ユースビオ代表が語った「創価学会との関係」「脱税事件」「ペーパーカンパニー疑惑への反論」

    政府が妊婦向けに配布した布マスクをめぐり、非公表だった「4社目」の受注企業を公表。福島市の「ユースビオ」の樋山茂代表に、ネット上で渦巻く疑問の数々について問いただした。

    「安倍友」「公明党の利権」「ペーパーカンパニー」

    政府が妊婦向けに配布する布マスクを受注した福島市の「ユースビオ」をめぐって、SNS 上では様々な憶測が飛び交っている。

    BuzzFeedは、同社の樋山茂代表(58)にこれらの疑問をぶつけた。

    (※中傷や嫌がらせの可能性を考慮し、初報では樋山代表の名前を伏せましたが、本人の了承を得て実名で報じます)

    「安倍さんには興味ない」

    ――安倍晋三首相について「癒着は一切ないです」と説明していたが、ネットには「ユースビオは安倍友」とする声があふれ、立憲民主党の大串博志衆院議員も「何かの人的関係、お友達であったとか、そういう構造があったのでは」と追及している。

    正直に言うと、安倍さんに対してはいままで全然興味なかったし、モリカケにも何の関心もなかった。

    けれども、いまの混沌とした社会情勢を考えた時に、一国の首相として、いくら何でもリーダーシップが足りなすぎる。不十分だと感じています。

    尊敬できるとは言えないですね。

    創価学会の3代目

    ――ユースビオの事務所に公明党のポスターが貼られているが、公明党とはどういう関係なのか。

    俺、創価学会員だし、公明党員だもん。創価学会はじいちゃんの代からだから3代目。

    ――公明党とズブズブなのでは?

    公明党ってそういうことやらないです。

    商売に関して「なんとかウチに受注できるようにしてくれ」みたいな話、公明党は受けないですよ。今回の契約はもちろん、今までもこれからも。

    たとえば事業者が官公庁に話を聞いてもらえない時とかに相談することはあり得ますけど、公明党が「発注してやれ」みたいなことは絶対やらない。で、僕も言わないです。

    誤解された社名

    ――ユースビオの「ユース」は「YOUTH」で、福島県出身で公明党の若松謙維参院議員の「若」からとったものだと、SNSで指摘されている。

    ははは。ウチのユースビオのスペルは「USEBIO」。

    「USE」は有益な・使える。「BIO」はバイオマス。「役に立つバイオマス」という意味でつくりました。

    若松議員とは知り合いだけどユースビオの名前とは関係ないし、「ユース」が若松の「若」だっていう話を聞いて笑ってます。

    「そんなコネがあるなら…」

    ――公明党との関係を生かして受注したということはないのか。

    一般の方からすると違和感があるかもしれないですけど、あくまでも宗教上のつながり。利権でのつながりはそぐわないです。

    ガキのころから創価学会員だから、(信仰は)自分にとって好き嫌い以前のもの。学会員だからおかしいと言うのは、「イスラム教徒はおかしい」と言うのと同じですよ。

    もし公明党のルートを使って商売できるなら、こんなこと(マスクの受注)じゃないことに使うわ。そんな癒着ができて力やコネがあるんだったら、脱税疑惑の時だって逃げ切ってるでしょ。

    脱税事件「国相手に逆らっても」

    ――代表を務めていた電気通信機器修理業の「樋山ユースポット」に関して、福島地裁が2018年6月に消費税法違反などで懲役1年6ヶ月、執行猶予3年、罰金400万円の判決を出している。

    控訴しなかったので、確定しています。(税務)調査の段階では不当だと考えていたけど、認めなければ執行猶予がつかなかった。

    納得するしないじゃなくて、国相手に逆らってもしょうがないから。お上にはひれ伏さないとね。

    《判決によると、被告は2012〜15年度の4年間、従業員の給与を外注費と装って控除対象仕入れ税額を過大に計上し、約3200万円の消費税と地方消費税の支払いを免れた》(2018年6月8日付『河北新報』)

