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災害時、「やさしい日本語」で外国人に分かりやすくツイートする5つのポイント

防災の日、いつ来るか分からない災害に備え、やさしい日本語でのツイートの仕方を学びませんか?

災害発生時、日本語に不慣れな外国人にどうしたら、ツイートで避難方法や災害情報が的確に伝えられるのか?

「やさしい日本語」を使い、ツイートで災害情報の伝える方法についてのイベントが、8月30日、都内でTwitter社とインターネットメディアwithnewsの共催で開かれました。9月1日の「防災の日」に合わせた開催です。

災害時、Twitterがリアルタイムで状況を知る手段として広く使われている中、イベントで紹介された、やさしい日本語でツイートする上で気をつけるべき「5つのポイント」をまとめます。

緊急時に「伝わる」ツイートのポイント5つ

災害時に使われる言葉は、日本人でも普段使わないような言葉が多いので、それらの言葉を全て、分かりやすい言葉に置き換える必要があるということです。

イベントで紹介された例文がこちら。

「津波を避けるために高台に避難してください」
     ↓
「津波(つなみ)、大きい波(なみ)がくる。高いところに逃げろ」

「高台」はどのような場所か分かりづらく、「避ける」「避難」は、分かりやすい言葉ではありません。伝えるべきことだけを、分かりやすい言葉で簡潔にまとめます。

災害時に知っておいた方がよい「津波」などの言葉には、ふりがなをふり、「大きい波」との説明を添えます。

災害状況や避難勧告についてのツイートは、緊急時でパニック状態でも分かりやすく簡潔に伝わる必要があります。

文章はできるだけ短く、さらにどのような状況であるかの写真やイラストがあれば、目を引き、理解もしやすくなります。

以下のNHKニュースの、やさしい日本語での台風についての記事は、豪雨で川が氾濫するイラストを添えてツイートされています。

【NEWS WEB EASY】 やさしい日本語(にほんご)のニュースです。 台風(たいふう)がきます。 雨(あめ)がたくさん降(ふ)るかもしれません。どんなことに気(き)をつけたらいいか 書(か)いてあります。 https://t.co/kHlFxQUAnG

@nhk_news

漢字での地名を並べられても、外国人には分かりにくいこともあるので、地図をつけても分かりやすくなります。

地震の報道でよく見られる以下の様な文章では、震源地やマグニチュードなどの情報が定型文として入っていますが、避難時などにまず必要な情報ではありません。

やさしい日本語で書く際は、まず災害の状況を把握でき、避難に必要な情報をツイートの前半に持ってきます。

【例】

イベントで、やさしい日本語について説明した、一橋大学の庵功雄(いおり・いさお)教授によると、日本語に慣れている人は、全文を読んでどの情報が必要かを取捨選択できますが、不慣れな外国人は全部を理解しようと努めます。

やさしい日本語で書く際には必要な情報を取捨選択し、文章の中でも前半に優先して書く必要があるそうです。

全てを平仮名で表記すると、逆に読みにくくなってしまい、漢字の方が理解しやすい場合もあるため、漢字で表記し、ひらがなで読み仮名をふると分かりやすいといいます。

【 例 】避難所(ひなんじょ)は 地震(じしん)や 大雨(おおあめ)の ときに、にげる ところ です。学校(がっこう)や 公民館(こうみんかん)です。だれ でも いけます。夜(よる) も とまれ ます。お金(おかね)は いりません。

やさしい日本語で文を書く時のポイントとして、一つの文を短くし、読みやすくするという原則があります。

そのため、一文には一つの情報に絞り、次の情報は次の文で書くと分かりやすくなります。

【例】原文:大きな地震の後は、津波が来る危険性があるので、家族や友人と高い場所へ逃げてください。
   ↓
大きな 地震(じしん)の あと には、津波(つなみ)が きます。高い(たかい)ところ へ にげて。家族(かぞく)や 友達(ともだち)と いっしょ に にげて。

これらのポイントは、ツイートに限らず、Facebookへの投稿やLINE、避難所での張り紙など、様々な場所で活用することができます。また、外国人だけでなく子どもにも分かりやすい表記方法です。

なぜ、災害時に「やさしい日本語」が重要なの?

日本語教育などが専門の庵教授は「外国人の中には、今まで地震を一回も経験したことない人はたくさんいる。なので、そもそも地震があったときに、何が起こるかということは一般常識ではない人が多いです」と話します。

「地震発生時には、机の下に隠れて頭を守る」や「津波の恐れがあるので高い場所へ避難する」など、日本では小学校から教えられ「常識」とされることも、海外の人にとっては常識でないことを、庵教授は強調しました。

実際に阪神淡路大震災(1995年)や東日本大震災(2011年)では、被災した外国人への情報伝達に困難が生じたといいます。その後、対策が取られつつあるものの、課題は今も残っているのが現状です。

日本で外国人とのコミュニケーションというと、まず英語が選択肢に浮かびます。しかし日本に在住する外国人には、英語が母語ではなく、あまり理解できない人も多いといいます。

日本に暮らす外国人約273万人(2018年度末)を国籍別にみると中国、韓国、ベトナム、フィリピン、ブラジル、ネパールの順番で、やさしい日本語の需要は高いと言えます。

来日翌日に被災。「何も分からなかった」

イベントに登壇した、スウェーデン出身の漫画家、オーサ・イェークストロムさんも、東日本大震災で被災した経験を語りました。

イェークストロムさんは、2011年の3月10日に日本に移住し、翌日に地震が起こりました。母国スウェーデンは「100年に1回しか地震が起こらない国」とも言われており、地震発生時にどう対応したら良いかも知らなかったといいます。

「だんだん揺れが大きくなって、とても驚きました。地震が起こったら本能としては外に出たいのですが(地震発生時にすぐ)外に出てはいけないと学びました」

また、日本語が分からなかったために、ニュースを見ても映像だけしか分からず、地震の情報が得られなかったそうです。英語の記事やスウェーデンのメディアの記事を探して読んでも「それが本当にあっている情報かわからなかった」とし、やさしい日本語での報道の必要性も強調しました。

Twitter Japanは、災害時のやさしい日本語でのTwitter運用について、政府機関や自治体とも連携を取って、改善を進めているそうです。

同社で災害時のTwitter運用などを担当する服部聡さんは「政府機関は、ツイートにも役所で使う難しい言葉を使いがちですが、どんどん改善されています。多くの自治体に、さらにやさしい日本語での災害時のツイートを取り入れてもらえればと思っています」と話しました。

サムネイル:Getty image