オーストラリアで毎年開かれているチャリティイベントCEO Sleepout。これは、ホームレスを支援するための資金を集めるイベントで、さまざまな会社のCEOが一晩ホームレス体験をして寄付金を募るというもの。
今年のCEO Sleepoutは、つい先日開催されたばかり。南半球にあるオーストラリアの季節は、日本の逆。つまり、冬の寒い夜を、支給された段ボールに横たわって過ごしたのだ。
イベントはオーストラリア中で、複数都市で同時開催された。しかし、シドニーでの様子がイベント運営公式アカウントからツイートされるや否や、苦情が殺到した。なんと、CEOたちはVRヘッドセットを装着し、バーチャルでホームレスを体験していたのだ。
これに対して、SNSでは「貧困を嘲笑する行為」「感覚がおかしい」と、数多くの批判がよせられた。
「問題提起はしたいけれど、実際は汚い貧乏人とは接したくないわけか」
「バーチャルの寒さ、バーチャルの危険、バーチャルの空腹、バーチャルの病気、バーチャルの絶望…」
「ただ動画見せられてるだけなのに、CEOたちも何も言わなかったのか?」
「ホームレスはゲームじゃない」
「こんなことより、外に行ってホームレスの人に話をきいてみたら?」
「ここまで感覚がズレてるとは」
批判が殺到しながらも、CEO Sleepoutは500万オーストラリアドル(約4億円)以上の寄付金を集め、これはホームレスの人々への支援として使われる。
1日体験と現実ですら違うというのに、このイベントにおける「体験」と「VR体験」の差はかなりのものだろう。現在のVR技術では、匂いや温度、触感までを再現することはできない。例えできたとしても、「リアル」と「限りなくリアルに近い」の間にある壁は大きい。
この記事は英語から翻訳・編集しました。担当:SOKO