    ベトナムに活路

    ――脱税するような企業が国の大きな取引を受注できるのはどうなのか?という意見もあるが。

    ユースポットとユースビオは別の法人、別の会社ですよね。「代表者が一緒だろ」と言うかもしれないけど。

    日本は一度こけたヤツを踏みつける国で、そこから立ち上がれない。

    だから僕は、伸び盛りのベトナムから韓国、台湾、日本に輸入する商売を始めたわけです。たまたまベトナムにツテがあったし。

    「ペーパーカンパニー」指摘に反論

    ――国税庁のサイトで検索すると、ユースビオと同じ住所に11社がヒットする。ペーパーカンパニーだと疑うツイートが拡散されている。

    それはユースビオが貸事務所を借りているからですよ。ほとんどは知らない会社で、付き合いもない。

    ウチと関係ないのに、ネットで「汚い事務所」と言われて、怒っている人もいました。

    僕がやっていたのは「樋山ユースポット」「あづま荒川エコファーム」「ユースビオ」の3社。

    あづま荒川はユースポットから派生して農業をやろうと考えて、トマト栽培のためにつくった会社。もうなくなっています。

    ユースポット時代の会社はみんな潰して、閉鎖登記してある。もう1社、ユースポットの外注先だった会社があったけど、ここも登録抹消されているはずです。

    ユースポット本体も登記は閉鎖しているし、税務署に廃止届も出しているけど、清算完了しないと終わらない。国税の問題も引きずっているから、清算は簡単じゃない。

    《同住所にある建設会社には問い合わせが殺到。建設会社が「弊社とは無関係。隣の会社だと思う。同じ住所に5、6社ある」と釈明する騒ぎになった》(4月27日配信『日刊スポーツ』)

    ホームページ、SNSがない理由

    ――公式ホームページやSNSがなく、「怪しすぎる」と言われている。

    ホームページやSNSで商売になるとは思えないから。ウチの業態からして、必要ないんですよね。

    YouTubeやFacebook、Twitterなどでの発信は一切していません。ネットに詳しい人は「いや…」と言うと思いますけど、それは勝手にしてください。

    みんなわからないから、「ああでもない、こうでもない」と言ってるだけ。

    事業の実体は

    ――法人登記によれば、ユースビオの設立は2017年の8月24日。従業員数は。

    5人。そのうちベトナムに3人いますね。

    ――設立から日が浅い上に従業員も少ない。ユースビオに事業の実体はあるのか?

    そういう意味で、実績あるのか、ないのかって言われたら「立ち上げ中です」っていうだけだよね。日本を経由しない取引について、証明するのは難しい。

    実体があるのかっていうよりも、人はいるんだし、マスク入れてるんだし、それでいいでしょって。

    品質も良くて、モノも納入していて、単価も安くて、事故も起きてなくて。「実体」って何よ?って話だよね。

    YouTuber?が乱入

    ――福島の事務所の写真だけ見て「ここでマスクを製造しているのか」と疑問視する声も上がっている。

    ユースビオ自体は輸入業者で、生産は日本でやってない。ベトナムで製造させています。今時、携帯とタブレットがあれば仕事はできるし。

    昨日(4月27日)、全然知らない人が会社に入ってきて。多分YouTuberだと思うんだけど。

    スポーツ紙の取材を受けてる時に「俺、マスクないんすよ! マスクつくってんでしょ!? マスクくださいよ!」ってすごかったよ。

    取材中だったから、「これあげるから帰りなさい」って手元にあったサージカルマスクを渡したの。「やったー!マスクもらえたー!」ってワッショイ、ワッショイ帰って行ったよ。

    「お前、その勢いでトヨタに行って『俺、クルマほしいんすよ!』って言ってこいよ」と言ったら、「それ効きますかね? やってみます!」だって。笑ったね。

    (※樋山代表が渡したマスクはユースビオ製品ではなく、会社での配布もしていません。押しかけるのはやめてください)

    《20代とみられる男性が突然訪れ、樋山社長に対し「マスクくださいよぉ~!ここ、作ってんでしょ?困ってんすよぉ~!」とマスクの分配を訴えた》(4月28日配信『スポニチ Sponichi Annex』)

    登記めぐる「謎」

    ――ユースビオの登記情報が一時、閲覧できなくなっていたのはなぜか。

    それは定款の事業目的を変更していたから。ウチはバイオマス発電の仕事だから、再生エネルギー関係の項目が多い。

    今後マスクを販売するにあたって、事業目的を変更しておかないとマズイので登記変更をした。

    ――「貿易及び輸出入代行業並びにそれらの仲介及びコンサルティング」という項目が加わっている。

    そうです。「これだと厳しいので、輸入のところを入れてくれ」ということだったんですよ。

    ――厚労省から指摘があった?

