タレント、エッセイストの小島慶子さんのエッセイが物議を醸している。3月6日に日経DUALに掲載された連載コラムだ。
TBSでアナウンサーをしていただけあり、女同士のマウンティングの洞察力たるや。女子アナの嫉妬と野心を描いた初の小説『わたしの神様』は、読後に恐怖を覚えるほどだ。
そんな小島さんが今回のコラムで提起しているのは「女性がマイノリティであることの特権を手放せるか」だ。
例えば、国会議員に女性の割合を増やすクオータ制に反対する女性がいる、ということについて。
「女は女が嫌い」という単純な理由ではなく(なぜか男性はこれを言いたがる)、少数者ゆえの恩恵に浴していることを自覚しているからなのだ。
小島さんの経験では、テレビ局という男性ばかりの組織で「若くて可愛い女の子」という少数派でいることは「しんどいけどオイシイ」。つまり健全ではないが、楽だった。
女性管理職も、まだ数が少ないからこそ「女性」という冠をつけてもらえ、希少価値があるのだという。
それを手放せるかどうかが、いま問われているのだと思う。女性の管理職を増やそう、という掛け声の陰で「それじゃ私の希少性がなくなっちゃう」と苦い顔をしている女性は確実にいる。
働き方改革や女性の登用、男性の生き方の多様化を実現するにあたっては、いま恵まれた立場にある女性たちが、本気で「私は特別な女じゃなくなってもいい」と言えるかどうかが問われている。
BuzzFeed Newsの記事 女性には「天井」だけでなく「ガラスの床」がある。では、女性の間に、キャリア意識による階層構造が生まれていることを書いた。キャリアで上を目指そうとする女性は「ガラスの天井」に近いごく一部の層で、まさに「女は私だけ」のところにいる。
「女は女だけ」問題
「女は私だけ」にしたい、と同時に「女は女だけ」にしたい、という問題もあるのではないだろうか?
東京都内のある保育園の園長をしている男性に、男性保育士に対して偏見をもっているのは、女性保育士だという話を聞いた。
表向きは男性保育士を歓迎する。「男性がいてくれてうれしい、ありがたい」と。実際、その言葉を使いながら、重い荷物を持たせたり身体を使った外遊びをさせたりと、役割を限定する。
本音では「本質的な保育は女性にしかできない、だってずっと女性がやってきたのだから」と思っているからだという。
少数派の新参者をプロとして信頼せず、適性がないことにしてしまう。もちろんそれは、お茶汲みを女性の仕事だと限定していた会社と同じ構造だ。
「女だけ」は特権ではない
家庭でもそうだ。
女性同士で話すとき「男の料理」は鉄板のネタになる。
夫は、冷蔵庫にある材料でパパッと料理を作れない。一度しか使わない高価な調味料を買ってくる。いい肉を使ったらそりゃおいしいよね。作りながら片付けられないから、洗い物をするのはどうせ、妻。
「お金も時間も余計にかかる」「ダンナを教育するのが大変」
女が女だけでそんな話をして盛り上がる。結局、キッチンは「女の領域」であると思っていて、新参者を歓迎も信頼もしていない。
それではいつまでも、男性は家事や育児の補助的な役割のままだ。
結局、何か新しい価値を得たり、周りや社会を変えたりするためには、女性自身が捨てなければならないものがあるのではないだろうか。
捨てることはマイナスなのではなく、いま苦しいことから逃れるため。荷物をたくさんの人に持ってもらい、負担を軽くするため。
怖がらなくていいんだ、と思う。
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