ロンドンで開店して約1年の西アフリカ料理のレストランが、ミシュラン一つ星を獲得した。
シェフのジェレミー・チェンさんと、ディレクターのIré Hassan-Odukaleさんが生み出したレストラン〈イコイ(Ikoyi)〉では、シェフのチェンさんの目で厳選した西アフリカの食材を使った新感覚の料理を提供している。
ラズベリーと激辛唐辛子スコッチ・ボネットで味つけされた食用バナナ、燻製した蟹のジョロフライス、スヤ(ナイジェリア)のスパイスを使ったイベリコ豚などだ。また、西アフリカ産の木になる胡椒の実であるセリムの種子も使っている。
Hassan-Odukaleさんは次のようにBuzzFeed Newsに話す。「とても喜んでいます。ミシュランにとても感謝しています。私たちのことを検討していただき、一つ星の価値があると考えてもらえて光栄です。最高の気分です」
もちろん、多くの人が賞賛している。
チェンさんとHassan-Odukaleさんはロンドンで出会った。Hassan-Odukaleさんは、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで政治経済を学び、ロンドンでHassan-Odukaleさんのナイジェリアの経歴とチェンさんの独創性が上手く融合した。
Hassan-Odukaleさんは伝統的なナイジェリア料理を懐かしく感じるようになっていたが、西アフリカ料理となると、独創性が欠けていることを歯がゆく思っていた。
ふたりはイコイのことをアフリカ料理店とは呼ばないが、メニューやコンセプトにアフリカ大陸の影響が及んでいることは否定しない。店の名前は、Hassan-Odukaleさんが生まれたラゴスの裕福な地域イコイにちなんでいる。
嬉しい偶然だが、ミシュラン一つ星のニュースは10月1日、ナイジェリアの58回目の独立記念日に入ってきた。
Hassan-Odukaleさんは次のように話している。「ミシュランの審査員の人たちは、料理を審査したのであって、コンセプトではありません。どこから来た食べ物であるか、私たちが提供している料理はどんなものかは関係ないのです。ミシュランにとっては、ただ単に店にきて、私たちが安定して望ましい基準と品質の料理を提供している、ということを認めただけです」
英国人シェフのジェイミー・オリバーがプロデュースしたジャーク・ライスが、ジャマイカ系の議員に批判されるなど、悪い意味でアフリカとカリブの料理が注目を集めている中、イコイもまた批判とは無縁ではなかった。
伝統的なアフリカ料理の愛好家たちは、量が少ないことと、アメリカの画家ロスコに影響を受けた料理の盛りつけを取り上げている。
「いろんな意見があると思います」とHassan-Odukaleさん(32)は話す。「ですが、再現しているのは1、2皿しかありません。着想を得たものはあっても、まったく同じものを再現はしません。西アフリカ料理を再現しようとはしていないのです」
「なので、西アフリカ料理と謳うことは微妙なのです。というのも、西アフリカの人がお店に来て、実際に私たちが提供しているものが西アフリカ料理ではないことを知ると、喜んでもらえないことがあるからです」
「基本的に、私たちは西アフリカ料理の材料を使い、材料から着想を得て、伝統的な調理方法からは少し離れて、ただひとつだけの一品となるように創作しています」
この料理の秘術を施しているのは、中国系カナダ人のシェフ、チェンさんで、Hassan-Odukaleさんはチェンさんのことを、西アフリカ料理のアレンジをさせたら天下一品と話している。 「ジェレミーは西アフリカの人ではないので、ジェレミーの方が適任です。伝統的な食材を先入観のない目で見て、自身の着想を取り入れ、材料の良さを最大限に引き出してくれます」
チェンさんはイギリスで生まれ、プリンストン大学を卒業した後、金融の仕事に就いたが、食への情熱を追求する道を選んだ。
ふたりの事業は、今年度は好調に終わりそうだが、2017年以降、レストランの破産件数が上昇しているイギリスの食品業界で生き残るのは楽ではなかった。
「厳しい1年でした。正直に申し上げると、翌日に店を開けられるか分からないという日が、今年の夏は何度もありました。これはうちの店だけではなく、殆どの店がそうだったと思います。自分たちの主義にこだわり、やるべきことをきちんとやって、毎日最高のものを提供するようにしてきました」
ミシュラン一つ星をもらったことでさらにプレッシャーは増えるが、心地よい速度で成長しようとしているとふたりは話している。
「ようやく居心地がよい基準、場所に到達し始めたように思います。1年を通して浮き沈みが激しい状態でした。他のことも考え始められるようなもっと安定した商売になることを願っています」
この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:五十川勇気 / 編集:BuzzFeed Japan