國學院学長とウサギ、取り違えの裏に過激派  ビラ作成の学生「注意呼びかけ」

    学生は、学校や新入生を憂えていた。

    学長とマスコットキャラのウサギを取り違えたビラが話題となった國學院大学。大学の公式印刷物が間違えたとの誤解が広がり、関与した学生への処分が検討されている。思わぬ波紋を呼んだ背景には、保守的な校風で知られる大学での過激派の存在があった。

    BuzzFeed Newsは、國學院大当局や関係者に取材した。

    問題となったビラは新入生を対象としたもので、今年4月に配られた。BuzzFeed Newsは現物を入手した。

    左側の上部に<学長>としてマスコットキャラクターのウサギが印刷され、下部に<マスコットキャラクター>として学長の顔が印刷されている。右側には<過激派にご注意を!>という題の文章が書かれている。

    実物を手に取れば、これが大学の公式印刷物ではないということは一目瞭然だ。構成はいかにも学生が作りそうなものだ。

    ビラ作成に関与した男子学生が大学に説明した情報を総合すると、印刷枚数は100枚程度。趣旨は「過激派が関与するサークルに入るのはやめよう」と訴えるものだった。

    つまり、ビラの主眼は注目を集めた左側の学長写真の取り違えではなく、右側の「過激派への注意」だった。なぜか。

    明治政府が創立した皇典講究所を母体とする國學院大は、その出自から保守的な伝統を持つ大学として知られる。「建学の精神」には次のように記されている。

    国家の発展を将来に期するためには、思想も文化も体制も、単に欧風の模倣でなく、わが国の歴史・民族性に基づくものでなければならない

    そんな大学で、この男子学生は神道を学んでいた。近年、学内の過激派メンバーの行動が目立ち、新入生が彼らの勧誘を受けることを心配していたという。

    注目を集めたのは「取り違え」だった

    学長とマスコットキャラクターの写真を逆にしたのは、「ここで笑ってもらって、注意の部分を読んでもらうため」ぐらいの気持ちだった。趣旨も含めて、問題になることはないだろうと考えていたという。

    しかし、ことは大きくなる。ビラを見た國學院大の学生がツイッター上に、学長とマスコットキャラクターを逆にした部分を撮影した写真をアップした。その写真は次々とリツイートされ、あっという間にネット上に拡散した。しかも、次のような内容で。

    國學院しっかりしろwww 写真逆だろwwwwwwwwwww

    15万回以上リツイートされたこれと同様の写真を、ネットメディアが取り上げた。

    netgeekは「國學院大學のパンフレットに致命的なミスがあって声出して笑った」という記事で「國學院大學が新たにつくった大学パンフレットに絶対にやってはいけないミスが見つかった」と、大学の公式印刷物のミスであると報道した。

    BuzzFeedは当時、大学に取材し、「國學院大學の学長がウサギに? 大学が公式ではないと否定」と報じたが、大学当局はすでに広がってしまったツイートや誤報のために、自分たちのミスであるとの誤解に苦慮する事態となった。

    学生は自宅待機 「エスカレートした行為やりかねない」

    BuzzFeed Newsの取材に、大学当局はビラを作成した男子学生を特定し、処分を検討していることを認めた。学生は「大学と学長の名誉を傷つけるような行為をしたことは申し訳なかった」と謝罪し、大学は処分が決まるまでの間、自宅待機を命じたという。

    大学は「故意に学長とマスコットキャラクターを入れ替えたビラを作ったことが問題。現状は自宅待機で、処分を検討しているのは事実だ。自宅待機としたのは、よりエスカレートさせた同様の行為をやりかねないからだ」と説明している。

    悪いのは学生1人なのか?

    学生の周囲からは、この対応に疑問の声も上がっている。

    「なぜ、男子学生一人が悪者になって、処分されないといけないのか。騒ぎを広めたのは、同じとみられる写真を使って面白おかしくツイートを拡散させたツイッターユーザーであり、何も確認せずに記事にしたメディア。彼は拡散に関与していない。反省もしている中、いくらなんでも処分検討は行き過ぎではないか」

    男子学生は周囲に「自分の将来はどうなるのだろう」と不安を漏らしているという。