これは...ギリギリ固体化したソースでは? 意外な場所でつくられた超高級食材
さまざまな食に関する情報が集まる特集「いろんなおいしい!」。今回は、高級食材のキャビアをご紹介します。こちら、母校でチョウザメを養殖している社長のこだわりが詰まったキャビアなんです。とろ〜りとした食感は、もはやソース!食べ尽くしますよ〜!

ジャーン!!

突然ですが、キャビアです!

キャビアとは、チョウザメの卵を塩漬けにしたもの。トリュフ、フォアグラと並んで世界3大珍味の一つとされる高級食材です。
これまでの人生では、結婚式のコース料理の前菜くらいでしかお目にかかったことがありませんでした。
こだわりが半端ないキャビア

実はこのキャビア、香川県東かがわ市の廃校になった中学校で養殖されているチョウザメから採れたものなんです。
この中学校の卒業生で、地元で内装業を営む板坂直樹さんが、廃校の用途を検討中に「ここで瀬戸内産のキャビアをつくる!」と思い立ったのが8年ほど前。
中学時代に水泳部員だったことから、最初は50mプールでチョウザメを飼い始めたというから驚きです。
今は体育館の水槽でチョウザメを養殖し、家庭科室で採卵・加工しているそうです。
(※廃校キャビアの誕生秘話はこちらの記事から)

板坂さん自身も当時、キャビアは「結婚式で食べたことがある程度」だったといいます。
しかし、そこからキャビア愛が炸裂します。
「こだわりが多ければ多いほど、商品の魅力が高まると信じています」
まずはそのこだわりについて、聞いてみました!
こだわり① 水

瀬戸内の温暖な気候と豊かな自然は、チョウザメにとっても贅沢な環境のようです。
チョウザメの口は下向きについており、底の泥やゴミを吸い込みやすいため、水槽を清潔に保つよう心がけ、井戸水を掛け流しに。
「井戸水は水温が安定しており、チョウザメにストレスを与えにくいというメリットもあります」
こだわり② エサ
チョウザメは7年ほど成長させてから採卵するため、幼少期と成長期、採卵前など、成長段階によっても与えるエサを変えているそうです。
「チョウザメのエサである魚粉になる魚のエサの成分までさかのぼって調べています」
こだわり③ 採卵

1匹のチョウザメから採卵できるのは一度だけ。最も軟らかいキャビアが採れる日を、個体ごとに割り出しているそうです。
「7年かけて育て、採卵のベストタイミングはたった24時間。採卵の瞬間は、人間の出産にも近い緊迫感に包まれます」
卵を洗う、水気を切る、塩を混ぜる、それぞれの作業時間も秒単位で管理して、品質の統一をはかっているとのこと。
こだわり④ 塩

淡水魚であるチョウザメには、海の塩よりも岩塩が合うということで、ヨーロッパを中心に数百種類を試した中から板坂社長が認めた岩塩を使用。
それでも、究極の岩塩を求める旅はまだまだ続いているそうです。
こだわり⑤ 冷凍
冷凍する過程で水分量の多いキャビアが膨張したり破裂したりしないよう、瞬間凍結の技術を採用。解凍してもドリップ(液体)が出にくく、旨みを閉じ込められるそうです。
塩分3%未満に抑えているため、水分を残したキレイな球体のキャビアの食感は「これまでの常識を覆すはず」と板坂社長。
気になるキャビアのお味、いよいよ実食です!
ところで、どんな食べ方をすればいいんでしょう...!?

ここまで繊細なこだわりを、自分のような庶民の舌が感じ取ることができるのか...そんな不安がよぎります。
調理した経験もないので、キャビアを台無しにしてしまう心配も...。
意外にも、板坂社長からは「白い色の食材なら、たいてい合います」と寛容なアドバイス。
さらに「時間の経過による味の変化を楽しんで」ということでした。
そこで、コース仕立てで3日間の献立を考えてみました。

白い食材を基本に、解凍してから食べきるまでの鮮度を意識してメニューを組み立ててみました!
1日目:そのままいただきます。

「ベステル」というハイブリッドの品種のチョウザメのキャビア。
板坂社長からは、金属製のスプーンを使うことを禁じられました。
「すくい上げてから口に入れるまでのわずか2秒で、金属の匂いがキャビアに移ってしまいますから」
そこで、真珠貝でできたキャビア専用のスプーンを使います。シルバニアファミリー用か?ってくらい小さなスプーンです。
ん?プチプチ...ではない!?

