7月2日に投開票された東京都議選で、大躍進した「都民ファーストの会」。都議会127議席のうち49議席を獲得し、公明党など小池百合子知事の支持勢力で過半数の圧勝をおさめた。
その勝因は、小池人気にあやかったとも、自民党の自爆の結果とも分析されている。投票率は51.28%で、前回の43.50%を大幅に上回った。
Google検索が急増
Googleで検索された言葉、つまり世の中で注目された言葉をチェックできる「Googleトレンド」によると、開票が始まり、圧勝が報じられた直後に「都民ファースト」の検索回数が跳ね上がった。党の公式サイトは一時、つながりにくくなった。どんな党なのか知らずに投票し、慌てて調べた人もいるのかもしれない。
都民ファーストのことが嫌いでも...
都民ファーストに「入れざるをえなかった」というのは、生後7カ月の息子がいる会社員の女性(32)だ。
4月に育児休業からの復職を予定していたが、長男はこの春、「保育園落ちた」。昨年、小池知事が発表した待機児童の緊急対策の実現に望みをかける。つまり、小池知事のことは支持している。
その小池知事が立ち上げ、代表をつとめる都民ファースト。
住んでいる目黒区では、元民主党の都議だった候補が、都民ファーストに鞍替えして立候補していた。駅前で街頭演説を見かけ「節操がない」「なんだかこの党は好きになれない」とあまりいい印象を持たなかった。だが、背に腹は代えられない。
「小池知事支持の公明党と迷いましたが、都民ファーストの候補が子育て真っ最中の世代だったのが決め手でした。それだけです。完全に消去法の投票でした」
寄せ集め感はあるけれど
いきなり現れた党だけど、掲げている公約は都民の生活に密着していてわかりやすい。
企業幹部で、がんサバイバーでもある練馬区の40代女性も、都民ファーストの候補に投票した。党を支持したからではない。受動喫煙対策の条例案の実現を、公約に掲げていたからだ。
「受動喫煙対策はどの党も公約としてあげていますが、都民ファは働く人や子どもに着目した案を出し、誰のための条例かが明快。実現が早いのではないかという期待を込めました」
そのうえで、注文をつける。
「確かに“寄せ集めメンバー感”は否めないものの、これまでのルールをゼロベースで考えようというスタンスには共感します。企業では男性社会のルールに女性と若者が立ち向かっていくという動きが起こりつつありますが、都議会でも自民党が作ってきたルールに対して同じ流れが生まれてほしい」
自民党にお仕置き
2013年の前回都議選で自民党に投票した渋谷区の会社員女性(26)は、投票先を替え、都民ファーストに1票を投じた。安倍内閣への不信感が決め手だった。加計学園や森友学園などを巡って説明責任を果たしていないと指摘し、こう苦言を呈した。
「国政と都政は別ですが、都議選の結果を受けて内閣には変わってもらいたいと思いました。議席の数を持っていれば、何をしてもいいというのは間違っている。反省が足りないです」
都政についても、見方は厳しくなった。
「都議会で“忖度政治“が本当にあったのかは不明ですが、自民党が最大会派であった以上、人数が多いのだから多少、忖度があったとしても不思議ではないでしょう」
「今回は都民ファーストに入れますが、トップは小池知事であり、候補には新人が多い。メディアに語っているように、議会でチェック機能を果たしてほしいですね。それこそ忖度しないように」
もう、自民党の政治にはうんざりしている。都民ファーストが同じ轍を踏めば、不満の行き先がなくなってしまう。
リベラル派の唯一の選択肢
港区の会社員男性(27)は、思想は「リベラル寄り」だと自認する。
これまで国政選挙や地方選挙では民主党などに投票してきた。自民党に投じたことは一度もない。
今回、民進党を離党した無所属議員や共産党の候補者は「投票しても1票が無駄になってしまうような気がして」選択肢にはなかった。
小池氏が自民党員であることや、保守的であることは知っている。それでも都民ファーストに入れたのは、小池氏が自民党に離党届を提出したことが「袂を分かった」ように見えたからだ。
「本当は革新的であってほしいところだけど、まず現状打破するには仕方ない。自民党を揺るがす存在になってもらいたい」
当選した49人のうち新人が大半の未知なる党は、1票の「願い」に応えることができるのか。