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「小池劇場、アリですね」。小池百合子・東京都知事が都議選の主役にこだわる理由

「私がこの選挙で狙っていること。それは古い体制からの改革です」。単独インタビューに答えた。

写真集、名言集、着こなし指南本、ムック本ーー。

著者こそ本人ではないものの、6月になって、小池百合子・東京都知事の関連本の出版が相次いでいる。テレビや新聞でも、この人を見ない日はない。

東京都庁での定例記者会見は、まず都知事として、次に地域政党「都民ファーストの会」の代表として話す2部制になった。

築地市場の問題や東京五輪に向けた整備、都政改革など、知事として粛々と進めてほしい課題はいくらでもある。そんな時になぜ、都議選なのか。なぜ、主役を張ろうとするのか。

BuzzFeed Newsは6月16日、東京・西新宿にある都民ファーストの会の事務所で、小池氏に単独インタビューをした。15分間の取材中、小池氏の携帯には何度も、電話やメールの着信があった。

時代の流れは速く、政治の変化は遅い。

東京都議選といえば、(日本新党の国会議員として)都議選をやっていた24年前を思い出しますね。候補者を選んでキャッチフレーズを考えて、それぞれの応援に行って。今回もそうですし、選挙ではずっと、同じことをやっているわけです。

時代の流れはあまりにも速く、政治の変化はあまりにも遅い。

特に、都議会というものは、注目度が非常に低かった。そこに光を当てることによって、今はみなさん都政にとても興味を持ってくれるようになりました。ようやく関心を高めることができたかな、と思ってます。


東京都議選は前回の2013年、投票率43.50%だった。

民主党(当時)に政権交代した衆院選の”前哨戦”となった2009年は54.49%でとりわけ高かったものの、ここ20年ほどは50%に届くか届かないかで推移しており、都民の関心が高いとは言いがたい。

小池氏本人は、わずか1年前、東京都知事選を戦った。

自民党から推薦を受けられないまま、立候補を表明。「崖から飛び降りる覚悟で挑戦したい」と述べていた。

このとき自民党都連は、推薦候補以外を応援することを所属議員に禁じる文書を出していた。

結果的に小池氏は、自民党推薦候補に100万票以上の大差をつけ、歴代4番目に多い約291万票を得て圧勝。女性初の都知事に就任した。

「小池の乱」「小池旋風」「小池劇場」ーー。この1年、世論を沸かせてきた自らが矢面に立つことで、都議選にも注目を集めたい。そんな狙いから、6月1日に自民党に離党届を出し、都民ファーストの会の代表に就いた。

都民ファーストの会の都議団幹事長であり、自ら北区から立候補する音喜多駿氏(1期)はBuzzFeed Newsのインタビューで、都議選をこう表現した。

「小池選挙でいいと思います。小池夏の陣ですよ」「小池or Notの選挙になる」

小池氏本人も「それはアリだと思います」と言い切る。


またも崖から飛び降りる

今回は、私と一緒に崖から飛び降りてくれる女性たちがいます。

昨年、私が立ち上げた政経塾「希望の塾」で政治行政を学び、手を挙げた塾生らを中心に、48人の公認候補がいます(6月21日現在は49人)。その3分の1が女性。改革の担い手は女性だと思っていますので、女性候補の割合は私が気合いを入れているところです。

普通の人たちがこうやって政治家を志すことで、普通の感覚で政治をする人たちが生まれるんです。

とはいえ、ほとんどが新人ですからね。選挙に出ること自体、ハードルが高いわけです。

例えば、足立区の公認候補予定の後藤奈美さんは、元会社員。昨年は群衆の中の一人として私の演説を聞いていたのに、今は自分が群衆に語りかけるほうに回っているんですね。彼女はいま妊娠中ですが、「動かないと何も始まらないと感じた」と言います。まさしくリスクを取ったわけですよね。

二元代表制で権限が分離されているはずなのに、首長も議会もどっちもやるのはおかしい、という指摘もあります。チェック機能がはたらかなくなるという人たちーー自民党の人たちですがーーあなたたちこそ、今まで何をチェックしてきたんですか、と言いたいですね。


自民党都連会長の下村博文氏は、BuzzFeed Newsのインタビューで「都議会は知事と適度な緊張関係を持ちながら、チェック機能を果たすべき」と指摘している。

知事と最大会派が一体化すれば、改革への推進力となることは間違いない。半面、下村氏が言うように、いざという時にチェック機能が働くのかという懸念も当然出てくる。

過去の都知事は、都議会最大会派の自民党には気を使う関係だった。医療法人から5000万円の資金提供を受けた問題で、猪瀬直樹氏は自民党から追及された。政治資金の私的流用疑惑では、舛添要一氏の不信任案を自民党も提出していた。

