【更新】退位後称号は「上皇」? 毎日と日経が正反対の報道、菅官房長官は思わず苦笑い

    どちらも主語は「政府」。毎日新聞は上皇という呼び方を用いない理由について、「象徴の分裂が起こる懸念」があると報じています。

    天皇陛下の退位に関連し、退位後の呼称をめぐって毎日新聞と日経新聞が正反対の報道をしている。

    日経新聞は記事中で「政府」が、退位後の呼称を「上皇(太上天皇)」とする検討に入った、と報じた。情報源は「政府関係者によると」としている。

    政府は、天皇陛下が退位された場合、その後の呼称を「上皇(太上天皇)」とする方向で検討に入った。皇族としつつ皇位継承権は付与しない方針で、公務など活動のあり方が焦点となる。

    有識者会議が昨年11月に専門家に聴取した際、呼称は「太上天皇」や「上皇」とするのが望ましいとの意見が相次いだ。政府関係者によると、一般的になじみの深い略称である「上皇」を用いる案が有力視されているという。

    毎日新聞の主語も同様に「政府」だ。「前天皇陛下」や「元天皇陛下」という呼称が検討されていることにまで踏み込んでいる。

    政府は天皇陛下が退位した後の称号について、歴史的に使われてきた「太上天皇」と略称の「上皇」は使用しない方針を固めた。上皇が天皇より上位にあるとして政治に関与した歴史があり、皇位の安定性に懸念を抱かせる恐れがあると判断した。代わりに天皇より上位とみなされにくい「前天皇」や「元天皇」とすることを検討している。今春以降に国会に提出する退位の関連法案に明記する。

    情報源として記されているのは「有識者会議関係者」だ。

    また、毎日新聞は上皇という呼び方を用いない理由について、「象徴の分裂が起こる懸念」があるとしている。

    上皇は歴史的な称号で権威を与えかねず、新天皇に即位する皇太子さまとの「国民統合の象徴の分裂」が起こる懸念がある。「二重権威になっていさかいが起こるイメージがある」(有識者会議関係者)こともあり、使用を見送る判断に傾いた。

    そもそも「上皇」とは、譲位した天皇を呼ぶ「太上天皇」の略称だ。歴史的には、第119代の光格天皇が1817に生前退位し、上皇となったのが最後となる。

    平安後期には上皇が「院政」で政治の実権を握り、天皇よりも権威を持っていたことがあった。

    これは天皇と上皇の権力争いにもつながり、1156年には崇徳上皇と後白河天皇が対立する「保元の乱」も起きている。

    毎日新聞がいう「権威」や「分裂」は、このイメージに基づくものだ。ただ、記事では、「『院政期の上皇は権力を持つために退位したので、現行憲法下の象徴天皇と結びつけるのは飛躍がある』として懸念は不要」という有識者の声も紹介している。

    産経新聞は1月12日午前、「政府首脳、毎日新聞の『前天皇』報道を否定」との記事を配信している。

    記事では、「政府首脳」の声をこう紹介している。

    「元天皇、前天皇は検討しておらず間違いだ。上皇に関しては、過去の上皇とは異なる意味合いで称号とする可能性はある」

    朝日新聞は「退位後呼称含む制度全体提言へ」と、検討が進んでいる点を報じた。NHKや読売新聞はいずれもこの点については触れていない。

    【更新】

    菅義偉官房長官は1月12日午後、両紙の報道について記者から質問を受け、苦笑しながら、こう答えた。

    「有識者会議のみなさんで天皇の負担軽減問題の論点整理の検討が進められている。どっちが間違っているとか正しいとかという話でしたが、(呼び方の)議論はしていないという風に私は承知していますので、どっちもどっちなんじゃないですか」