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「わかったつもりには一生なれない」1人の想いが、多くの社員を動かした。お互いの“選択”を尊重できる社会をつくるために

「東京レインボープライド」のトップスポンサーとして参加している、飲料メーカーの「チェリオコーポレーション」。日本を代表するアライ企業として活動するようになった背景には、社長である菅大介氏の熱い想いがあった。

アジア最大級のLGBTQの祭典、「東京レインボープライド」が4月22〜24日の3日間に開催される。

コロナ禍での2回のオンライン開催を経て、今年、3年ぶりに代々木公園でのリアル開催が実現した。


数多くの企業がスポンサーとして名前を連ねる中、トップスポンサーとして率いるのは、「ライフガード」など、個性的な商品ラインアップで知られる「チェリオコーポレーション」だ。

チェリオは2014年から東京レインボープライドに参加。事業を通じた多様性推進の取り組みが、世界最先端事例としてカナダの大学でビジネススクールのケーススタディになるなど、日本を代表するアライ企業として知られている。

活動を積極的に進めているのは、代表取締役社長の菅大介(かん・だいすけ)氏だ。

菅社長とチェリオはなぜ、アライ企業として積極的に活動するのか。その背景には、当事者である友人の存在があった。

「東日本大震災があった2011年、その友人はイギリスに住んでいました」

「歳を重ねているし、震災をきっかけに帰国したい気持ちが強くなったけど、日本にいると職場でもアイデンティティを表に出せなくて辛く、半分死んでいるような感覚になる、と」

「その話を聞いた時、一企業のオーナーとして、400人以上の社員がいる事業体で意識の改革ができたら、友人の力になれるんじゃないかと考えたんです」
しかし、当時はまだ、「LGBTQ」という言葉すら社会に今ほどは浸透していなかった。社内の反応は冷たかった。


「まず一つは取り組んでみようと、会社の会議で話をしてみたら、社員たちはあまり認識がなく、『知らない』『見たことない』という反応でした」

「特に、LGBTQという言葉自体がほとんど知られていないので、ほぼ無関心に近かったです」

「でも、無関心ならやってみようかなと。どうやろうか探しながら経営をしていました」

試行錯誤しながらどう取り組みをすべきか悩んでいた菅社長は、2013年に、もともと面識のある東京レインボープライド共同代表理事の杉山文野(すぎやま・ふみの)さんと再会した。

「文野さんから『レインボープライドのスポンサーをしてくれない?チェリオって、カラフルじゃない』と、お願いをされたんです」

「自分自身、カリフォルニアの大学に行っていたこともあり、ダイバーシティはすごく大事だと思っていて。日本でも広めていきたいなと思っていたので、お手伝いしようと思いました」


最初は物品の寄附や提供などをしていたチェリオ。しかし、あるプロジェクトで訪れたサンフランシスコでの出来事がきっかけで、東京レインボープライドとの関わり方も変わっていったという。

「日米の起業家で交流して、日本の起業家精神を広めていくプロジェクトに、メンバーの一人として文野さんをサンフランシスコに招いたんです」

「彼は『東京レインボープライドを、サンフランシスコレンボープライドくらい大きくしたい』と言っていたので、お手伝いをしようと。そこでサンフランシスコプライドのリーダーを紹介しました」

「文野さんが『東京プライドは今、1万人の規模。サンフランシスコプライドは100万人だが、1万から100万の道のりはどうしたらいいか』と質問をした時、そのプライドのリーダーは、こう答えたんです」

「『この40年間、私は一人一人と出会って、毎回毎回、これは私たちの問題だけど、あなたの問題にもなり得る。そういう課題だから、一緒に取り組んでくれませんか、という話を一対一でし続けている。その積み重ねが100万人なんです』」

「これを聞いた文野さんは、帰り道に『自分のやっていることが間違っていないんだ』と身にしみていた様子でした」

「彼が東京レインボープライドの代表になった時、2丁目とか、以前から関わっていた方々一人一人に挨拶をして回ったんです。プライド・パレードが歩くところも、お店の一軒一軒に挨拶をしたり。そういう人なんですよね」

「それを見て、なるほど、一人一人にちゃんと時間を使っていればしっかり支持も広がるんだなとわかりました」

「文野さんの熱い想いを目の当たりにし、彼がそうやってソーシャルインパクトをつくっていくのであれば、企業の社長として、お金でサポートしたいと考えたんです」


チェリオが本格的に東京レインボープライドのスポンサーとして活動をし始めたことにより、菅社長の考えに賛同し、「この価値観を広めたい」という想いで入社する社員も増えたという。


「その社員たちがマーケティングチームに入り、社内報で毎月LGBTQコラムなどをつくったりと、大きな動きがあって。そこから、プライド・パレードをみんなで歩こうと、積極的に参加の呼びかけをし始めました」

「最初はみんなよく分かっていなかったんですが、とにかく一回歩いてみようと。一度来た社員が感動して、これは素晴らしい体験だからと、次の年に自分の同僚や部下を連れてくるんですよ」

「それでまた来た社員たちが、いろんな想いを感じて、周りに広めていって、アライがどんどん増えていく。それが一番大きいですね」


『おいしい、たのしい、あたらしい』をモットーに、飲料をつくり続けているチェリオ。アライ企業としての活動の中では、どんなポイントを大事にしているのだろうか。


「ダイバーシティインクルージョンに関して言うと、お互いと自分のアイデンティティ、パートナーシップ選択を尊重する社会をつくりたい、という想いで取り組んでいます」

「日本は恵まれていて、自己実現というか、自分の生き方を選べる環境にあるので、その環境下において“チョイス”というものがお互いに尊重できればいいなと。とどのつまり何かって考えたら、やっぱりここなんじゃないかと思っています」

どう取り組めばよいか悩んでいる会社に送るとすれば、どんなメッセージがあるだろうか。


「まずは一緒にプライド・パレードを歩きましょう。より多くの想いを持った人たちと実際に歩いてみることで、自分たちなりにやれることに気づけるんじゃないかなと考えていて。やり方に正しいとか間違いはないと思いますが、当事者意識を持って一緒に体を動かすのが一番早いのではないかなと」

「とにかく歩いてみる、感じてみる。気づくことが非常に多い時間だと思うんです。私も毎年歩くことで、たくさんの人のパートナーシップの多様性を感じます」

「LGBTQという言葉のくくりではなく、一人一人が違うんだなと感じますし、絶対にわかったつもりには一生なれないなと思いながら毎年歩いています」

「全部はわからないけれども、一緒に体を動かして前に進んでる感覚を、より多くの人たちに持ってほしい。アライとしても、それを押しながら社会をつくっていきたいなと思っています」

🌈「“性”と“生”の多様性」を祝福する日本最大のLGBTQイベント「東京レインボープライド」の開催に合わせて、BuzzFeed Japanでは4月22〜26日にかけて、性的マイノリティに関する情報やインタビューを「LGBTQ特集」としてお届けします。

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