ユースビオがTBSに謝罪・訂正を要求 サンジャポ評論家「多分、政府の人間とつながり」

    TBSの人気番組『サンデー・ジャポン』で、元経産官僚で経済評論家の岸博幸さんが「ユースビオは多分、政府の人間とつながりがあったからだと思うんですけども」と発言。ユースビオ側は謝罪と訂正を求めている。

    政府が妊婦向けに配布する布マスクを受注した福島市の「ユースビオ」の代理人弁護士は5月13日、TBSのニュースバラエティー番組『サンデー・ジャポン』での経済評論家・岸博幸さんの発言について、謝罪・訂正と損害賠償を求める通告書を送ったと発表した。

    「看板もないプレハブ会社」ネットの声を紹介

    妊婦向けマスクをめぐっては、菅義偉官房長官が4月27日の記者会見でそれまで非公表だった「4社目」の受注企業がユースビオであると明らかにした。

    サンジャポは5月3日の放送で、「未公表の4社目が判明 その真相に迫る」と題してユースビオについて特集。

    VTRでは「なぜ実績のない会社と契約したのか?」と疑問を投げかけ、 加藤勝信厚生労働相の国会答弁の様子や「看板もない、プレハブ会社に普通、億単位の仕事任せる?」というネットの声を伝えた。

    VTRで「国民は納得するのだろうか」

    また、4月28日配信の「AERA dot.」に掲載されたユースビオ樋山茂代表のインタビューから、以下の発言を引用。

    「うちの福島の事務所が平屋で小さいということで疑っている人がいますが、テレワークの時代だし、うちの事業メインはベトナムにあるので、携帯とタブレットとがあれば、いまどこでも仕事はできます。こんなところが受注できるわけがない、という人はビジネスセンスがないですよ」

    「…とユースビオ社長は話しているが、この騒動、国民は納得するのだろうか」というナレーションが入り、VTRは終わる。

    「違和感」「疑問」スタジオから続々

    「ほかの3社の有名な企業と比べると、なぜ突然ユースビオっていうので、違和感を持った人が多かったということですね」

    VTR明け、司会の「爆笑問題」田中裕二さんが元判事の細野敦弁護士に発言を促すと、細野弁護士はこう解説した。

    「競争入札を本来すべきだと思うんですけど、マスクの調達能力がある会社を一本釣りして、そこと契約する随意契約という形をとったと思うんですけど」

    「これだけ有名な大規模な会社のなかで、なぜここの会社に数億の発注をするのかというのは、やっぱり疑問ですよね」

    岸博幸さん「多分、政府の人間とつながり」

    その後、岸さんは細野弁護士の言葉を受ける形で次のように語っている。

    「まあこれ、細野さんおっしゃったように、普通、物資調達は競争入札で、時間がなくて緊急性がある場合は随意契約。一本釣りですよね」

    「で、そういうなかで、多分、ほかの大企業はわかるんですよ。ユースビオは多分、政府の人間とつながりがあったからだと思うんですけども」

    「アベノマスクはこれだけ政策として評判が悪いだけにですね、なんでほかの大企業、調達の能力のあるところもあるはずなのに、ここをあえて選んだかってことをしっかり説明していただかないと、国民は納得しないのかなという気はしますね」

    最後に田中さんが「とにかく説明をね、なぜここになったのか、してほしいという」と述べ、4分ほどのユースビオ特集を締め括った。

    樋山代表「癒着は一切ない」と主張

    ユースビオ側が特に問題視するのは、「政府の人間とつながりがあった」とする岸さんの発言だ。

    ユースビオ代理人の佐川明生弁護士は、今回発表した文書でこう訴えている。

    《番組放送のために取材その他ユースビオに何ら確認をすることなく、「ユースビオは政府の人間とつながりがあった」との虚偽の事実を全国にテレビ放送する行為は、あたかもユースビオにおいて安倍総理など政府関係者との“癒着”に基づく商取引上の不正があったと指摘するものであって,ユースビオの社会的評価を著しく低下させ、その名誉及び信用を大きく毀損するものです》

    ユースビオの樋山代表はBuzzFeedなど報道機関の取材に対し、癒着は一切ないと主張しているが、佐川弁護士によるとサンジャポ側から取材や問い合わせはなかったという。

    損害賠償金「コロナで困っている学生に」

    ユースビオ側はさらに、SNSなどインターネット上での誹謗中傷に対しても、法的措置の準備を進めていることを明らかにした。

    TBSやネットの書き込みをした人物から損害賠償金を得られた場合には、その全額を「独立行政法人日本学生支援機構に寄付する」としている。

    佐川弁護士は「金銭的なことを目的としていません。社長の意向で、賠償金が入ってきた場合には、新型コロナで困っている学生の奨学金に使っていただきたいと思っています」と話している。

    TBS「いただいた内容を検討」

    TBS広報はBuzzFeedの取材に「(ユースビオ側からの)通知書は受領しています。現在、いただいた内容について検討しています」と回答した。


    ユースビオの代理人である佐川明生弁護士が発表した文書は下記の通り。


    令和2年5月13日

    報 道 機 関 各位

    TBS及び岸博幸氏に対する謝罪等請求のお知らせ

    株式会社ユースビオ代理人弁護士 佐川 明生

    1 はじめに

    当職は,株式会社ユースビオ(本店:福島県福島市,代表取締役:樋山茂,以下「ユースビオ」とします。)の代理人として,株式会社TBSテレビ(以下「TBS」とします。)及び岸博幸氏(以下「岸氏」とします。)に対し,岸氏が出演し,TBSが令和2年5月3日に放送したサンデー・ジャポン(以下「本件番組」とします。)における岸氏の発言に関し,同月11日付けで,放送内容の訂正及び謝罪,主要日刊紙への謝罪広告掲載並びに損害賠償を求める通告書を内容証明郵便で送付した旨をご報告いたします。