    3月の発注を受ける時に、定款のところで引っかかったから、ウチのいとこの会社を使ったんだよね。

    「もし4月も受注するようであれば、定款変更しておいた方がいいですね」という話になったので、(変更を)やっていたわけ。

    シマトレーディングは「いとこの会社」

    ――「いとこの会社」とはシマトレーディングのことか。

    そうそう。まあ義理のいとこですけどね。僕のいとこの旦那の会社です。資本関係はまったくありません。

    問題は通関なんですよ。通関の受取人は輸入業者になる。

    シマトレーディングは生花の輸入をしていて、その(事業目的の)なかには衣料品、布製品に関するものも入ってるので。

    後で何かあった場合に「定款の目的が…」と言ってくる人もいるから、国も慎重になったんでしょう。

    2社の分担は

    ――シマトレーディングの役割は。

    「通関出し」といって、成田空港にマスクが着いた時に受け取る役目だけです。

    受け取るのが輸入業者なので、当然代金の支払いをしなきゃいけない。代金の支払いもシマトレがやってます。

    ――ユースビオとシマトレーディングの関係性、分担がよくわからない。

    ウチはマスクの布原料を購入し、ベトナム側に供給するという仕事です。それだとウチの(変更前の)定款でも行けるので。

    その原料を受け取った工場が加工して、日本に入れるわけだ。日本に入ったものを受け取り、加工賃を支払うのがシマトレっていうことですね。

    加藤勝信厚生労働相:4月28日の衆院予算委での答弁

    「輸出入をするもう一つの会社と一緒になって契約額が5.2億円。輸出入に関しては、その会社が担っていると聞いております」

    「ユースビオはマスクの布の調達、納期時期などの調整、シマトレーディングは生産・輸出入の担当をしていたと聞いている」

    報道と厚労省の数字

    ――国とはユースビオがまとめて契約している?

    いやいや、直接です。シマトレと厚労省が直接。ユースビオと厚労省が直接。

    ――それぞれ別の契約。

    そう、分割契約。一体の取引ですけど、分割受注というのがあるんですよ。

    ――各社の報道によると、マスクの単価が135円で、生産枚数が350万枚だから単純計算で4億7250万円ということになる。この数字は…

    2社合わせて135円ということです。シマトレが80円でウチが55円とか、それぐらいかな。

    ――厚労省は「5.2億円」と発表しているが、なぜ金額がズレているのか。

    それは消費税でしょ。

    シマトレーディング取締役

    (シマトレーディングと厚労省が直接契約しているのか)

    「いえ、ではないです。細かいところは福島にあるユースビオの樋山の方に一任していたというか。僕らは指示された通り通関のところまでの仕事をやったということです」

    (成田での「通関出し」を担当したのか)

    「それは間違いないです」

    (代金の支払いもシマトレーディングがした?)

    「そうですね。海外の方への支払いはウチがやりました」

    (分割契約で単価はシマトレーディングが80円、ユースビオが55円?)

    「ごめんなさい。細かいところはよくわからないです。僕らは通関業務を請け負って、終わったというところまでしか関知していないです。ユースビオに指定されたことを遂行したというか」

    「あっちは福島にいて、こっちは成田空港の近くにある。そういった便もあって、知っているところの方が信頼できる、というところではないか」

    (シマトレーディングの代表は、樋山氏の「義理のいとこ」で間違いないか)

    「僕は社長の息子です。僕の母の、親の、兄弟の息子――つまり、僕の(母方の)祖父の兄弟の息子が樋山茂です」

    「普段は生花や葉物を扱うことがほとんどで、マスクをやるのは初めて。このご時世、コロナの影響で花が売れないので、暇と言えば暇なんです」

    「悪いこともしていないのに取材がくるんだなあと当惑していますが、こちらが後ろめたいことは何もないので、対応しています」

    厚生労働省マスク班の担当者

    「(ユースビオとシマトレーディング)両方と契約している。大臣の答弁にあった通り、それぞれが役割に応じた契約をされていたようです。合わせて5.2億円」

    (報道では4億7250万円と出ているが)

