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変異ウイルスに効くの?接種後に起こりやすい副反応は?新型コロナワクチン、知っておくべき8つのポイント

新型コロナワクチンの高齢者接種がいよいよ本格化する。最新の知見に基づきわかっていること、接種を受ける上で知っておいてほしいポイントをまとめた。

新型コロナウイルス感染症に効果を発揮するワクチンの高齢者への接種が、間もなく本格化する見通しだ。

ワクチンは感染予防効果、発症予防効果、重症化予防効果があり、感染拡大を食い止めるために重要な役割を果たす。

そんなワクチンを接種する上で知っておくべきポイントを、新型コロナウイルスやワクチンに関して正確な情報を発信する医師らのプロジェクト「こびナビ」監修のもとまとめた。

(1)新型コロナワクチンの効果は?

日本ではすでにファイザー社のワクチンが承認され、モデルナ社とアストラゼネカ社のワクチンについて承認申請済みだ。

モデルナ社、アストラゼネカ社のワクチンについては20日にも厚労省の専門家部会で承認の可否が判断される見通しだ。

ファイザー社そしてモデルナ社のワクチンはともにmRNAワクチンと呼ばれるタイプのもの。

両社のワクチンは開発段階や接種が本格化している国々において、高い有効性が証明されている。

発症予防効果に関しては大規模な臨床試験において、ファイザー社のものは95%、モデルナ社のものは94.1%であることが報告されている。

また、それぞれのワクチンでは重症化予防の効果も確認されている。

mRNAワクチンについては、当初、どれほどの感染予防効果があるのかはっきりとしていなかった。

しかし、接種が進むにつれて、「感染予防効果も期待できることは確実となった」。「こびナビ」の医師らはこのように説明する。

イスラエルにおいて100万人以上のデータを分析した大規模な研究では、2回目の接種から1週間が経過すると92%の感染予防効果が確認されたと発表。

また、米・CDC(疾病予防管理センター)の機関紙MMWRには、3950人の医療従事者やエッセンシャルワーカーを対象にした週1回のPCR検査の結果、2回目のワクチン接種から2週間以上経過した人に90%の感染予防効果が確認されているという報告が掲載された。

一方、アストラゼネカ社製のワクチンはウイルスベクターという技術を用いたもの。

臨床試験における発症予防効果は70.4%とされており、重症化予防効果も確認されている。

mRNAワクチンに比べると有効性は下がるものの、十分な効果があると言える。

(2)変異ウイルスにも効果はあるの?

ワクチンに関して懸念されているのが変異ウイルスへの効果だ。

日本国内においても、イギリス由来で「N501Y」という変異を持つ「B.1.1.7」や南アフリカ由来で「N501Y」「E484K」という変異を持つ「B.1.351」などの変異ウイルスに注目が集まっている。

変異はワクチンの有効性にどれほど影響を与えるのだろうか?

医学雑誌「New England Journal of Medicine」に5月5日付で掲載された論文によると、ファイザー社の新型コロナワクチンは「B.1.1.7」に対して89.5%の有効性を、「B.1.351」に対しては75%の有効性を発揮するとされている。

従来のウイルスに比べ有効性が若干低下するものの、依然として「有効なワクチンだ」。

「こびナビ」は次のように答えた。

「新型コロナワクチンについては、開発の段階で50%以上の有効性が確認されれば承認されると言われてきました。変異ウイルスに対して少し有効性は低下しているようですが、引き続き接種することをおすすめします」

他方でアストラゼネカ社製のワクチンについては、一部の変異ウイルスに対して効果が大幅に下がることがわかっている。

医学雑誌「New England Journal of Medicine」に3月16日付で掲載された論文によると、同社の新型コロナワクチンの「B.1.351」に対する有効性は確認されなかった。

(3)接種後、効果が出るのはいつから?どれくらい持続するの?

