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メルカリで松ぼっくりが売れるわけ。ちょっとした時間と能力を誰かのために

不用品を捨てるよりは、誰かに使ってもらいたい。誰かの役に立つなら、料理を教えてあげたい。モノやコトをシェアする動きが生まれています。広がる理由は「それが心地よいから」

ハヤカワ五味 こんにちは! 「もくもくニュース」MCのハヤカワ五味です。

今回は、BuzzFeedが主催するオンラインイベント「未来をつくる仕事のこと #就活で聞けないリアル」の一環で、4人で「『やさしさ』とビジネスが両立する仕事の話」を話していきます。

(お断り:3月29日に番組としてライブ配信する予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、テレビ会議で収録した内容を記事化しました)

3つの「もやもやポイント」をお話していきます!

ハヤカワ この3つの柱でお話ししていきたいのですが、その前提として、最近「シェアリングエコノミー」という言葉をよく聞くようになりました。

まず牛窪さん、「シェアリングエコノミー」について教えていただけますか?

牛窪恵 「シェアリングエコノミー」の定義は、個人が持っている遊休資産を有効に貸し出したり、交換したりすること、そしてその仲介をするビジネスのことです。

例えば、持っている家が夏休みの間に空くなら、誰かに貸し出したほうがいいんじゃないか? 今使わない物でも誰かの役に立つなら、売ったほうがいいんじゃないか? といった、一つの物や場所を共有する発想ってありますよね。

マンパワーもあてはまり、家事代行とかベビーシッターサービスなどもそうです。「私が力になれるんだったら」と個人間の取引の仲介も行われています。

ベースには「社会の役に立ちたい」「誰かの役に立ちたい」という意識や、余っている物は共有したほうが有効なんじゃないのかという考え方があります。環境に優しい、持続可能な社会ということにもつながってくる概念ですね。

ハヤカワ 例えば自転車や家具なども結構シェアされていて、その根底として「所持しない」という考えがあるのかもしれません。シェアリングエコノミーの概念を知ったところで、今日はそれをベースに、新しい価値を生み出している仕事について話していきます!

BuzzFeed Japan NewsのLINE公式アカウント「バズおぴ」で、「実践しているエコ活動」について聞いたところ、次のような意見がありました。

「将来の環境に不安しかない」

「袋をもらわないことが当然になる社会に」

ハヤカワ 若い人からも、環境に不安を感じるという意見をいただいています。

若い人が中古品をやりとりする場の代表が「メルカリ」ですが、2013年のサービス開始から今まで、ユーザーの意識の変化を感じることはありますか?

上村一斗(メルカリ Community Marketing Team マネージャー) 私はメルカリに勤めて5年目になりますけど、サービス開始当初は、他のサービスと比べて簡単に出品できるという機能的な価値をテレビCMでも強めていました。なので簡単に小遣い稼ぎができることに魅力を感じてもらっていたのではないでしょうか。

最近は、いわゆるヘビーユーザーの方は月に何度も使ってくださるので、そのための梱包の資材を、できるだけ家にあるもので代用できるようにしたいというニーズもあります。

また、特に数千円、数万円の利益は、ゲーミフィケーション的な感覚で、「自分の信用が溜まってくる」感覚でメルカリを使ってくださっている方も、肌感としては増えているイメージです。

ハヤカワ 5年前よりユーザーが増え、多様な方が利用しているんでしょうか。

上村 おっしゃる通りで、ユーザーは20、30代が多いんですが、直近1年だと65歳以上のいわゆるシニアの方が増えているんです。

私は昨年から全国で、オフラインでメルカリの使い方を教える「メルカリ教室」の講師をしているんですが、ほとんどの参加者が70、80代で、そこに混じって20代と40代の方が親子で参加したりもしている。幅が出てきたな感じます。

ハヤカワ 最近は、Amazonで在庫がない、絶版になっている本などまで、たいていのものがメルカリにあるという状況があります。私自身もメルカリヘビーユーザーなので(笑)

ここで、本日もう一つのシェアリングエコノミー「Airbnb」のサービスについても聞いていきます。

松尾崇(Airbnb広報部長) Airbnbは2008年に創業しまして、11年の若い会社なんです。基本的には、お部屋やお家を貸したい人と借りたい人のマッチングサービスです。

