Posted on 2018年6月10日

    思いきり泣き、そして考えた。私にできること。児童虐待は #ひとごとじゃない

    犬山紙子さんが、ひとりでも多くの声を集めたい理由

    6月7日、イラストエッセイストの犬山紙子さんは「いてもたってもいられず」、Twitterでハッシュタグを使って呼びかけた。

    #児童虐待問題に取り組まない議員を私は支持しません

    ⭐️お願いです⭐️ 虐待を受けている子供は今もいて、その子供たちの命と心を考えたら猶予なんてない。 #児童虐待問題に取り組まない議員を私は支持しません 賛同される方是非このハッシュタグを使ってつぶやいてくださいませんか。 何千、何万となって無視できない状況に持っていきたいです

    痛ましい虐待事件を知ったから

    東京都目黒区で、5歳の船戸結愛ちゃんが3月に死亡し、両親が保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕された事件。十分な食事を与えず、暴力をふるい、栄養失調状態で放置した虐待の疑いがもたれている。

    結愛ちゃんは、以前住んでいた香川県で2回、児童相談所に保護されており、顔や脚にあざが見つかっていた。目黒区に転居してから品川児童相談所が家庭訪問したが、結愛ちゃんとは会えなかったという。

    結愛ちゃんは毎朝4時ごろに起きてひらがなの練習をさせられており、「もっとあしたはできるようにするから もうおねがい ゆるして ゆるしてください おねがいします」などと書いたノートが見つかった。

    6月7日、日本テレビ「スッキリ」にコメンテーターとして出演した犬山さんは、この事件についてコメントしながら、思わず号泣してしまった。

    自身も1歳5カ月の長女の子育て真っ最中。だが、母親だからというよりも「大人として、なぜ子どもを守れなかったのか、という無力感が大きかった」という。

    BuzzFeed Newsは犬山さんに、呼びかけの経緯を聞いた。


    Akiko Kobayashi / BuzzFeed

    犬山紙子さん

    虐待のニュースから目をそらしていた

    虐待のニュースって、今までは目をそらしていたんです。自分の心がすごく傷つくのがわかっていたからです。

    ショックを受けて暗い気持ちになって1日中しんどくなるという不安がすごくありました。だから虐待のニュースに向き合わず、「悲しい」という感情だけで終わらせていました。

    でも、今まで虐待を受けたと報じられた子どもたちに対して溜まっていた思いが、結愛ちゃんのニュースを知ったことで、コップから溢れてしまったんです。

    悲しいけれど、しんどいけれど、今回はちゃんと向き合おう、と思いました。

    コメントしながら号泣

    Twitterで専門家の意見を追いかけたり本を読んだりして、児童虐待について勉強を始め、児童相談所の拡充など、いくつか考えられる対策を自分なりに話せるようにしていました。

    それでも「スッキリ」でコメントしながら、号泣してしまいました。コメンテーターが感情的になるのはよくないとわかっていたんですが、涙を止めるのは無理でした。

    「現状を変えなければいけない」とコメントした私が、帰宅してから何もしないのもおかしい、と悶々として気持ちを切り替えられずにいたところに、「スッキリ」を見た人から「一緒に泣きました」「同じ気持ちです」という反応をいただきました。

    虐待のニュースを見ると、確実に傷つきます。それに対して、私たちは思い切り泣いてもいいのではないでしょうか。

    「虐待のニュースは悲しくなるから見ない」「ツイートもミュートする」という人もいます。それも自分を守る一つの方法です。それくらい傷つくことだから。

    なぜ自分は傷ついているのかということを、みんなそれぞれ掘り下げていいと思います。どうしようもなくいたたまれない。そのうえで、何かしなきゃいけないと思っている人もいます。どうしていいかわからない人もすごく多いです。私もその間にいます。

    専門家でもないひとりの市民である私と同じ立場の人、同じ気持ちの人、なんとかしたいけどやり方がわからない人たちにもできることとして、 #児童虐待問題に取り組まない議員を私は支持しません というハッシュタグを作りました。6月9日昼の時点で約5万件、拡散されたようです。

    幼児は母親が育てるべきで保育園を増やす必要はないと言う政治家さん、孤立が一番怖いんです。虐待されても気づかない、救えない。それでも親だけに育児を任せますか? あらゆる人間が親になりうるし子どもは親を選べない、逃げられないんですよ。 #児童虐待問題に取り組まない議員を私は支持しません

    親になる準備ができていない男女の間にも子どもはできます。子どもを守る児童相談所での人員と支援を増やすための予算を。そして、避妊を含む現実的な性教育を。里親や養子縁組など実親以外が育てる選択肢が広がることを望みます。 #児童虐待問題に取り組まない議員を私は支持しません

    「保育園落ちた」みたいに

    これまで、政治について仕事でコメントすることはあっても、Twitter(@inuningen)やブログで発信することはありませんでした。虐待については問題が大きすぎるから、私ごときの一人の力では何もできないとも思っていました。

    でも今回、ふだん政治の話をしない友達からもLINEが次々と来て、身近な人たちが一緒に怒っているんです。 ひとごとではないと感じている人が、実はたくさんいたんです。

    テレビ出演などによって課された自分には分不相応な力を、使うことについては懐疑的でした。でも、今こそ、力の使いどきなんじゃないかなと思い、8万人弱いるTwitterのフォロワーさんに呼びかけることにしたんです。