接種後、どの程度の時間が経過すれば効果が発揮されると考えられるのか。

「こびナビ」の医師によると、「mRNAワクチンの場合は2回目接種から2週間経過すれば、十分な効果が発揮される」。

また、アストラゼネカ社製のワクチンについても「2回目を接種してから2週間以上経過すれば、臨床試験で確認された有効性が発揮されるのではないか」とした。

接種後に気になるのが、いつまで感染対策を続ける必要があるのかということだ。

だが、感染対策は自分自身の感染リスクと合わせて周囲の感染状況などを踏まえて考えなければならない。

たとえ自分自身はワクチン接種を完了したとしても、社会全体で感染が拡大している局面では「引き続き基本的な感染対策を続けることが望ましい」。

「感染者数そのものが減れば、人から人へと感染する病気なので、当然個人の感染リスクも下がる。感染対策をどのタイミングで緩めてよいのか?というのは、ワクチンの接種状況と感染拡大の状況を合わせて判断する必要があります」

2回目の接種を終えると、どの程度効果は持続するのか?

持続期間については、「現段階では確かなことはわからない」という。

「プレスリリースのレベルでは接種から半年後も91%の有効性が確認されたと発表されています。なので、おそらく半年後も有効性が持続することは間違いない。しかし、1年後、2年後、5年後の効果については、まだわかりません」

インフルエンザワクチンのように毎年の接種が必要になるのかどうかについては、続報を注視する必要がある。

(4)注意したい、「副反応」と「有害事象」の違い

基本的に、どんなワクチンにも「副反応」が付随する。そのため、接種を受ける際はワクチンによるリスクとベネフィット(利益)を比べ、判断する必要がある。

この「副反応」とは、ワクチン接種後に確認された「有害事象」のうち、ワクチン接種との因果関係があるもののことだ。

「有害事象とはワクチン接種後に起きた、あらゆる健康上好ましくない出来事のことを指します。なので、ワクチン接種後に自閉症になっても、雷に打たれても、帰り道に車に轢かれても、アナフィラキシーになっても有害事象となります」

「これらの中で、ワクチンとの因果関係があり、『副反応』でもあるものはアナフィラキシーだけです」

ワクチン接種後の症状が、本当にワクチン接種と関係するものなのかどうか。分析するためには、「ワクチンを接種した人と接種していない人とを比較し、その出来事の頻度がどれだけ違うのかを調べる必要がある」。

最も重要なのは、ワクチンを接種するグループと接種していないグループにランダムに分けて実施する「ランダム化比較試験」をはじめとする臨床試験におけるデータであり、因果関係を調べるためには丁寧な分析が必要不可欠だ。

「ただし、この方法にも限界はあります。臨床試験の規模としては3万人や4万人というレベルが限界です。100万人規模の臨床試験というのは現実的ではありません。なので、25万人に1人、100万人に1人といった割合で起きる副反応を見つけることができません」

そのため、臨床試験で把握しきれない有害事象が確認された場合には、それが副反応であるかどうか、ワクチン接種と並行して精査されることとなる。

アメリカでは「VAERS」と呼ばれる有害事象報告システムが運用されており、報告されている有害事象が自然発生するものと比べて多いかどうか分析されている。さらに、同時期においてワクチンを接種した人と接種していない人の有害事象の頻度を比べる安全性監視システムを用いて、多角的に因果関係を検証している。

また、日本においても予防接種法に基づく「副反応疑い報告制度」があり、医師は有害事象の報告を義務付けられている。

加えて、国は「先行接種者健康調査」「接種後健康状況調査」を、製薬会社は「製造販売後調査」を実施し、ワクチン接種後の様々な症状を把握する仕組みを構築している。

このような安全性調査や、同時にその情報を世界中で共有するシステムが構築されており、極めて稀な副反応が明らかとなった場合に、その情報が周知され、注意喚起がなされるような体制がとられている。

