例えます。
3. 自分でコントロールできないことがたくさんある
ADHDを簡単に説明すると「自己を規制しコントロールすることに関する障害」だと、サウスカロライナ医科大学の臨床精神医学ラッセル・バークリー博士は言います。
脳には自分を制限するための6つの機能があります。
・自己認識
・抑制
・ワーキング・メモリ
・自己動機づけ
・感情のコントロール
・効果的な計画や問題解決
4. ADHDだってそれぞれ違う

ADHDは「不注意優位型」「多動性・衝動性優位型」「混合型」の3つのタイプに大きく分けられます。
症状は変化することがあるので、個人のADHDのタイプは時間とともに変化することもあります。
5. ADHDと診断されるまでの道のりもつらい

自分の症状を解明するために医者やセラピストと診察を受けると、臨床医に普段感じている苦しみについて質問をされます。
診察では、症状が始まったときのことや、学校での成績や態度の変化、家族生活や社会生活に与えた影響について振り返らなければいけません。
6. 知識がないわけではなく、知識を生かすのが難しい

ADHDの人は、知識がないわけではありません。知識を適切なタイミングで有効活用するのが苦手です。
そのため、即座に話したり書いたりすることに苦労することが、よくあります。
「ADHDはどうしたらいいのか分からないという障害ではなく、分かっていることができない。そういう障害なのです」とマーフィー博士は話します。
7. 知能検査はよくても学校の成績は…

「ADHD患者の多くは知能検査で非常に高い点を取ることがあります。でも、学校の成績はあまりよくないのです。なぜなら、学校では標準化された、知識を活用するテストが多いから」とマーフィー博士。
もめ事を起こす、邪魔をする、授業に教科書やノートを忘れる、時間を守らない。学校で問題とされるこういった行動は症状の投影と言えます。でも、知能の低さを示す徴候はないのです。
8. ADHDは人生のあらゆる側面に影響を与える

ADHDは学校生活だけでなく、社会生活や運動能力、キャリア、家計、性生活など、人生のあらゆる面に大きな影響を与えます。
9. 周りの環境が気になる


ADHDの人は周囲の環境に大きく影響されます。他の人たちが気にせず集中できる時でも、視界に入っているすべてのものが気になってしまいます。
でも、クリエイティブな能力を発揮する際など、時には役に立つこともあります。
10. 一方で、卓越した集中力の持ち主

ADHDの人が一旦集中すると、他のことをしようとしても切り替えられなくらい集中してしまいます。気づけば10時間経っているなんてことも。
何かレポートを書くなどの集中してこなしたいタスクの場合には良いのですが、複数のタスクをこなしたい時には困ってしまいます。
11. 良くも悪くも自分に正直

ADHDの人は、やるべきことよりも満足感を得られることを重視する傾向にあると、Adult Attention Deficit Disorder Centerのデイヴィッド・グッドマン博士は語ります。
片付けなければいけない仕事が目の前にあっても、外に出たくなったら散歩に行く。ある意味普通の人よりも自分に正直に生きています。
「あなたが馬車の荷台で、ADHDが馬だとしたら、ずっと手綱をしっかり握って方向のコントロールをしていないと、好き勝手な方向に行ってしまう感じです」
12. 意思が弱いのとはちょっと違う

ADHDの人は「できるものならそうするけど、できない」という気持ちと常に戦っています。
やろうとしてできない状態が続いてしまう時、ADHDは脳の機能障害なのだとわかっていないと、気持ちが弱ってしまいます。
13. 自分がしていることをよく忘れる

「『作業記憶』は心のレコーダーやノートの役割を果たしています。あるタスクを完了するために必要な情報を保持しているのです」とバークリーは言います。あなたが何をしているか、目標は何なのか、また、どのようなプロセスを辿ればそこに到達できるのかということをリマインドしてくれるのです。
作業記憶が様々な考えや感情によって弱められると、周囲で起きていることに注意がいきがちになります。
仕事をしていても、突然「あれ、今なにをしていたんだっけ……」とちょっとしたパニックに陥ることもあります。
14. 正直、時間感覚もわからない
ADHDの人は、時間の経過を理解するのが基本的に苦手です。時間の感覚に乏しく、所要時間を少なく見積もったり、出かける前に時間がないのにもう一つ何かをこなそうとしてしまいます。
「時間を気にしながら、必要なタイミングで中断するのは大変難しいです」とマーフィー博士。
15. 治療には時間がかかる

ADHDの治療薬は、前頭葉に流れ込む血流を増やし、脳を活性化してくれると、マーフィー博士。でも錠剤を飲んでも、効果は一時的なものにすぎません。
薬を飲むのはあくまで治療の1つです。最も効果的な治療は行動修正、セラピー、そして目標のある状況を設定することです。
長い時間がかかるけれど、たいていは世界が変わります。
16. ADHDの人には、たくさんのリマインダーが必要

「機能障害の実態がつかめてくると、マネージメントするための戦略が生み出せます」とマーフィー博士。
たとえばiPhoneのリマインダーやポストイット。他の人から見たら些細なことかもしれないけど、本人にとっては画期的な方法だったりします。
17. 自分を最大限発揮できる方法をいつだって探している

ADHDの人は、状況や環境の変化が苦手だけど、いつだって自分を最大限発揮できる方法を探しています。
そのためには、自分を上手くコントロールする方法を見つけるのが重要になります。
18. ゴールに到達するまでのプロセスを設定するのが苦手

ADHDの人は設定されたゴールから逆算するのが苦手です。「ADHDの人が、3カ月先に提出するレポートのことを考えるのは大変困難です。今か、もしくは今ではないのか。こういう感覚なのです」とマーフィー博士。
ゴールに至るまでのプロセスを考え、構築していくのが苦手なので、すべてギリギリにやることになります。
19. よくも悪くも、自分の気持ちにいつだって正直
ADHDは自己制御に関する障害です。強い感情をコントロールするのは簡単ではありません。
怒りや悲しみなどのネガティブなものだけでなく、愛情や幸福感、興奮なども同じです。
例えば寝る前に楽しい気持ちになると、寝ることに集中できなくなってしまうため、気づくと朝を迎えています。まるで遠足前の子どもみたいに!
20. いつだって失敗を恐れているのをわかってほしい
ADHDの人は常に「何をやってもうまくいかない」と思っています。失敗すれば「怠けている」「頭を使っていない」と言われるからです。
ADHDの人には、他の人たちの「普通」が、ハードルが高く感じられます。「普通」が難しいと、学校や仕事で挑戦したいことがあっても言い出せないことがよくあります。「普通」ができないなら、新しいことに挑戦しづらいからです。
21. ADHDと一緒に生きていくことは可能

成長するにつれ、ADHDとうまく付き合っていく方法を見つける人は少なくありません。自分に合った仕事やサポート体制を見つけることで、自分が選ぶ人生を歩んでいくことができます。