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「桜を見る会」過去の“総理大臣枠“が明らかに。残されていた文書が示す「60」の意味

「桜を見る会」をめぐり、国立公文書館に残されていた決裁文書から、新たな事実が明らかになった。「マルチ商法」としてのちに行政処分を受けたジャパンライフ元会長が「60」という区分で招待されていた点が、安倍晋三首相によるものであるか、野党は追及を強めている。

招待者に関する様々な疑惑が持ち上がり、批判に晒されている首相主催の「桜を見る会」をめぐり、過去の決裁文書が、国立公文書館に残されていたことがわかった。

文書には、当時の「総理大臣枠」の存在や招待人数なども記されている。なかでも注目されているのは、「60」という招待区分だ。いったい、何が明らかになったのだろうか。

まず、経緯を振り返る

桜を見る会をめぐっては、安倍首相による地元後援者の招待や、安倍昭恵夫人の推薦枠や自民党枠などが存在したことから「私物化」の指摘もあがっていた。

野党側は2019年4月13日に開催された今年の会について、誰が招待されたのかを明らかにするよう求めているが、政府側の説明では、招待者名簿は5月9日に破棄されており、データについても復元ができないと主張している。

あわせて問題になっていたのが、2015年の同会に「マルチ商法」としてのちに行政処分を受けたジャパンライフ元会長が「60」という区分で招待されていた点だ。

共産党が入手した内閣府の内部文書では、「60〜63」は「総理・長官等推薦者」を示すと明記されており、野党側は、元会長が安倍首相に招待をされていたとして、追及を強めている。

一方の内閣府側は「番号は便宜上の整理につけたもので、会の終了を持って使用目的を終え、招待者名簿も廃棄している」ことを理由に、「60」という区分について「定かではない」としていた。

12月23日には、内閣府は担当者へのヒアリングの結果「区分番号60番台は従来から官邸や与党の関係だったと思うとのこと」と明らかにしたものの、「総理大臣枠」かどうかの説明はないままだった。

公文書館に残されていたもの

国立公文書館には、2006年の「桜を見る会」に関する決裁が残されていた。当時の最終決済者は当時の小泉純一郎首相。当時官房長官だった安倍首相の印鑑もある。

BuzzFeed Newsが実際に確認したところ、決済文書には、「参考17年」として、2005年4月の同会の招待区分や人数に関する資料が残されていた。

それを見る限り、総理大臣の招待区分は「60」になっている。その後「61」は自民党、「62」は公明党、「64」は官房長官、「65」は副官房長官と続く。

2005年の総理大臣の区分が「60」だったのであれば、2015年に招待されたジャパンライフ元会長の「60」は、安倍首相の招待を示すものなのではないかーー。

12月24日に開かれた野党ヒアリングでも、この過去の区分についても質問が出たが、内閣府側は以下のように回答するのみだった。

「分野別招待者数という資料は平成17年ということでございますので、平成17年はそういったことだったのかもしれません」

今年の決裁は存在せず?

参考資料には、2005年の招待人数も事細かに記されていた(写真)。その合計は8737人だ。官邸や与党を示す60番台の区分では、以下の通りになる。


総理大臣推薦者:2420人(うち総理大臣、区分60:737人 自民党、同61:1483人 公明党、同62:200人)

官房長官推薦者:324人(うち官房長官、区分64:132人 官房副長官、区分65:192人)


一方、2019年の参加者は1万8200人だ。菅義偉官房長官が説明した招待者の割り当てによると、安倍首相が1000人、副首相・官房長官・官房副長官が1000人、自民党関係者6000人だったという。

野党ヒアリングでは、今年に関しても区分ごとの招待人数について示すようにという質問や、今年の決裁文書が残されているかどうかについての質問もあがった。

しかし、内閣府側は「人数につきましては招待者名簿を廃棄しているからわからない」「決裁につきましては現在、とっておりません」と回答した。

いつから決裁をとっていないか、についてかは定かではないという。野党側はこの点についての説明を求めている。

60年前の名簿も残されているが…

国立公文書館には、いまから60年以上前の「桜を見る会」の名簿が保存されていることがわかっている。その保存期間は「永久」だ。

一方、今年の「桜を見る会」の招待者名簿は、各省庁などの取りまとめをする内閣府が保存期限を2018年4月にそれまでの「1年」から「1年未満」へと変更したことから、今年に関しては、開催からわずか1ヶ月ほどでシュレッダーにかけられていた。

招待者名簿は個人情報であることや、量が膨大であることがその理由だ。公文書管理の面から、この事態を憂う声は少なくない。

安倍首相は保存期間の見直しも検討する考えだが、2019年分については「復元できない」としている。