(5)副反応にはどんなものが?2回目の接種後に、より起こりやすいことに注意

「現在、高い頻度で起こる副反応とされているのが、接種部位の痛み、怠さ、頭痛、筋肉痛、寒気。この5つです。このような主要な副反応はファイザー社のワクチン、モデルナ社のワクチンでともに確認されています」

ファイザー社製のワクチンについて海外の臨床試験では、次のような副反応の訴えが報告されている。

接種部位の痛み:1回目の接種を受けた人の77.8%、2回目の接種を受けた人の72.6%

怠さ:1回目の接種を受けた人の41.5%、2回目の接種を受けた人の55.5%

筋肉痛:1回目の接種を受けた人の18%、2回目の接種を受けた人の33.5%

寒気:1回目の接種を受けた人の10.6%、2回目の接種を受けた人の29.6%

頭痛:1回目の接種を受けた人の34.5%、2回目の接種を受けた人の46.1%

発熱:1回目の接種を受けた人の2.7%、2回目の接種を受けた人の13.6%

データからも見てとれるように、 ファイザー社のワクチンに関しては2回目の接種を終えた後の方がより副反応が起きやすいことがわかっている。

一方、アストラゼネカ社が公表している資料によると、同社のワクチンについても、接種後に次のような副反応が確認されている。

接種部位を圧迫した際の痛み:63.7%

接種部位の痛み:54.2%

疲労感:53.1%

怠さ:44.2%

筋肉痛:44.0%

寒気:31.9%

頭痛:52.6%

発熱:33.6%(熱く感じる)/ 7.9%(38℃以上の発熱)

吐き気:21.9%

取材に答えた「こびナビ」は事前にこうした副反応が起きる可能性を理解した上で接種に臨むことが望ましいとし、可能であれば接種翌日は仕事を休むなど工夫をすることも1つの選択肢であると話した。

「なかには、他人よりもより強くこうした副反応の痛みを感じる人もいます。時には日常生活に支障をきたす場合もあるため、注意していただきたいです」

副反応としては、ごく稀にアナフィラキシー反応(強いアレルギー反応)が起きる場合がある。

しかし、その頻度はファイザー社製のワクチンの場合は100万回あたり4.7回、モデルナ社製のワクチンの場合は100万回あたり2.5回となっている

(6)一部ワクチンでは血栓リスクも。mRNAワクチンの場合は?

アストラゼネカ社製のワクチンやJ&J(ジョンソン・アンド・ジョンソン)社製のワクチンについては、接種後に血小板の数が少なくなる特殊な血栓症が起きるリスクがあると既に報告されている。

EMA(欧州医薬品規制当局)はアストラゼネカ社製のワクチンについて、接種した人に血栓が見られることは、まれに起きる副反応との見解を表明。

こうしたことを受け、イギリス政府はアストラゼネカ社製のワクチンは30歳未満の成人への接種には使用しないと決定した。

また、スペイン、イタリアでは同社のワクチンは60歳以上に接種する方針を示している。同様にベルギーでは55歳以上の人にのみ接種すると決めた。

一方、アメリカ政府はJ&J社製のワクチンの使用を一時中止したものの、その後、4月24日に「ワクチン接種による効果はリスクを上回る」として、使用を再開している。

だが、現段階でこうした血栓のリスクは、mRNAワクチンに関しては報告されていない点に注意する必要がある。

これらのリスクは、あくまでアストラゼネカ社製およびJ&J社製のワクチンについて報告されているものだ。

そのため、取材に対し次のように強調する。

「mRNAワクチンによる血栓のリスクについては、そのような実態があるのかどうかを調べた上で『明らかな報告がない』ということがわかっています。なので、mRNAワクチンについては、副反応として血栓が起きているといったことは今のところありません」