ただ今回、自民党に発言力がある構造そのものを、小池氏は変えようとしている。選挙協力を結んだ公明党など、自身の支持勢力で過半数を目指し、自民党を最大会派から引きずり下ろそうというのだ。

小池氏は2016年12月、東京五輪・パラリンピック会場の見直しにからみ、「黒い頭のネズミがいっぱいいる」と発言。都議会代表質問などで「黒いネズミとは誰のことか」と自民党議員に問われると、「古い体制の総称として使った」とした。

小池氏は、都議会の体制を「まるで旧石器時代のようだ」と表現する。


足を引っ張る勢力との戦い

東京の課題はわかっています。2020年のオリンピック・パラリンピックの5年後、2025年に人口はピークを迎え、団塊の世代が後期高齢者にどさっと入ります。東京でさえ、超・高齢社会まっしぐらです。

一方で、待機児童問題などはまさに「東京問題」といえます。働く女性が普通に子育てできないでいる現状は、変えないといけない。

こうした課題に向き合うには、過去の延長線上のやり方ではなく、新しい発想を持ち、世界からの見え方を意識したやり方をする必要があります。

大事なのは、足を引っ張る勢力ではなく、前に進める勢力をどうやって確保していくか。

私をサポートしてくれる人が過半数いなければ、改革を進めることもできないし、スピードが落ちてしまう。だから、この都議選が勝負なんです。

何とって、やはり「古さ」との勝負ですね。既得権を守る人たち、メンツだけを守ろうとする人たち。つまり自民党......そうね、都連ね。

私は、伝統や文化は守りますけど、改革を逆行させる勢力とは必死になって戦いますよ。

だって東京ですよ、日本の首都ですよ。世界をリードすべき東京の政治が、旧石器時代の型ではまずいんじゃないの。

逆に、東京が変わると日本は変わりますよ。


地味に続けるあの政策

経済キャスターから政治の世界に飛び込んで、今年で25年になります。

参議院議員、衆議院議員、知事など立場は変わりましたが、一貫してこだわっていることがあります。

例えば、電柱や電線の新設を原則禁止して街並みを整える「無電柱化」。

私は衆議院議員時代に無電柱化議員連盟を立ち上げ、議員立法で提出した法案が国会の置き土産になり、2016年12月に成立しました。東京都でも6月議会で、無電柱化推進条例が成立しました。

後藤新平(1857-1929、第7代東京市市長)は、昭和通りや行幸通りを整備しましたが、私はその道路から電柱を引き抜こうとしているわけです。

私は「経済の格差と段差をなくす」とも言っているんです。電柱がない歩道は車いすやベビーカーも利用しやすいバリアフリーとなり、2020年のパラリンピックに焦点をあてるとともに、加速度的に進む高齢社会にも対応します。

他には、通勤電車の混雑改善。関西の大学に通っていた時に、満員電車で身動きできず、乗り換えられず次の駅まで行ってしまったことがあります。そうした実感から、東京の通勤風景から満員電車をなくしたいとも考えています。

いずれも小さな話のように取られるでしょうが、ドカンと大きなことをして、それをまた大きく変えるといった政治をする時代は去りました。これからは、いかにソフトを充実させていくかでしょう。


6月23日の都議選告示を前に、市場の豊洲移転と、築地市場を再開発して将来的に両立させる方針を表明した小池氏。週末は候補者の応援に回り、「東京大改革」の実現に向けてまっしぐらに突き進んでいるように見える。

昨年の都知事選のように「退路を断つ」のも、小池氏ならではのやり方だ。女性初の防衛大臣に就任した2007年には、防衛省事務次官人事をめぐる混乱の末、わずか55日で離任した。

当時を記した著書『女子の本懐』には、「切腹はした」などと政治家としての胸の内とともに、目的達成のために突き進む性格を象徴する、こんなことも書いていた。

私は、長年、ショートカットを続けているが、ロングヘアだと、ヘアセットに時間がかかるからだ。私にはそれが耐えられないのだ。ショートとロングでは、一生に費やす時間が一ヶ月分は違うと、勝手な計算をはじき出したこともある。

4月には、米誌「TIME」の「世界で最も影響力のある100人」で「パイオニア(開拓者)部門」に選出され、「先駆者であり、日本と世界の女性の模範」と評された。

都知事と地域政党代表。小池氏の二つの顔は、有権者にどのように評価されるのか。都議選は7月2日に投開票される。


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