タクシー車内映像「知らない間に流出」ありえる? 大手各社に聞く

    外部提供の基準は?大手4社にも聞いた。

    タクシー会社チェッカーキャブは11月30日、28日に覚醒剤取締法違反(使用)の疑いで逮捕されたASKA容疑者が逮捕直前に乗車していたタクシーの車内映像をテレビ各局に提供したことを認め、謝罪した

    「現在、マスコミ各社にて放送されている映像は、当グループ加盟の1社よりマスコミへ提供されたもの」と認め、再発防止に取り組むとしている。

    一般の乗客でも「知らない間に乗車中の映像が流出している」ことはありえるのか。BuzzFeed Newsは、都内のタクシー大手4社に、ドライブレコーダーの映像管理の実態を聞いた。

    車内の様子がはっきり、音声も明瞭

    問題の映像は、28日午後6時頃に撮影されたもの。逮捕直前のASKA容疑者がタクシーで自宅へ向かう車中と見られる。

    「駒沢通りわかりますよね?」「家の前に人がいっぱいいるんですけど、速やかに止めてドアを開けてください」などの音声も明確に聞き取れる。

    逮捕翌日の29日、数局で同じ映像が放送された。ある番組のナレーションでは「マスク姿の容疑者は比較的落ち着いた様子」などと紹介していた。

    放送後、視聴者からは「プライバシーの侵害では?」「安心してタクシーに乗れなくなる」と非難の声が上がっていた。

    大手各社は「驚いた」「ありえない」

    タクシーへのドライブレコーダーの装備は、この10年ほどで一般的になった。乗客とのトラブル(暴行、強盗など)や交通事故が起こった際の状況証拠など、防犯対策や乗務員保護を目的としている。

    1台で運転席から見た前方の映像と、車内の様子を同時に記録するタイプが多い。乗客の様子を撮影することになるため、プライバシーや個人情報の保護は大きな課題となる。

    「ニュースで映像を見てとても驚きました。ドライブレコーダーの記録映像に対しては社内で厳格な運用基準があり、第三者への映像提供は、警察の捜査依頼など、公的な文書がある法令に基づいた事象のみ」

    「あのような形でお渡しすることは、弊社の場合は絶対にありません」(日本交通の広報担当者)

    大手各社の広報部に問い合わせたところ、「驚いた」「ありえない」「顧客のプライバシーへの配慮は最も気を使っている部分」と口をそろえる。

    日本交通、国際自動車、大和自動車交通、帝都自動車交通の大手4社に、ドライブレコーダーの映像をどう管理しているのか聞いた結果をまとめた。

    日本交通

    第三者への提供は、警察などの捜査機関から公的な文書で申込みがあった場合のみ。社内に運用基準があり、提供に至るには書面での手続きが必要。これまで報道機関に提供したケースはない。

    データは管理責任者のもと一元管理。運転手個人は視聴、コピーできない仕組みになっている。

    一部テレビ番組で、他社タクシーのドライブレコーダー映像が公開されいました。日本交通では『車内カメラ運用基準』を定め、管理責任者のもと厳重に管理し、法令に基づく場合等を除き外部への映像提供は行っておりません。安全・安心にご利用いただけるタクシーサービスの提供に引き続き努めます。

    国際自動車

    捜査状や逮捕状に基づく捜査要請があった場合のみで、新聞社やテレビ局などのマスコミには提供していない。「特定の人が乗ったかどうか」などの問い合わせにも応じていない。乗客のプライバシー情報であることを踏まえ、厳重に取り扱っている。

    映像を確認できるのは、各営業所の責任者のみ。ドライバー個人の裁量で映像を見ることはできない。

    ドライブレコーダーの導入は2010年から。最も大きな理由は、防犯上の必要性だった。

    大和自動車交通

    基本的には、捜査機関からの要請のみ。グループ会社によっては、報道機関に提供しているケースもある。

    過去には、乗客トラブルや交通事故の瞬間を扱ったテレビ番組の特集に映像を提供したことがあった。その場合も本社に報告が上がる体制は整えており、今回のASKA容疑者の映像に関しては報告は上がっていない。

    映像を記録したチップは乗務員も取り出し可能だが、再生には専用のアプリケーションが必要。警察の捜査に協力する場合も、データで提供するのでなく、捜査員を自社に呼んでその場で確認してもらうことも多い。

    帝都自動車

    警察の捜査や裁判資料など、公的・法的な書面での申込みがあったときのみ。警察に提供したものが捜査の一環で報道されることはありえるが、直接報道機関に提供することはまずない。乗客トラブルや交通事故を扱った番組・特集への提供も一環して断っている。

    データは営業所ごとに管理者を置いて管理。事故やトラブルがあった時に教育や研修として使うことはあるが、外部の第三者に見せることはない。

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