地震が続く熊本・大分両県で、「エコノミークラス症候群」とみられる症状で病院に搬送される人が増えている。熊本市では、車の中で避難生活を続けていた51歳の女性が亡くなり、メディア各社が大きく報じた。
ストレッチと水分補給で予防を
エコノミークラス症候群は、体育館などの施設で避難生活を送っている場合にも発症する可能性がある。予防には、長時間同じ姿勢でいることを避け、足を動かす運動や、適度に水分を取ることが効果的だとされている。足の運動には、次のようなものがある。
保険証ナシでも受診できる
2011年3月11日ーー東日本大震災で被災した佐藤美怜さんは、避難生活で母(当時49歳)がエコノミークラス症候群を発症した時の体験を『3.11 慟哭の記録―71人が体感した大津波・原発・巨大地震』(新曜社)に綴った。熊本・大分での地震発生を受けて、佐藤さんの手記の一部が無償公開されている。
避難生活において、エコノミークラス症候群を発症するのは具体的にどのようなケースか。佐藤さんの手記からまとめた。
体育館で一夜を明かした
地震発生後、佐藤さん親子が体育館に着いた時には、800人以上はいると見られるほど多くの人々がすでに避難していた。「まさにすし詰め状態」であり、ずっと座っていなければならなかった。もたれかかることはできず、「すぐに腰や背中が痛くなる」状態だったという。
心身ともに限界、車中泊に切り替えた
2日目には、2人とも腰の痛みが限界を迎えた。また、人の多い避難所でストレスもたまっており、車中泊をすることにした。車中では、座席をできるだけ倒して横になった。夜は、寒さで何度も目が覚めてしまうものの、避難所よりは眠ることができたという。
「足が痛い」、階段で心肺停止に
3日目の朝、佐藤さんの母は車から出ると「足が痛い」と言った。マンションにある自宅に向かう階段の3階辺りで、「気持ち悪い。ちょっと休ませて」としゃがみ込んだ。容体が回復しないため、救急車で病院に。
救急車の中で佐藤さんは、「母の年齢や持病、過去の大きな病気や倒れた時の状況など」を細かく聞かれた。しかし「動揺して頭が回らない」。病院も非常用電気で稼働しており、平常時のような細かい検査はできず、状況判断で処置を施さねばならなかった。「隊員の質疑応答の情報は必要不可欠で、命が助かるかどうかも左右するのである」と佐藤さんは綴っている。
避難所ですでに血栓ができていた可能性
病院で、佐藤さんの母はエコノミークラス症候群であると診断された。地震後、足にできた血栓が肺に飛んで心肺停止に至ったという。幸いにも、次第に血圧がもどり、一命を取り留めた。
佐藤さん親子はエコノミークラス症候群をもともと知っており、体を動かし、水分を極力取るように気をつけていた。医師は、車中泊だけが原因ではなく、1日目に避難所でずっと同じ体勢であったため、すでにその時に血栓ができていた可能性もある、と説明したという。