    「消費税はかかると思います。×1.1をしていただくと5.2億弱になります」

    ※135円×350万枚×1.1=5億1975万円

    「山形県から経産省紹介」

    ――改めて、政府との契約に至るまでの流れを知りたい。

    2月の後半ぐらいから、山形県や福島県とやりとりしてました。日本国内でマスクがなくなった。「社長のところでマスク調達できないかい?」という話をもらって。

    福島はどこの課で買うんだ、管理するんだとか、あーだこーだやってて動きが遅かった。

    山形県の方は早くて、健康福祉課だったかが「ウチの予算で購入したい」って名乗りをあげたんですよ。

    その契約のやりとりをしている最中、「国が一括調達することになりました」って話になって。

    山形県から経産省の担当者を紹介されて、「そちらに情報共有してるので連絡してください」ってつないでくれたんですよ。

    福島県新型コロナウイルス対策事務局の担当者

    「こちらのコロナ対策本部でマスク購入を始めたのが3月の下旬。それ以降でユースビオさんの方から購入なり納入なりの話があったという記録はありません」

    (3月下旬よりも以前についてはどうか)

    「ユースビオさんの方がどのように説明されているのか、我々も伝聞でよくわからないのですが、その時期に誰にどういう話をしたのかという情報も、こちらには残っておりません」

    政府の一括調達方針受け

    ――経産省につないだのは福島県ではなく、山形県だったと。

    山形ですね。福島は遅かった。

    発注するのしないの、早くほしいのって騒ぎをしているなかで、3月の頭ぐらいに国が一括調達の方針を出した。

    あれ、どうするのかな?と思っていたら、山形県から「こういうわけで一括になったので、そっち(経産省)に行ってくれ」と連絡があった。それが3月上旬のことです。

    山形県長寿社会政策課の担当者

    (ユースビオへの発注を検討していた事実はあるか)

    「先方の方と契約した実績がなく、海外との取引も我々したことがなかったものですから、今回、見送らせていただいた状況でございます」

    (発注直前までいった?)

    「発注直前までいったというよりは、『いま購入しないと中国であるとか、海外の方から様々な引き合いがある』と急かされた状況にございました」

    『早く契約しないと、山形県さんのところには回せませんよ』というような言い回しをされて。これまでお付き合いがあったわけでもありませんので、慎重な取り扱いをさせていただいた」

    (そこから国につないだ、紹介したのは間違いないか)

    「そうですね。国の方にも話はさせていただいたところでございました。経産省ですね」

    「ただ、経産省にご連絡をした時には、経産省の方でもその情報は知っていたはずです」

    「ユースビオさんだけではなくて、いろんな情報が経産省のところに集まっているんだろうなと。そのなかにユースビオさんの名前もあったのではないかと思います」

    (経産省に情報提供をしたのでは)

    「うーん…。正直に申し上げますと、我々としてもユースビオさんの素性がわからなかったというところもあって、経産省に情報を教えていただけないかなと思って問い合わせをしたということです」

    (結果、山形県としては発注しなかったと)

    「そうですね。政府全体としてマスクの調達に関して動いているというなかで、山形県が購入するのは、なかなか難しいのかなと」

    「経産省の方ともお話しして、そういう形で内部的に整理しました」

    (「山形県の方では発注しないが、あとは経産省と話を進めてくださいね」ということ?)

    「私としてはそこまで直接、経産省さんに『つないだ』という認識はございません」

    「たぶん(ユースビオが)直接、経産省とやりとりをしていたんだと思いますけど、ちょっとその辺は私もよくわからないです」

    スペック表やサンプルを提出

    ――伊藤忠商事など大手にまじって、「正体不明」の小さな企業がなぜ政府の事業を受注できたのか?という疑問の声が根強い。

    それはさっきも言った通りで、ウチが受注するにあたっては、まず山形県から経産省に情報が行きました。で、樋山が経産省に連絡を取りました。

    その際に、ウチで製作できるスペック表であったり、検査成績表であったり、いろんなエビデンスを出しました。あとはサンプルも出しましたと。

    ベトナムってマスク文化で、マスクつくってる会社多いんですよ。その業者とウチが契約して、契約書を見せました。

    その業者がどれぐらいの量をどれぐらいの品質でつくってたか、というエビデンスも出しました。

    つまり、ウチはマスクつくったことないけど、(ベトナムの)マスクをつくってる会社と契約をしたってことですよね。ウチが発注してつくらせたんです。

    加藤勝信厚生労働相:4月28日の衆院予算委での答弁

    「ほかの布製マスクを供給している方を含め、経産省が主体となって声がけをさせていただいた。それに応えていただいた事業者の1社です」

    「マスクの品質および価格、企業の供給能力、迅速な対応が可能であるかなどの観点から選定を行い、速やかにマスクを配布する必要があるということで随意契約をした」

    「具体的には、ユースビオから供給可能枚数などの納入計画の提案があり、供給能力や納期についてヒアリングを行った。マスクのサンプルの提出を依頼して、マスクの品質に支障がないと確認したうえで、契約した。当該社の納入したものについては、少なくとも今の段階で、不良品などの指摘は受けていない」

