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セクハラを避けるため女子禁制の「ハラミ会」はアリ?ナシ? 作者に意図を聞いた。

飲み会での「うっかりセクハラ」に嫌気がさした男性たちの会(フィクションです)。

飲み会で、知らず知らずのうちにセクハラをしてしまった男性たちが、「ハラスメントを未然に防ぐ」ために男だけで飲む会、略して「ハラミ会」がネット上で話題になっている。

漫画家の瀧波ユカリさんの著書『モトカレマニア』のワンシーンだ。ハラミ会が登場する第2話はサイト上で無料で読むことができる。

不動産店に就職した主人公の難波ユリカ(27歳)。終業後、男性社員たちから「我々は一般女性とは飲みません」「飲みの席でうっかりセクハラする自分に嫌気がさした男たちだけで飲む」「女性がなんで傷つくかわからないから」などと言われ、飲み会に誘われなかった。

読者がTwitterで11月16日、漫画の1ページとともに「ハラミ会最高か...」と紹介したことで、賛否両論が起こった。

「ハラスメントの境界線が人によって違うから難しい」という理由から「最大の防御法」「合理的」と評価する声がある一方、

「女性だけを誘わない行動自体がセクハラでは」「セクシュアルな話題を禁止すればいいだけ」と否定する声もあった。

拙著「モトカレマニア」に出てくる「ハラミ会」(ハラスメントを未然に防ぐために男だけで飲む会の意)、話題になるのはやぶさかではないですが、わずかながら「ハラミ会が流行っているらしい」と書いてる人もいるので一言🙋‍♀️ ・フィクションです! ・流行ってません(今後流行る可能性はあるけど)

ワンシーンを切り取ったことによる誤解も多く、作者の瀧波さんが「フィクションです!」と強調する事態にもなった。

しかし、瀧波さんは「ハラミ会」に関する賛否のコメントを興味深く読んだという。もともと、どういう意図で描いたのだろうか。BuzzFeed Newsは本人に話を聞いた。


『モトカレマニア』は2巻が出たばかりですが、1巻が出たときには「ハラミ会」について特に話題にならなかったので、ここまで広がるのはおもしろいな、と思いました。

漫画の中での「アリかナシか」という議論と、実際に自分たちにとっての「アリかナシか」という議論があるようです。

漫画の中での「アリかナシか」については、Twitterで広まっている1ページだけではなく、前後も読んだうえで考えてもらえたらと思います。

とはいえ「何かしらの問題がある状態」を物語に組み込み展開させていくことが目的であって、そこに「アリかナシか」の明確が答えがあるわけではありません。「ハラミ会」についてのシーンは2巻にも登場しますので、ぜひ読んでいただけるとうれしいです。

作者自身も誘われなかった

私自身、漫画家としてデビューする前に、昼は町の小さな不動産店でアルバイトをし、夜はクラブのホステスとして働いていたんです。不動産店の社員の男性たちは、ランチに誘ってくれることはあるけれど、夜の飲み会に私を誘うことはありませんでした。仕事中も、すぐ隣に座らないなど少し距離を置いて「線を引いている」ように感じられたんです。

実際にどういう意図でそうしていたのかはわかりませんが、普段の接し方からして、若い女性への対応に気をつけているようには感じられました。そんな彼らの態度や雰囲気から着想を得て作ったのが「ハラミ会」のネタです。

夜のクラブは、ある程度の節度をもったうえでの疑似恋愛を提供する場ですから、隣に座った女性に「かわいいね」と言うのはOKだと思うんです。一方、会社の女性社員に同じ発言をしたらセクハラになることもあるでしょう。

根本的な解決ではない

あるところでは女性を褒めると喜ばれ、別のところでは女性を褒めると嫌がられたり傷つけたりする。男性にとって線引きが難しいというのは、一定の理解はできます。だから、失敗を何度もして、もう二度としたくないから接触自体を避けることで未然に防ごうという、ハラミ会的な考え方があってもいいんじゃないかなあと思います。

一方、漫画には「『セクハラしちゃうから女はお断り』っていうのもセクハラじゃない?」「問題の解決ってよりは逃避だよね」というセリフもあります。結局は性差別であるし、抜本的な解決になっていない。そういった考えにも大いに共感します。

昭和ではありえなかった「男だけ」

「ハラミ会」に肯定的なリアクションは、男性たちから多かったです。セクハラをしてしまうことに嫌気がさし、男だけで飲み会をすることを「いいね」と感じる男性が多いということは、「セクハラのボーダーラインがわからず悩んでいる人」「言っていいことと悪いことの区別がつかず困っている人」が少なからずいるということだとわかります。

ひと昔前、昭和の頃だと、飲み会といえば女性社員を接待要員として呼び、お酌をさせるのは「よくある光景」でした。もしあの頃に、会社で「女性にお酌をさせたくないから男だけで飲みたい」とでも言おうものなら、上司や先輩から「甲斐性なし」とバカにされたかもしれません。

だから、目の前に誘える女性がいるのに、セクハラをしたくないから男だけで飲むという漫画の設定が肯定的に受け止められるということは、昭和の価値観からしたら新しいのかもしれません。セクハラというものが認知され、セクハラをしてはいけないという自覚もある男性が増えてきているということではないでしょうか。

Twitter上では、「もうセクハラしたくないと自覚した男性」について話している人と「いまだにどこからがセクハラかわからない男性」について話している人とが相容れないままです。

「なんでもかんでもセクハラ?」などとうそぶく男性に対して「どうしてそんなこともわからないのか」と愕然とする気持ちはよくわかりますし、私もそう感じることは多々あります。

でも、時代によって価値観が変化していく過程で、「まだ理解が足りていない」「失敗は許さない」「わからないなんてありえない」と責めるだけだと、ついてこられない人も出てくるのではないでしょうか。

これは個人の問題というよりは、教育の問題であるように感じます。アップデートされた価値観を教わる機会がなかったということなのだと思います。

「今日はハラミ会に」

「ハラミ会」を、女性を排除するために悪用してほしくはないのですが、前向きな活用はできそうです。

例えば、セクハラ常習犯の上司が女性社員を飲み会に誘ったことに気づいた男性社員が、「今日はハラミ会にしませんか」と上司に提案し、女性社員に「帰っていいよ」と促すとか。「ハラミ会」という軽い言葉でカドを立てずに回避することができるかもしれません。

「もうセクハラしたくない」と感じた男性たちが、女性と飲むこと自体をやめるのは、アリかナシか? これに一つの正解はないですし、これが正解だと思っても、他の人にとっては正解ではなかったりもします。漫画だから、キレイな解決方法を提示して「めでたしめでたし」にすることもできますが、そんなに簡単にはしたくありません(笑)。

「ハラミ会」もそうですが、『モトカレマニア』ではいろんな「アリとナシの間」を描くようにしています。

脳内でモトカレと会話する生活はアリかナシか?お互い元の恋人を忘れる目的で交際するのは? 不意打ちのように突然告白するのは? という感じで。正解はないんですけど、これはアリかな?ナシかな? って自分のこととしてあてはめて、考えてもらえたらいいなと思います。

瀧波ユカリさんのBuzzFeed Japanでの漫画はこちら