(7)非常に脆いmRNA、長期的影響は「考えにくい」

mRNAを用いる新型コロナワクチンについては、今回が初めての実用化であることもあり、「長期的な影響がわからない」と懸念する声もある。

だが、「こびナビ」の医師らは「臨床試験を含め、まだ接種の開始から1年弱しか経過していないことは事実」とした上で、「mRNAワクチンの構造を知ることが不安の解消につながるのではないか」と指摘する。

新型コロナウイルスは、ウイルスの表面にある突起状の「スパイクタンパク質」が人間の細胞の分子とくっつき、細胞の中に入り込むことで「感染」する。

そのため、新型コロナワクチンはこの「スパイクタンパク質」の機能を邪魔することを目的としている。

ファイザー社やモデルナ社のワクチンは「mRNAワクチン」と呼ばれるタイプのもの。mRNAは設計図の役割を果たし、肩の筋肉に注射することによって細胞の中で「スパイクタンパク質」を作ることができる。

この「スパイクタンパク質」に人の免疫が反応することで、感染や発症、重症化を防ぐ「抗体」を得る仕組みだ。

mRNAはマイナス20度での保存が必要なことからもわかるように、非常に脆い。

「mRNAは人の体に中に入ると、数十秒で分解され始め、数日以内に体からなくなるとされています。そして、設計図をもとに体内で作られる『スパイクタンパク質』も長くても2週間程度しか体内には残りません。また、ワクチンの成分ではなく免疫反応が原因で起こる副反応も、ほとんどは6週間以内に起こることが知られています。こういった知見を総合すると、ワクチン接種から1年後や2年後に何か影響を与えることは考えにくいと言えます」

「mRNAワクチンを接種すると遺伝子が書き換わるという主張をされる方もいますが、mRNAはDNAがある核に入ることはできません。つまり、そのような現象が起きると考えることは、体のメカニズムとして無理があります」

(8)専門家がメディアに願うこと

高齢者接種が本格化することで、ワクチン接種に関連する有害事象も一定程度増える可能性がある。その際、適切な報道がなされなければ、接種控えが広がる可能性もある。

「こびナビ」は取材に、「HPVワクチンの二の舞はやめてほしい」と訴えた。

「HPVワクチンについては、有害事象を訴える人々の声がセンセーショナルに報道された影響で接種率が大幅に下がりました。あの出来事から学び、次に活かすべきことがあるとすれば、それは有害事象を副反応のように報じないでほしいということです」

「その有害事象は本当にワクチン接種と関連があるのかどうか。因果関係がわかっていないものを、副反応のように報じれば、接種を控える人が増えます。その結果、ワクチンを接種すれば防ぐことができた病気で命を落とす人が増えてしまう。こうした事態は避けなければいけません」

あわせて、副反応について報じる場合にはワクチンの有効性についても報じてほしいと「こびナビ」は要望する。

新型コロナワクチンを接種すれば自身の感染や発症、重症化を防ぐことができる。

また、新型コロナに関しては怠さや息苦しさ、胸の痛みといった症状や味覚障害や嗅覚障害、脱毛など後遺症が数多く報告されており、感染しないことでこうした症状を長期的に抱えることを防ぐことも可能だ。

「副反応だけを伝えると、できる限りリスクはゼロにしたいという思いからワクチン接種をしたくないと感じる人もいるかもしれません。でも、どんなことにもゼロリスクはありません」

「そして、『接種しない』という選択にも、新型コロナウイルスに感染してしまう、自分が重症化しなくても、自分がうつしてしまった人が重症化してしまう、というリスクが伴います。リスクと比べてどれだけの効果が得られるのかを正確に知った上で、接種するかどうかを決めてほしい。それが本当の意味での自己決定だと考えています」


こびナビ監修者:「こびナビ」副代表 木下喬弘氏、千葉大学医学部附属病院臨床試験部助教・PMDA定期専門委員 黑川 友哉氏、ワシントンホスピタルセンターホスピタリスト・ジョージタウン大学医学部内科助教 安川康介氏