「育休? うちの職場じゃムリかも......」
厚生労働省の雇用均等基本調査によると、2019年度の男性の育休取得率は7.48%。前年度の6.16%からわずかに上がって過去最高となったものの、制度の対象となる人の10人に1人も取得できていない計算です。
「周りに育休を取った人がいないから、うちの職場では無理なのだろう」と思ってしまう男性は、少なくないのかもしれません。
「『うちの職場には、男性の育休制度が整備されていない』という人がいますが、大きな誤解です。育休は、育児・介護休業法で定められており、1歳に満たない子どもを育てている労働者から申し出があった場合、事業主は拒むことができません」
こう話すのは、9月17日に出版された『男性の育休』の著者のひとり、みらい子育て全国ネットワーク代表の天野妙さん。
9月23日にあった出版記念イベントでも、「とはいえ、従業員から申し出るのは勇気がいるもの。むしろ事業主のほうから、対象となる従業員に声をかけてほしいくらい」と天野さんは語りました。
「取れない理由」は誤解ばかり
天野さんは、妻がこれから出産を迎えるという男性に育休の取得を勧めると、「取れない理由」として返ってくる言葉の多くに、こうした誤解が含まれているといいます。『男性の育休』では「7つの誤解」に分類して、詳しく説明しています。
BuzzFeed Japanはこちらを参考に、育休について知っておけば損しない5つのポイントをまとめました。
1)育休中の手取りは約8割
「育児休業中も給付金が支払われるということを知らない人が意外と多いのです」と天野さん。
会社員の場合、休業開始から180日間(半年)は賃金の67%、それ以降は50%が、雇用保険から育児休業給付金として支払われます。給付金は非課税で、さらに期間中は社会保険料が免除されるため、実際の手取りは8割ほどに!
育休を取ったBuzzFeedの男性記者は「天使と過ごすあいだのベーシックインカム」と表現しています。
天野さんの試算では、年収600万円の会社員が2カ月間の育休を取得したと仮定すると、可処分所得の減少は実質4%となったといいます。
2)妻が専業主婦でもOK
「妻が専業主婦で家にいるのに、育休を取る必要があるのか」というのもよくある疑問だそうです。
制度上はもちろん、取得できます。
「妻が会社員の場合でも、産前6週間と産後8週間(産前産後休業)は法律で働くことが禁止されており、共働きでも専業主婦でも、産前産後は『家にいる』状態です」(天野さん)
『男性の育休』の共著者で、多くの企業で講演をしているワーク・ライフバランス社長の小室淑恵さんは、男性社員が育休を取得する必要性について、真っ先に「妻の産後うつリスク」を挙げます。
「産後1年未満に死亡した女性の死因で最も多いのが、自殺です。産後うつにならないためにはまとまった睡眠を取ることが大事ですが、いくら夫が早く帰宅してくれても、翌日仕事がある夫に夜中の育児は頼みづらいもの。夫が育休を取るかどうかで大きく変わってくるのはここなんです」
3)父親は2回も休める
男性は、養育する子どもが1歳になるまでのあいだ、育休を2回にわけて取ることができる「パパ休暇」という制度があります。
この制度を使って、たとえば妻の産後すぐに育休を取得し、いったん職場復帰したあと、妻の職場復帰の時期に合わせて育休を取るということもできます。
また、両親が育休を取る場合には、トータルの育休期間を延長できる「パパ・ママ育休プラス」という制度もあります。原則は子どもが1歳になるまでですが、1歳2カ月に達するまで可能に。夫婦で育休期間が重複していても順番に取得しても構いません。
4)ちょこっと仕事の「半育休」
どうしても仕事をせざるを得ない、という人には例外的に、雇用主との合意のうえで「一時的・臨時的」な業務に限り、月10日以下、10日を超える場合は月80時間まで働くことができます。
通称「半育休」と呼ばれています。
ただし、恒常的に働くことを前提としたものではないため、育児休業給付金が受け取れなくなったり社会保険料の免除がされなくなったりしないよう、注意が必要です。
5)いなくても職場は回る
そもそも「どうしても仕事に穴をあけるわけにはいかない」という場合の多くは、「育休ではなく、働き方の問題」だと、小室さんは指摘します。
「仕事のノウハウを『秘伝のタレ』みたいに抱え込んでボトルネックになっていたり、社内向けの資料なのにカラフルなパワポをつくるのが慣習になっていたりと、業務の属人化解消や効率化ができていないケースがあります」
また、中小企業に勤める男性が育休を取得すると、申請すれば企業には「両立支援等助成金」が支払われるため、「会社に迷惑をかけてしまう」と萎縮する必要もありません。
「企業は、助成金を利用して代替要員を雇ったり、業務量が増えた同僚に手当を支払ったりすることもできるわけです」と天野さんは話します。
小泉進次郎大臣が「育休」をとった環境省では、大臣がウェブ会議から入るためオンライン化が進み、コロナ禍での「大臣レクのオンライン化」「ペーパーレス化」「職員のテレワーク率」で、霞が関の省庁ではトップになった、と小室さん。
育休の前例が、すべての人の働きやすさにもつながったら最高ですね!
育休にまつわる先入観や誤解についての詳しい解説は『男性の育休』(PHP新書)から。
「だって家族といたいから #育休を考える日」
【出演者】 犬山紙子さん(エッセイスト)・劔樹人さん(ベーシスト・漫画家)・田中俊之さん(社会学者)・伊藤みどりさん(積水ハウス株式会社執行役員)・MC ハヤカワ五味さん
【提供】積水ハウス株式会社