「覚醒剤をやめたい」語っていたASKA容疑者を逮捕 何が有効な対策なのか

    執行猶予中だったが・・・。

    歌手のASKA容疑者(本名・宮崎重明、58歳)が覚醒剤を使用した疑いが強まったとして、警視庁は覚せい剤取締法違反(使用)の疑いで逮捕した。各社が一斉に報じている。

    産経ニュースによると、ASKA容疑者は11月25日夜、自ら110番通報して、「盗撮、盗聴されている」などと訴えた。NHKによると、警視庁の検査で尿から覚醒剤の陽性反応が出たという。

    ASKA容疑者は2014年9月、同じ罪で懲役3年、執行猶予4年の有罪判決を受けた。現在は執行猶予中だ。

    ASKA容疑者は、裁判で「恐ろしい覚醒剤をやめたい、やめなければならない」と述べたほか、裁判後には「罪の重さを改めて認識いたしました。私は現在医師の指導にしたがって治療を受けております。本日の判決を真摯(しんし)に受け止めて、家族の支えのもとで人として立ち直り、健康を取り戻す決意です」と、コメントを発表していた。

    再びの逮捕をどう見るか。薬物事件に詳しい弁護士で、ソーシャルワーカーとしても活動している平林剛弁護士に聞いた。


    前提として、「逮捕=有罪」ではありません。本人が認めているならともかく「100%ない」とブログで言っている以上、慎重に判断する必要があります。たとえ結果が陽性だとしても、尿検査のミスや不正などの可能性も残るからです。

    ——事実関係については、裁判を待つべきだという話ですね。

    そうですね。なお、仮にご本人が有罪であった場合でも、認定事実にもよりますが、本人が薬物を止めるために真摯に取組むのであれば、再度、執行猶予付の判決を得られることがあります。

    ——執行猶予中に有罪判決を受ければ、前の有罪判決と合わせて実刑になるのが普通ですが・・・。

    最近、薬物使用で有罪判決を受けた人が、執行猶予の期間中に、また薬物に手を出してしまったという事件で、再び執行猶予が付けられたというケースがありました。

    そのケースでは、その人がリハビリ施設に入所し、順調にプログラムをこなしていたということが評価されました。

    ——実刑を受けて刑務所に入ったほうが、薬も抜けるし、反省して立ち直れるのでは?

    薬物に限らず、依存の原因には、社会における居場所のなさ、つながりのなさ、孤立感など、社会生活における「生きづらさ」があることがほとんどです。

    清原和博さんの裁判の判決理由では、犯行動機として、引退後に目標をうしなったことや監督になれなかったこと、妻子との離別の孤独感などが挙げられていました。

    刑務所の主たる目的は罰をあたえることであり、薬物依存のリハビリを行うことではありません。もちろん、刑務所にも一定のプログラムがあり、それがきっかけで、リハビリにつながっていく人もいないわけではありません。

    ただ、最初からリハビリを行うことを目的とした施設に繋がる方が、結果として本人の回復も早く、早期に社会復帰できます。

    また、本人のモチベーションという問題もあります。

    ここが、依存症の方をリハビリにつなげることの難しさでもあるのですが、現時点では、彼らは自分たちが抱える「生きづらさ」を薬物で紛らわせている状態です。彼らにとって薬物は生きつづけていくための唯一の術といっても過言ではありません。

    その彼らにとって、治療やリハビリにつながるということは、その時点での唯一の生きる術を放棄するということです。並大抵の覚悟ではできません。私たちでも、何かの緊急時に「必ず助けてあげる」と言われてもなかなか命綱は手放せないと思います。

    そんな彼らをリハビリにつなげるには、「薬物をやめよう」という強い気持ちがある時が、いわばチャンスであり、それは、様々な現実に直面させられる刑事裁判の時であって、罪を償った・自分の行為に一通りの責任を取ったとされる出所時ではないように思います。

    ——薬物依存を克服するためには、どんな取り組みが必要なのですか?

    いわゆる急性期には、病院での治療が必要です。

    ただし、依存症の根本的な原因であるそういった「生きづらさ」は、病院だけでは対処できません。

    同じように依存に苦しんでいる仲間との共同生活や体験の共有等によるリハビリが必要不可欠です。

    裏を返すと、何らかの形でそういった生きづらさにアプローチできない限り、再犯可能性はある、ということです。

    UPDATE

    逮捕を受け、記事を更新しました。