いま世界では「宿泊」と「体験」という大きく2つのカテゴリーがあります。220以上の国と地域で展開し、日本もその一つで非常に大きなマーケットになっています。10万都市以上で泊まれるのですが、最近の人気都市ランキングでは、東京と大阪と2つの都市がランクインした国は日本だけ、というくらい、日本は世界の旅行者に人気があるのです。

700万カ所以上の宿泊可能な物件があって、日本にも9万カ所あります。体験サービスでは世界各国で4万のサービスがあり、うち国内には約3000のサービスがあります。世界でも日本での体験は非常に人気です。

ハヤカワ 私も昨年末、サンフランシスコでAirbnbを使いました。従来的なホテルの周りは繁華街などが多いけれど、ちょっと部屋で料理をしたいなとか、ローカルなお店に行きたいなってときもありますよね。Airbnbだと現地の人が住んでいるところに泊まれ、ホストの方とも交流ができたり、通常とは違った体験ができると感じました。

牛窪さんは消費者の定性調査(インタビューや行動観察調査)もされていますが、特に20代でこの2社のようなシェアリングエコノミー的なサービスの使われ方にはどんな傾向がありますか?

牛窪 若い世代は、物欲よりコミュニケーション欲求が強い傾向があります。いろいろな人たちと「ゆるくつながりたい」ということがベースにあります。

多くは、物を買うときに「これって新しいものを買う必要あるんだっけ?」「この目的にしか使わないものを買う必要あるんだっけ?」などと立ち止まります。

一方で、物を通して「今あるものをアレンジする方法は?」「これを譲ったらコミュニケーションが生まれるんだ!」など、対話や気づきを得ることに、喜びを感じやすい。そういう「体験」を重視しているようです。

シェアリングエコノミーの場合だと、「もともとそれを持っている人が何に使っていたのか」とか「自分だったらこう使う」という「体験」が生まれるんですよね。譲った人も、ありがとうといわれたり、「そんな使い方もあるんだ」というヒントが得られたりという喜びがあります。

自分が使っていた物や持っていた物が「あ、そんなことに使われるんだ」と気づくと、いらないと思っていた物に価値があるということになりますから、「自己肯定感」にもつながるんですよね。それがさらにお金になるとなると、価値のある物だったんだ、とさらにうれしくなる。

2倍も3倍もおいしい、しかもコミュ欲が満たされるというところに喜びがあるのだと思います。

ハヤカワ 個人的に20代の特徴かなと思うのが、「他の人に物を渡す」ということにそこまで抵抗がない人が多い印象です。上の世代は「物に魂が宿る」みたいな考え方もあると思うんですけど......。

牛窪 所有することに、さほどこだわりがない。魂が宿るというほどまで思い入れていないというのもあると思います。

ハヤカワ シェアすることは、金銭的なメリットだけでなく情緒的なメリットもあるということでしたが、改めてここからは、人の役に立つということがビジネスにつながるのかを話していきたいと思います。

ハヤカワ 上村さんには、メルカリの新しい使われ方を聞きたいです。「4人に1人が100円以下のもうけでメルカリに出品している」という調査があると......?どういうことなんでしょうか。

上村 はい。2019年に調査したところ、100円以下の利益でフリマアプリに出品している人が、4人に1人いるというのがわかりました。

以前、私がカスタマーサービスを担当していたときにも、送料も含めて利益が0円になっても、捨てるよりは手放したいというお問い合わせをいただいていました。そういうニーズが増えてきたというのが興味深いと思います。

上村 利益がないことを、誰かのために皆がやり続けるかというとそうではないですが、そういうやり方をしているお客様も実際います。

出品して売れたときの「嬉しい・楽しい」もあるんですけど、自分だけの店を持つようなイメージに近いので、買ってくれた方への感謝の気持ちもあるようです。

ハヤカワ 「嬉しさ」を自分の経験から考えてみると、物を捨てる罪悪感やゴミを出す罪悪感がなくなるという嬉しさと、誰かに届いて嬉しいというダブルの嬉しさがあります。

上村 我々も、メルカリがライフインフラみたいになってきたと思っています。買っては捨てるという生活から、好きな物や必要な物を選んで使っていくという循環的な使い方もあれば、メルカリがあることで誰かの役に立っていると感じられるということもポイントかなと思います。

ハヤカワ こうした「嬉しい・楽しい」を、牛窪さんの分析では「メルカリハイ」と呼ぶそうです。どういう意味なんでしょう?

