Twitterで、朝日新聞が「辺野古の海への土砂投入、サンゴを傷つけた罪は重い。万死に値する」と書いたとするツイートが拡散している。24日午後5時現在、3000件以上リツイートされている。同様の見出しで記事がアップされたサイトもある。
しかし、結論から言うと、この内容は誤りだ。朝日新聞はこのような記述がある記事を出していない。
沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設をめぐっては、政府が新基地建設のため、辺野古沿岸部に土砂を投入した。
建設反対を訴える人たちは、辺野古の「サンゴを殺すな」などと書かれたプラカードを掲げるなどして抗議活動を続けている。
政治評論家の加藤清隆さんが行った、次のツイートが拡散した。
"朝日が「辺野古の海への土砂投入、サンゴを傷つけた罪は重い。万死に値する」。恐らくこの記事を書いた記者は1989年の「朝日新聞珊瑚記事捏造事件」を知らないのだろう。知っていれば、恥ずかしくてとても書けるはずがない。"
BuzzFeed Newsが契約する新聞・雑誌記事の検索システムで調べると、朝日新聞が、辺野古への土砂投入にあたって「サンゴを傷つけた罪は重い。万死に値する」と表現した記事は見当たらなかった。
また、朝日新聞社広報部に確認を求めたところ、20日に「ご指摘の文言の記載は、朝日新聞の記事にはありません」との回答があった。
なぜ前述のツイートをしたのか。BuzzFeed Newsは21日、加藤さんに取材を申し入れたが、24日午後5時現在で回答はない。回答があり次第、追記する
ソースはネット掲示板やまとめサイトか
一方で、ネット上を調べると、「辺野古の海への土砂投入、サンゴを傷つけた罪は重い。万死に値する」は、ネット掲示板「5ちゃんねる」などで見出しとして使われていることがわかった。
スレッドは17日午前7時半すぎに立ち上がっているのがわかる。
さらに、まとめサイト「政治知新」も同日、“【おまいう】朝日新聞「サンゴを傷つけた罪は重い。万死に値する」ネット「KY」「ツッコミ待ちか」「朝日新聞の記者は正気でコレを書いてるのか?」“との見出しを使っている。
この記事を紹介するツイートは、加藤さんがツイートする約20分前にアップされている。
いずれのサイトでも参照しているのは、朝日新聞による15日付の記事「(社説)土砂投入1年 民主国家のすることか」だ。
この社説記事では「今月も、浮き具の重りがサンゴを傷つけたとして撤去と工事の中止を求めたが、国は一顧だにしない。民間の事業では考えられない対応だ」などとして、安倍政権の対応を批判している。
「嘆かわしい限りだ」「沖縄の声に向き合え」などと強い表現はあるが、「罪」「万死」といった言葉は見当たらない。
加藤さんのツイートやまとめサイトの記事は、社説の原文ではなく、掲示板の見出しなどをもとにした可能性が考えられる。
「珊瑚記事捏造事件」は事実
なお、加藤さんが指摘する「朝日新聞珊瑚記事捏造事件」は事実だ。
朝日新聞は1989年4月、夕刊一面で、沖縄県の西表島近海でサンゴに「KY」との文字で傷があった、とカラー写真付きで報じた。見出しは「サンゴ汚したK・Yってだれだ」というものだった。
しかし、写真記者が自らがサンゴを傷つけ、捏造していたことが判明し、当時の社長が引責辞任する事態となった。
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