    「サイズは厚労省が選択」

    ――ユースビオのマスクから不良品は出ていないということだが、「耳にかける部分が短い」という感想もあるようだ。

    複数のサンプルを準備し、サイズはS・M・Lを出した。そのなかのMを選んだのは厚労省さんです。だから、小さいと言われても…。

    もともとベトナムマスク自体がきつめではあるんです。耳のところはゴムではなく布なので、洗うと伸びてくると思いますよ。

    厚生労働省マスク班の担当者

    「ユースビオの納品したマスクで、不良品と確認したものはいまのところありません」

    (サイズを指定したのは厚労省?)

    「すみません、わからないです。当時の担当に聞けばわかるかもしれませんが、私が承知していないということです」

    「サイズを指定したというよりは、サンプルをいただいて確認している。確認したうえでお願いをしているので、そのサイズであることは我々も知っていました」

    「ただ、サンプルをつくる前に我々が『何センチ』と申し上げたことは恐らくないと思います」

    (「何センチ」というよりは、S・M・Lの3種類のサイズから選んだ、ということのようだが)

    「ああ、そうですか。すみません、それはやりとりがあったかもしれませんが、私は承知していません」

    使い捨てマスク寄付の経緯

    ――布マスクの政府契約とは別件になるが、福島県に使い捨てマスクを寄付した経緯は。

    今回契約したマスクを縫製してくれているベトナムの業者と何かで話した時に、「日本はマスクないの? 調達して送ってあげるよ」と言うから、ありがとうと。

    来ても段ボール1箱ぐらいだろうと思ったら、4トン車1台分来たの。どうしようと思って。県とか市とかにあげるしかないじゃん。

    表彰だの何だのこの緊急事態にやるべきじゃないし、プレスに出したりとかは面倒くさいからやんないでくれと。

    介護施設とか病院とか、行きつけのパン屋のおばちゃんにあげたり。それを見ていたお客さんにもあげたり…。「謎のマスクおじさん」と思われているかもしれない。

    県庁に関しては、公明党の伊藤達也県議に「こんなにいっぱいあるんだけど、どうしよう」と相談したら、「県がぜひほしいです」って言うから伊藤君に頼んだ。

    福島県新型コロナウイルス対策事務局の担当者

    「県議会議員の方の仲介というか、県議会議員から寄付をしたいというお申し出があって。そちらの方から寄付を受けました。寄付があったのは4月23日です」

    「マスコミ各社から『ユースビオのマスクではないか』というお問い合わせがあって確認したところ、提供元はユースビオさんだったということでした」

    (県議の名前は)

    「伊藤達也議員になります」

    (布マスクではなく、使い捨てのサージカルマスク?)

    「はい、そうです」

    (枚数は)

    「2万5千枚です」

    (使い道は決まっているか)

    「まだ決まっていません。今後、医療機関や介護施設の不足状況を踏まえて配分先を決めたいと考えています」

    社名公表が遅れた理由

    ――どの時点で社名を公表することを許可したのか。

    厚労省から「名前を出すことになりますがよろしいですか」と聞かれて、「はい、いいですよ」と答えました。

    税金で買ってもらってるものなのだから、公表するのは当然でしょう。

    電話だったのでハッキリ覚えてないですが、妊婦向けマスクの汚れだなんだが発表されて、すぐぐらいだったと思います。

    「あくまで推察だが…」

    ――結局、社名の発表が27日になったことに関して、厚労省から説明はあったか。

    ないです。

    予想でいくと、名前が出ればこの騒ぎになるわけだよね、悪いことしてなくても。だから不良品も出してないのに、名前を出すことに対する配慮があったのかもしれない。

    もうひとつは、今回の調達は経産省と厚労省の合同チームなんだよね。

    経産省がどこから買うかという調達を担当して、調達してきたものをどこに配布するかを厚労省が担当してるんですよ。

    で、ウチは厚労省さんが用意した倉庫に入れた段階で、その後どこに使われたかわからないんです。

    この騒ぎになって初めて、「ユースビオさん(の配布先)は文科省関連と介護施設うんぬん」と言われた。そういうところに行ったんだなあ、というのは後から知ったのね。

    メインがそっちで、余った分を今回問題になっている妊婦さん向けに出したらしいんです。

    妊婦さん向けの中心は、ウチじゃなくて伊藤忠、興和、マツオカコーポレーションの3社で、ウチは別向けに調達したやつの余りを入れただけだったんですね。

    だから出さなかったのかなと。あくまで推察だけど、この2点ですね。

    厚労省から回答。布マスクは興和、伊藤忠商事、マツオカコーポレーションの3社と契約。7800枚の不良品が混入していた妊婦向けマスクはこの3社のほかに1社加えた4社。ということは全戸配布マスクにも不良品混入の可能性が?466億円かけて不良品配布に?そういえば東京でも配布が止まっているような気が