見た目では粒感が際立っていますが、スプーンで軽く触るとつぶれそうなくらい繊細です。
キャビアって「プチプチ」と表現する人が多いんじゃないかと思いますが、これは擬音語で表すとしたら「ネロ〜」って感じ。
舌に乗せると、かすかな塩気を感じます。そして、ややナッツっぽい濃厚な香りが鼻に抜け、ゆっくりと舌に広がっていきます。
イクラみたいに皮がはじけて液体が飛び出るのではなく、粒全体が「ギリギリ固体化していたソース」なんです。舌に皮も残りません。
シャンパンに合わせてみます。

一口目はシャンパンが先か、キャビアが先か、という贅沢な悩みが生まれます。
辛口のCAVAとの相性は最高!
これまで、魚介の臭みをシャンパンで洗い流すような飲み方をしていたのが、完全に間違いだったと気付かされます。
日本酒はどうでしょうか。

選んだのは、四国つながりで高知の「酔鯨」。
う〜ん!
まったり芳醇な香りが増幅され、これは酔う!
個人的には、シャンパンのほうがスッキリしていて、キャビアの旨味が引き立つ気がしました。
2日目:白い食材を合わせていきます!

用意した食材は、ホタテの刺身、イカそうめん、じゃがいも、マスカルポーネチーズ、パスタ(カッペリーニ)、それに蒸したタラ、バゲットと白飯です。
バゲットとマスカルポーネ

マスカルポーネチーズと生クリームを混ぜたもの。
...これは、いらなかったかもしれない...ちょっと脂っぽさが気になりました。
バゲット+キャビアのシンプルな部分が、バタートーストのように同化して最もおいしかったです。
「実はあまり合わせてほしくない食材」を板坂社長に聞くと、レモンやサワークリームなどの香りが強い食材とのことでした。
ホタテ・イカ

アワビ、白子などの白い魚介が合うとのことで、近所のスーパーで探しましたが、入手できたのはホタテの刺身とイカそうめん。

しかし心配無用!
魚介の旨味をキャビアが包み込んで、最強のタッグです。
イカのほうはやや甘みの主張が強めだったので、好きなのはホタテかな。
「タイやカワハギの薄造りでサッと包んで、何もつけずに食べるのもおいしいですよ」
それは最高に違いない!!
ここで、味が「ひらく」のを待ちます。
板坂社長 「解凍してから冷蔵庫に置いておくと、キャビアの香りと味がひらいてくるんです。お料理に合わせるのはそれからがいいですね」
私「それって、一晩おいたカレーみたいなイメージですか?」
板坂社長 「......違うけど、だいたいそんな感じです」
社長、とっても寛容です。
3日目:温かい料理に挑戦します!

白子が入手できなかったので、代わりといってはなんですが、白ワインで蒸したタラにのせてみました。
淡白な白身魚とキャビアは相性抜群で、こんなシンプルな料理でも一気にごちそう気分にしてくれます。
たしかに、キャビアを寝かせたことでまろやかさが増したような気がします。
じゃがいもはマッシュポテトでももちろん合うけれど、薄めに切って軽くゆでたものにたっぷりキャビアをのせてもおいしそう!
炭水化物とのコラボはどうでしょう

あえて味付けせず、オリーブオイルも混ぜず、ただ細い麺(カッペリーニ)と絡めてみただけの一品。
麺の小麦臭さを感じるくらい、キャビアがピュアな味であることにびっくりしました。
〆には究極の食材を!

大トリは、私がこの世で最もおいしい食材だと思っている、岡山の実家の父がつくった米にのせてみます。
「香川と岡山は瀬戸内海の対岸ですし、どちらも水がいいところですから、相性がよさそうですね」と板坂社長にも太鼓判を押してもらいました。
究極のTKG(卵かけご飯)の完成です!

土鍋で炊いたツヤツヤの白飯に、たっぷりの魚卵。
白い粒に黒い粒が絡んで、トロトロと口の中で混ざり合っていくのを感じるのは、まさに幸せすぎるひとときででした。
時間差フルコース、ごちそうさまでした。

3日間いろいろなキャビアの食べ方を試しながら、廃校で育つチョウザメに想いを馳せているうちに、自分の母校や実家のことまで思い出して、何だかほっこりしました。
高級食材から得られた、プライスレスな時間に感謝です。
瀬戸内キャビア「CAVIC」の詳細はこちらから。
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