正体を隠して活動する人気アーティスト「バンクシー」。暴力、移民、LGBT、監視社会などをテーマに「壁に落書き」した社会風刺アートは物議を醸してきた。
2015年、イギリスで期間限定の遊園地 「ディズマランド(Dismaland)」(憂鬱の国)を開いている。ディズマル(dismal)は「憂鬱」という意味の英語で、夢の国「ディズニーランド」を皮肉った。崩れ落ちそうな城、転倒した馬車と投げ出されるドレス姿の女性、うつむいた移民を乗せた船——。そのアートは大きな話題を呼んだ。
そのバンクシーが3月、ホテルをオープンする。場所はヨルダン川西岸のベツレヘムで、イスラエルが建設した壁に面する。パレスチナ自治区とユダヤ人入植地を隔てる壁だ。
売りは「世界で最低の眺め」。分断の壁が一望できる。
壁に囲まれたという意味の「ザ・ウォールド・オフ・ホテル」。ホテル脇に立つベルボーイはチンパンジーだ。
枕元。イスラエル兵とパレスチナの青年が、枕を投げて争う。
火炎瓶のように花束を投げる男性。バンクシーの有名な落書きだ。花束は実物の花瓶に入っている。
時計の中をネズミたちが一生懸命に駆ける。回し車のように。ロンドン、ニューヨーク、エルサレムの時間を示している。
催涙ガスが出ているので、胸像はフェイスマスクをしなくてはならない。ロビーに飾られている。
戦闘機が飛ぶ壁。イエス・キリストの額には、スナイパーが狙う光が当たる。
監視カメラが突き出る壁。仕留めた獲物の首を飾るかのよう。その下に並ぶのはパチンコやハンマーで、パレスチナの活動家が抗議活動のときによく使う道具だ。
ホテルの鍵が付いているのは、イスラエルとの分断の壁。断面を模している。
二つの金魚鉢。二匹の金魚はお互いに触れたくても、届かない。
堂々としたエルクは鉄格子に囲われている。
バンクシーの絵。母親と子ども2人がブルドーザーに追われて、逃げる。
CNNの速報が流れ、残骸を拾う女性が映る。画面は割れている。フレームに飾られた絵だ。
ピアノの上に、落下する天使たち。飛行機の酸素マスクで息をしている。
子羊と天敵が並ぶ絵。ダイニングテーブルの上に架かる。
エレベーターは、コンクリートでふさがれている。「申し訳ありません。使用不可です」と札。
ホテル(写真左奥)脇のコンクリート壁。自由の女神が泣いている。
ホテルは全9室。3月11日、公式に開く。予約はこのページで(日本時間午後6時オープン)。
4日のオープニングパーティーではエルトン・ジョンが動画メッセージで祝した。「素晴らしいアイデアだ。愛と平和を」
この記事は英語から翻訳・編集しました。