    厚生労働省マスク班の担当者

    (なぜ「4社目」の公表が遅れたのか)

    「一貫して申し上げていることですが、『妊婦さん向け』に入っているかどうか、わからなかったからです」

    「介護施設向けであれば、横井定も含めて5社だというのはすぐわかるんですけど、妊婦向けに入っているかどうかがわからなかった」

    「『妊婦向け』という質問に正確にお答えしようとすると、入っているかわからない状態ではお答えできなかった。その確認ができて、お答えできるようになったのが昨日(27日)でした」

    (確認はそんなに時間がかかるもの?)

    「介護施設宛は配布先が非常に多く、住所が55万箇所ぐらいありまして。その箱詰めのなかから1700〜1800程度が妊婦さんに行ってるんですけど。それにどのメーカーのものが入っているか確認するのに時間がかかったようです」

    (「興和」「伊藤忠商事」「マツオカコーポレーション」の)3社が入っていること、5社目の「横井定」が入っていないことは早めにわかったんです。

    (4社目のユースビオだけが確定しなかったと)

    「そうです。それが実態なのですが、皆さんにはイメージが湧きづらかったのだと思います」

    (野党議員には4月21日時点で「妊婦向けマスクの製造メーカーは上記3社に1社を加えた4社」と回答している。4社であることが確定していたのなら、名前を出すこともできたのでは)

    「我々はずっと『最大4の可能性』と申し上げてまして、野党の先生にも『4社目の製品が入っているか否かは確認中で、まだわかっていません』とご説明していたはずです」

    (ユースビオの製品に関してクレームがきていないので発表を逡巡したということはないのか)

    「それとはまた別な話です」

    (最初から「妊婦向け」ではなく「介護施設向け」と聞かれたら、ユースビオ、横井定も含めて5社答えていたということ?)

    「仮定ではお答えしづらいですが、その答えは5社ですね。それはすぐわかる話ですけど」

    (「ご飯論法」のようだが、「介護施設向け」でなく「妊婦向け」と聞かれたから、そう答えたと)

    「そうですね。『妊婦さん向け』という質問をいただくと、妊婦さん向けでお答えをしようとするということなので。そこで我々のわかる情報をお伝えしていました。

    「説明責任は果たした」

    ――世間でこれだけ騒がれていることについてどう思うか。

    国会で取り上げられて、大手新聞含め各種メディアが取材に来られたことに対しては、何らやましいことはないので、きちんとお答えしました。

    非常に負担ではありましたが、税金から支払いを受けている状態ですから、やむを得ないことだと思います。説明責任は果たしたつもりです。

    それ以外の興味だ何だという人たち、もしくは所在のハッキリしない人たちには応対できません。

    YouTuberとかネット部隊の人たちは、ああ、お疲れさんなんだなと。それに対してどうコメントしていいか、俺はわからんわ。

    ただ、心配してるのは他県とか東京とかからいらしている方がいるのね。どういう正義感を持っていらしているのか知らないけれど。

    移動するな、人に会うなと言われている時期なので、おやめになった方がいいんじゃないかなと思ってます。

    ネットで批判している人たちはどういう立場なんだろう。ネット右翼なのか、左翼なのか。

    朝日読者で共産党は「大好き」

    ――どちらかと言えば、政権に批判的な左派が多いのでは。

    僕は30年以上、朝日新聞を購読してます。

    脱税事件の裁判では共産党系の法律事務所のお世話になりましたし、今回も『赤旗』さんの取材を受けました。

    共産党のことは大好きですよ。共産党と公明党が仲良くしてくれたらいいなと思ってる。昔は随分、仲が良かった時もあるんだから。


    樋山代表には4月27、28日に電話で計約2時間インタビューし、その後各方面に裏付け取材を行った。筆者は福島で新聞記者として勤務した経験があり、当時の人脈から樋山代表の連絡先等を把握し、取材した。