    2 TBS及び岸博幸氏に対する謝罪等請求に至った理由

    本件番組において,岸氏は,ユースビオが抗菌布マスクの製造及び販売を日本政府から受注に至った理由について,「ユースビオは政府の人間とつながりがあったから」と断じ,TBSも,漫然とこれを全国向けに放送し,本件番組中で訂正等を行いませんでした。

    岸氏が公然と適示する「ユースビオは政府の人間とつながりがあった」との事実は,そもそも虚偽の事実です。ユースビオは,本件番組放送前に取材を受けたメディアに対して“癒着”その他政府との関係について完全に否定しており,例えば本件番組内でも引用されている令和2年4月28日付け「アエラドット」においても,ユースビオが“癒着”を含めた政府との関係を明確に否定している旨の報道がなされていました。

    それにも関わらず,岸氏及びTBSが,本件番組放送のために取材その他ユースビオに何ら確認をすることなく,「ユースビオは政府の人間とつながりがあった」との虚偽の事実を全国にテレビ放送する行為は,あたかもユースビオにおいて安倍総理など政府関係者との“癒着”に基づく商取引上の不正があったと指摘するものであって,ユースビオの社会的評価を著しく低下させ,その名誉及び信用を大きく毀損するものです。

    また,本件番組における岸氏の発言及びTBSの編集方針は,中小企業の保護などを表向き訴えながら,内心で中小企業を見下すもので,到底是認することはできません。

    以上の理由のため,ユースビオは,TBS及び岸氏に対し,放送内容の訂正及び謝罪,主要日刊紙への謝罪広告掲載と,損害賠償を請求するに至った次第です。

    3 ユースビオが政府から受注に至った経緯

    ユースビオは,岸氏が指摘するような「政府の人間とつながり」など一切なく,令和2年2月下旬頃から,ベトナムで培ったネットワークを生かしてマスクの製造ラインを確保した上で,山形県や経済産業省や厚生労働省に“営業”をかけるという,中小企業としての自身の経営努力により,結果的に経産省が取り纏める形で政府から発注を受けるに至りました。

    岸氏が本件番組内で発言した「ユースビオは政府の人間とつながりがあった」との事実は,明らかな虚偽であり,ユースビオを侮辱し,その名誉及び信用を毀損するものです。

    4 “アベノマスク”とは受注に至る経緯及び形状など全く異なること

    政府に納品するマスクの仕様(形状,品質基準及び耐久性など)については,経済産業省ヘルスケア産業課の担当者と協議を重ねた上で決定されましたが,その仕様は,もともと(妊婦を含む)一般家庭ではなく,より品質基準などが厳しい介護福祉施設などを前提としていました。

    以上の受注に至る経緯からしても,ユースビオが政府に納品したベトナム製の抗菌布マスクは,いわゆる“アベノマスク”とは違います。

    そもそも,ユースビオが納品したベトナム製の抗菌布マスクは,サージカルマスクに似た立体的な形状であり,“アベノマスク”とは,形状が全く異なるもので,それは一見すれば明らかです。

    それにも関わらず,TBSは,本件番組において,ユースビオに関する報道において,カビ発生などの不良品が確認された(とされる)“アベノマスク”の映像を使用していますが,視聴者に誤解を与えるものであり,例え娯楽番組であっても許されるべきことではありません。

    5 本件マスクの納期,品質及び単価について

    ユースビオが,厚生労働省との間で,合計350万枚のベトナム製抗菌布マスクに関する契約を締結し,正式に発注を受けたのは,令和2年3月16日です。

    ユースビオは,前述の経産省より指示を受けた仕様に基づく抗菌布マスクをベトナム国内合計7所の工場で製造し,ベトナムの航空会社から飛行機をチャーター,空輸により日本に輸入しています。受注から納品まで約2週間というタイトなスケジュールにも関わらず,納期であり,かつ事業年度末でもある同月31日に納品を間に合わせています。

    そして,政府への納品後,令和2年4月上旬から,介護福祉施設等に送付され,介護の現場などで使用されていますが,現時点で,品質等に関するクレームは一件も受けておりません。

    また,1枚135円という本件マスクの単価についても,前記のように,飛行機のチャーター代や,成田空港から政府が指定した横浜の倉庫への輸送代などを含めた金額であり,近時,同形状の布マスクが1枚500円程度で小売りされていることからも,むしろ廉価と言えるものです。

    6 最後に

    ユースビオに関する報道が行われて以降,ユースビオ及び樋山茂氏を誹謗中傷する内容のインターネットやSNS上の書込みが後を絶ちません。そのため,ユースビオの事業継続のみならず,樋山茂氏及びその家族の平穏な生活を害される恐れがあるため,ユースビオとしては,現在,そのような書込みした者を特定し,法的措置を取る準備を進めています。

    本プレスリリース及びユースビオに関する取材等の一切につきましては,ユースビオ又は樋山茂氏ではなく,弁護士佐川明生宛にお願いします。

    なお,ユースビオは,TBS,岸氏又は上記書込み者から支払われた損害賠償金の全額を,独立行政法人日本学生支援機構に寄付する意向である旨を申し添えます。


    以 上