牛窪 まず、東日本大震災以降、自分の周りに物を増やしたくないというシンプルライフ欲求が強まっていたところに、昨今の「こんまり」ブームもあって、身の回りを整理してスッキリすることが快感だという意識が広まりました。

整理する快感に加え、売ったり譲ったりするとお金になって価値が生まれたり、感謝されたりすることも快感になります。そうした経験値の積み重ねで、また出品したい気分になる。そんなハイな感覚にさせる力がメルカリにはあるんです。

最近の消費者は、物を買う段階からさまざまなことを考えています。廃棄をするときに、段ボールが大きいと面倒だとか、包み紙がいっぱいあるとかさばって困るとか。環境への負荷も考えます。

飽きて売るときに値崩れしないブランド価値まで、買う段階から考えている人もいます。そうやって自分がいろいろと考え抜いて買ったり出品したりした物が思った通りに売れると、万能感からハイテンションになるんですね。

松尾 そもそも、メルカリは売れると楽しいですよね。私もいろんなものを売るんですけど、売れる人の研究をして、写真の撮り方や説明の書き方を研究しています。6カ月ずっと売れなかったヘッドフォンの最初の写真を、売れた人と同じようなものに変えたら、その日のうちに売れたんです。なので、メルカリハイという言葉はすごく腹落ちしました(笑)

松尾 ところで、誰かの役に立つということでいうと、Airbnbの大きなビジネスの柱は、宿泊と体験なのですが、旅をしている人たちは、その国やその場所の価値や経験、コミュニティを体験したり学んだりしたいという気持ちが強くあります。

「宿泊」した人がその地の文化やコミュニティにも触れたいということで、「体験」を予約する人が非常に多いのが最近の特徴です。

今までなら、例えばバスツアーや旅行会社の個々のサイトで予約していたのが、Airbnbだと、250カ国に展開しているサービスにワンストップでアクセスして予約することができ、お支払いもすべてオンラインで済みます。

「体験」のホストには、正業も副業もいろいろな方がいます。平日は金融機関にお勤めで、土日だけ築地の案内をしている人。リタイアした人が、得意な着付けを教えたり、ちょっとした和食のごはんの作り方を教えたり。カメラが得意だったら、東京や大阪の名所で一生の記念になる写真を撮ってみるとか。

男女問わず、年齢問わず、自分が得意なもの、知識やスキルを誰かとシェアしておすそわけするという「体験」サービスが、非常に受け入れられていて、日本でも世界でもすごく伸びているんです。

そこで、新しい仕事のあり方ってなんだろう?人の役に立つってなんだろう?と、5つのキーワードを考えてみました。

「自由さ」「能力」「時間」「男女性差がない」「世界」

まず、内容にせよ価格にせよ、自分が持っているものを自由に使えます。パッション、伝えたい思い、知識、経験を自由にシェアできるということ。

隙間時間の使い方も自由です。正業でも副業でも、平日しかやらない、土日しかやらないこともでき、会社勤めではない時間の使い方ができます。

日本のホームホストのうち、女性の割合は46%とほぼ男女比も半々です。体験も同じで、性差もなくご高齢の方も活躍できるんです。

ホームホストの方の方も、英語も中国語も話せない人も多いですが、世界各国からの旅行者のおもてなしをしています。

Google翻訳や各種アプリなどテクノロジーの助けを借りて、コミュニケーションは成り立つんですね。もう見てるだけで楽しそうです。自分の持っている能力を自由な時間に使えるのは、新しい仕事のあり方として魅力だと思います。

ハヤカワ 使う側も、提供する側も、実際そのサービスの部分で新しい価値を共有しているし、働き方にも影響していますよね。

私はフィリップ・コトラーのマーケティングの概念にも関心がありまして、こうした新しい消費の仕方、新しい仕事のあり方、というのは市場価値としてどうなのか、牛窪さんにうかがいたいです。