    私は素人だから、こうすれば虐待は減るという提案をしても的外れかもしれませんが、たくさんの人たちの怒りや悲しみ、何かしたいという思いを可視化することは、一般人の私にでもできるはずだと考えました。

    児童虐待については、選挙で票にならないから政治家がなかなか動かないとも言われています。「保育園落ちた日本死ね!!!」(2016年に匿名ブログから広がり、待機児童問題に注目が集まった)みたいに議員さんが取り上げざるをえないようなタグにしたくて、あえて「支持しません」というきつい言い回しを選びました。

    政治家には、取り組まなければ続投の危機に関わるくらい重要課題だと考えてもらいたいからです。#児童虐待問題に取り組む議員を私は支持します というポジティブなタグも生まれていて、両方一緒に盛り上がってほしい。数が集まって現状が動きさえすれば、どんなタグでもいいんです。

    ハッシュタグを使ってくれたツイートを読んでいると、「ふだん政治のことはつぶやかないけど」という人、「自分には子どもはいないけれど」という人、「虐待されていた」という人もいます。自分の思いや、具体的な対策を書いてくれる人も多いです。それくらいみんな本気だということを、政治家のみなさんには深く受け止めてほしいです。

    今まで政治的な発言は控えてたんだけど この件、ニュースで見るのも辛いです。少子化対策と共に、子育て支援や虐待問題に力を入れて欲しいです。今後成人年齢も引き下げられることだし、子育て世代にとって喫緊の課題ではないでしょうか。 #児童虐待問題に取り組まない議員を私は支持しません

    2歳くらいからは、全員短時間でも保育園に行ける世の中になって欲しい。虐待のサインを見逃さないために、母親が育児を抱え込まないために、子供が社会に親しむために、育児が孤独にならないために。 教育機関と警察と児相の連携も早く。 #児童虐待問題に取り組まない議員を私は支持しません

    自分のために

    ニュースが流れるたび、感情がたかぶり、傷つきます。でもニュースが流れなくなると、虐待をなくそうという議論もしぼんでしまうでしょう。風化させたくない、という焦りもあります。

    なぜ、虐待のニュースにこんなに傷つくんでしょう。

    自分の子どもを思い浮かべたり、自分の子ども時代を思い返したりします。一番つらいのは、子どもは大人が守ってあげなきゃいけないのに、大人の私がアプローチできなかったという無力感で、自分を責めてしまうこと。これまでコツコツと積み上げてきた自己肯定感が崩れてしまうというか。

    私は、自信がなくなったりしんどくなったりしたときに、募金をすると気持ちが軽くなることがあります。1万円で海外の子ども何人にワクチンを送れた、と心が救われるのです。だから、虐待問題に取り組む動機も、利己的なところはあります。私、こういう感情を美化できないんです。そうです、自分のためなんです。

    ただ、自分を責めるのは簡単ですが、私たちは社会や政治に傷つけられているという考え方もあってもいいと思うんです。その社会を変えるために、一員として、できることをするということでも。

    わたし多分、笑って泣いてドタバタ喜劇子育てしてるお母ちゃんて会社の人とかに思われてるかもしれないけど、マジで紙一重な時期もあったし、ただ「運が良かっただけ」だと思ってる。そんな賭け事みたいな状態で子を育ててるのはおかしい。 #児童虐待問題に取り組まない議員を私は支持しません

    #ひとごとじゃない

    虐待する親への厳罰化を求める声、児童相談所の対応を非難する声も上がっています。親を責めたい気持ちはわかりますし、児童相談所の対応には私もすごく怒っています。

    けれど、逮捕されたお母さんはもしかしたら被害者の側面もあるかもしれないし、児相の人たちはたくさんの案件を抱えていていっぱいいっぱい。その現状をなんとかしないと、怒っているだけでは意味がありません。目的は「犯人探し」ではなく、児童虐待をなくすことだから。

    どうして親は虐待してしまったのか、そうならないようにどうすればいいのか、多くの人たちが正しい理解と想像力をもち、考えられるようになればと思います。

    だって、結愛ちゃんの名前って、どう考えても愛情しかない名前ですよね。この子に幸せになってほしいと願って産んだはずなんです。

    我が子を虐待しそうになる気持ちを、私は理解できません。けれども、それは私が保育園に運良く預けることができ、そしてツーオペ(夫婦で)で子育てできているからで、そうじゃなかったら私も虐待しそうな状況になっているかもしれません。

    実際、「私も子どもに手をあげそうになった瞬間がある。ひとごとじゃない」とツイートしている方も大勢いました。児童虐待は #ひとごとじゃない そう訴えていきたいです。

    最後に、繰り返しになるのですが、議員さんには焼け石に水ではなく根本的な解決のアプローチをしてもらいたい。それにはたくさんの声が必要なので、子どもを守りたいと思う人は、ぜひ声をあげてください。

    心を痛めているタレントやインフルエンサーのみなさんも、児童虐待について思うところがありましたら、#ひとごとじゃない のハッシュタグで、Twitterでもインスタグラムでも、つぶやいてもらえたらうれしいです。


    BuzzFeed Japanは、児童虐待や子どもの権利に関する記事に #ひとごとじゃない のハッシュタグをつけて、継続的に配信していきます。


    Contact Akiko Kobayashi at akiko.kobayashi@buzzfeed.com.

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