牛窪 ハヤカワさんのおっしゃるコトラーのマーケティング論を解説しますと、「マーケティング1.0」は「製品主導」。大量生産・大量消費の時代に、いかに製品を精巧に作るか、いかに優れた物を安く売るかということでした。家電やパソコン、スマホがよく例に挙げられますが、メルカリも最初、体験より機能価値を追求していたということでしたよね。

製品の性能はよいとして、アフターサービスはどうなのというところが「マーケティング2.0」の「消費者志向」です。顧客が何に喜びや満足を感じるかというところに価値がおかれ、日本では1970〜80年代が「2.0」の時代でした。

その後の「マーケティング3.0」は「価値主導」「人間中心」です。

人間の欲求には「マズローの欲求5段階説」や「7段階説」というのがあるんですけど、人間は自己承認欲求が満たされると、社会や環境、人の役に立ちたいとか、そういう自分に近づきたいという「自己実現」の欲求までどんどん高まっていくとされています。

欲求レベルが上がり、人として社会貢献などできないかと考えるようになり、SDGsなど持続可能性も含めて、一人ひとりが社会の一員として、環境に負荷をかけずに、あるいは格差を広げずに、どう生きていくかを考える時代になっていています。

そうすると企業も、社会の役に立つとか環境に配慮するといった価値をブランドとして打ち出していかないといけません。

性能のよい製品を提供するだけでなく、社会に役立つ物やサービスを提供する。消費者はそれを買うことで社会の役に立つ人間になりたいという欲求をかなえたいと、そうした企業の製品を受け入れたり、就職したいと思ったりします。これが「価値主導マーケティング」と言われています。

ハヤカワ 最近、中小規模の企業から大企業まで、SDGsを意識していると感じます。私自身も経営者として、小売で物を売るということをしてきたので一歩間違えるとゴミを量産することにすぎなかったり、ユーザーの買わない理由になってしまったりするのではという危機感があります。

SDGsへの配慮やサステナビリティの価値主導とすることで、買わない理由になるのでなく、買いやすくすることにつながれば、経営面もポジティブな方向に働くのかなと思います。

上村 メルカリのサービスは、SDGsで示されるゴール12の「つくる責任 つかう責任」にも該当すると考えています。

メルカリは「新たな価値を生み出す」「世界的なマーケットプレイスを作る」という企業ミッションを抱えているんですけど、実はメルカリを使うこと自体が、循環型社会の実現に貢献していることになります。

このあたりを一般のお客様にダイレクトに伝えようとすると少しクサかったり、コーポレートブランディングが強すぎるので、メルカリだからできるサステナビリティの訴求をどうすればいいのだろうということを社内で議論しています。

上村 直近だと2019年、エコパックをリリースしました。メルカリを使うということは、物を梱包して送らないといけない。そうするとサービスが伸びるほど「資材を使う」という矛盾が生まれるんです。「捨てる物をなくす」はずが実際にはすべてそうなっていないというジレンマです。

ならば、より長く使える資材を提供したり、自宅にある梱包資材、段ボールをカスタマイズして使ってもらったりといった使い方の訴求を進めようと。

今のところエコパックはイベントでお配りしたり、社内にある社員用の発送コーナーに置いたりして広めています。資材に対してお客様がどういった考えを持っているか、アンケートをしているところです。

もう1つSDGsでいうと、循環型社会の実現に向けた教育の一環で、親子で参加できるワークショップを実施しています。サスティナブルやSDGsを強調するのではなく、本来なら捨てられてしまうようなB級品の陶器を使って、クリエイティブチームの力を借りて、自分だけのオリジナルの食器やコップを作る教室を開いたところ、すごく好評でした。クリスマスに自分たちが作ったものが届くというコンセプトで、親子で物の大切さを楽しみながら学べるという取り組みでした。

ハヤカワ メルカリは、梱包資材を捨てる瞬間がなかったらもっと心地いんだろうなとか、もっとインフラとして進化していくんだろうなと思っていました。

Airbnbでは体験ホストのお話をうかがいましたが、人的リソースのサステイナビリティと言えませんか? 実際、性別や年齢に関係なくサービスを提供できるということで、さまざまな人が生涯、働き続けられたり収入を得られたりということにつながっているという実感やデータはありますか?

松尾 はい。2008年から5億人以上に使っていただき、世界で1日あたり200万人以上の宿泊があります。2019年8月には1日の宿泊400万人という日もありました。ホストさんの累計収入はこれまで約9兆円に上るんですね。

それって、Airbnbが存在していなかったら、単純には言えないものの、5億人分の泊まる場所が必要だったでしょうし、約9兆円の収入は生み出されていませんでした。それは女性やお年寄りの収入につながってきたと思うんですね。 

松尾 人的リソースのサステナビリティというのは、まさに五味さんがおっしゃる通りで、体験の分野においては男女、お年寄り関係なく、一定の条件はありますが基本的には誰でも、今日からでもできるというサービスです。

自分が持っている今あるもの、能力、施設を有効活用できるということは、今あるリソースをサステイナブルに使えるということなのかなと思います。

現代の日本にはさまざまな社会問題があります。地方の過疎化や、ジェンダー不平等などもそうですし、特に少子化と高齢化は、世界の先進国が近い将来、日本を参考にしないとけないほど急速に進みつつある日本ならではの社会課題です。

2019年にも年金2000万円問題が浮上しましたが、「私たちはリタイアしたあとどうするんだっけ?」ということを考えたときに、ちょっとした能力や時間をシェアすることによって社会貢献できるというのは希望になります。

みなさんが持つそれぞれの資源がサステイナブルに活用できるといいなと思っています。

ハヤカワ そうですよね。高齢者が人と会う機会が少なかったり、孤独死に至ったりというのも空き家の問題とともにあります。Airbnbのサービスが、人のつながりの重要な部分を担うんじゃないかと思いました。

改めて牛窪さんに、このようなビジネスがなぜ今の時代に受け入れられるのかというポイントを聞いてみたいです。

牛窪 今お話を聞いていたところで、2つ感じました。

1つは「価値って何なのか」ということ。

日本は2000年代から「デフレの時代」と言われて、安いファッションが出てきたり値下げ合戦が起きたりしたんですが、なぜ企業が値下げをしたのか、私もメンバーだった経済産業省の会議で調査をしたところ、多くはあまり根拠がなかったんです。

「だいたいこの価格なら消費者は買ってくれるかな」とか、不景気になり弱気になって「ライバルが値下げしたから、自分たちも値下げしないと売れなくなるかな」とか。海外の企業は、過去の統計から適正価格を割り出していたんですけど、日本企業は不況に弱気になり、横並びで値下げ合戦が起こっていたんです。 

では「物の価値って何?」ってなったときに、本来なら消費者が価値をつくるべきですよね。メルカリさんもAirbnbさんでも、提供する側が「これくらいだったらどう?」と提案し、消費者側が「よし、乗りました」と合意する。本来それが健全な形なんです。

メルカリなら松ぼっくりにも値段がつくとか、終活中のシニアが着物が安値で売れてもうれしいなど、いままでだったら経済活動として回らなかったものにも価値がつくというのはすごいことです。物やサービスの価値は、私たち消費者が見直していくものです。消費者が求めているなら、松ぼっくりにも値段をつけていいんです。

女性の家事労働の問題もそうですが、コミュニティの中でマンパワーが無償でやり取りされてしまうと、GDP(国内総生産)にカウントされないので経済を押し上げていかないんですね。助け合いではあっても、お金が発生しないと経済活動になりませんから。同じことでも、こういったシェアリングエコノミーはお金を介在させてやりとりするので、いままで経済活動にならなかったモノやコトを数的にカウントできるわけです。

例えば子どもの服のお下がりでも、いままでは裏で身内に譲っていたものを、知らない誰かに売ることでお金になります。そうすると経済活動になり、可視化もされます。

日本の国としてのGDPが上がっていきますし、世界の経済・支援活動も顕在化していくので、実はこういう経済が停滞しまう時代に、そういう思いや需要を掘り起こすというのはすごく大事と思うんです。

もう1つは、松尾さんもおっしゃっていたダイバーシティです。

外出しづらい子育て世代や、なかなか遠くに行けないシニアも、シェアリングエコノミーなら、家という遊休資産をきっかけに、誰かとゆるくつながることができます。

インターネットや動画を通じて、誰かとゆるくつながって収入が得られれば、自己肯定感や満足感を得たり、世の中の役に立っているという感覚も得られます。これは人としての精神的な価値を満たす重要なポイントです。性別や年齢などの差異を乗り越えられるという点も大切なんだと改めて感じました。

ハヤカワ 価値だけでなく「つながり」は、マーケティング的にもビジネス的にも重要になってきているんだなと、発見がありました。

大々的に「エコだから、サステイナブルだから」と言われるまででもなくても、「なんとなくいいことをしている」というオーラにポジティブさを感じますし、「同じ品質のものでも、より地球にいい感じがする」という視点で物を買うというのは、私自身も実感としてありますね。

牛窪 そうですね。「本能的に心地いい」と感じることをやっていくだけで、社会の役に立つことにつながっていくと思います。

ハヤカワ それでは、最後に一言ずついただきたいと思います。

松尾 私はメルカリで自分が売った物のお金を、他の物を買うときに活用するのが好きで、新しい形の経済の一端に触れていると感じます。

売り上げたお金でメルペイを使ってコンビニで買い物をするのも好きです。モノの再活用から生じる、以前にはなかった価値創造と経済活動という気がするからです。

Airbnbのサービスを利用して、宿泊したり旅の途中で体験をすることは、一つの旅の選択肢だと思っているんです。

私自身、ホテルにも旅館にも泊まりますが、Airbnbだとホストが同居する滞在型のところに泊まるという選択肢は、以前にはなかった旅の形だと思っています。旅行には、いろんな形があってもいいのですよね。

滞在型のホストを選ぶ人は「誰かに今日起きたこと、食べたもの、会った人のことを話したいし、シェアしたい」んですよね。そんなニーズがある以上、やはり旅の選択肢のひとつとして考えられるということは素晴らしい。

ホテルも旅館もあって、そしてAirbnbというシェアリングビジネスの形があるというのがいいなと思います。 

新しい経済の形として、いままで使われなかった能力やスキル、知識をシェアしてもらう。今後も活用してもらうとすごくうれしいです。

上村 お話おもしろかったです。メルカリもオフラインの取り組みを強化しています。メルカリの使い方を全国でレクチャーするメルカリ教室を、小さな店舗にアクティブシニアの方を呼んで開催することで、空き家問題の解決や地方活性化にもつながる可能性があると考えています。

個人としてすごく思うのは、メルカリは、物や物に付随するストーリーとプラットフォームが重なって、おもしろい情緒的な価値が生まれたりしているんです。これって「生み出せるのか、お客様が生み出すのか」というところは課題として持っています。

先ほどの牛窪さんからの話の「物の価値は消費者がつくる」というところからも、意図して作ろうとするのはなかなか難しいけど、メルカリやAirbnbを使った人のストーリーをもっともっと企業として発信していけると、またそれを受け取ったお客様が新しい使い方やカルチャーを生み出してくれるんじゃないかと思います。

牛窪 今日はいろいろなキーワードがあったと思います。近年、「日本ではなかなかイノベーションが起きない」と言われていますが、今日のお話を通じて「決めつけ」はやはりよくないな、と改めて感じました。

シェアリングエコノミーの基本は、C to C(消費者から消費者へ)ですが、取引を通じて「こういう使い方ができるよ」というアイデアが消費者主導で出てくることは、私たちマーケッターにも勉強になります。「消費者はこういうものを求めているんだ」というヒントにもなるわけです。

ですので、普段からこうした「やりとり」はマーケッターさんや企業にもぜひ見てほしいですね。そこから「決めつけ」では得られない、新たな日本のイノベーションが起こってくるかもしれないと思います。

消費者同士の助け合いという意味でもヒントを得られ、アプリを見ていて刺激になります。これから社会に出る人や、これから企業で商品開発をしてみたいという人は、ぜひアプリを見て、「自分ごと」としてやりとりを体験してみると、そこからいろいろなヒントが見つかると思います。

ハヤカワ みなさん、ありがとうございます。それでは今日はこのあたりで。お疲れさまでした!

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