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「なぜ人権問題を扱う法務省が、人権侵害をしているの?」今、入管収容施設の中で起こっていること

トランスジェンダーであることを理由に入管収容施設内で隔離され、自由時間も減らされているトランスジェンダー女性がいます。仮放免や処遇改善を求める署名や嘆願書が提出されました。

「トランスジェンダーであること」を理由に、東京出入国在留管理局(東京都港区)の収容施設内で、隔離されたり、自由時間を大幅に減らされるなどの処遇を受けている、フィリピン人(28)がいる。

トランスジェンダー女性のパットさんは、約1年間、このような状況で収容されてきた。

7月、パットさんに仮放免許可を出すよう求める署名が立ち上がり、1カ月で1万7千筆以上が集まった。8月11日、パットさんの仮放免申請提出の際に、処遇改善や仮放免許可を求める嘆願書と共に入管に提出された。

署名を主宰したのは、入管施設に収容されるなどしている外国人を支援する「#FREEUSHIKU」。署名は、森まさ子・法務大臣と福山宏・東京出入国在留管理局長宛てで集められた。

署名した人たちからは、このような声が寄せられている。

「人を人としての最低限の扱いをすることすらできないのなら、今すぐに仮放免にすべき」

「東京出入国在留管理局は法務省の管轄下にあります。法務省は人権問題を扱う省庁です。人権問題を扱う省庁の管轄下にある東京出入国在留管理局がなぜ人権侵害を続けるのでしょうか?」

印刷され、ファイリングされた署名はこの日、4回目となる仮放免申請の書類提出時に、代理人弁護士や支援者から入管職員に手渡された。

「パットさんが置かれている状況は明らかな人権侵害」

署名を提出したFREEUSHIKUのメンバーはBuzzFeedの取材に対し、「すぐにでも仮放免を出してほしい」と語る。

「パットさんが置かれている状況は明らかな人権侵害です。収容されているだけで追い詰められてしまう状況があります」

「入管は、トランスジェンダーの人々に対し最大限の配慮をしているということであるなら、それは施設として適切に収容できないということです。それであれば仮放免を出すべきです」

パットさんは以前、BuzzFeed Newsの取材に対し、「なぜトランスジェンダーだからという理由で、隔離されるのか分かりません。入管の人たちはLGBTやトランスジェンダーについて正しい理解がないと感じます」と語っている

これは、パットさんが施設内で描いた、隔離されている自身の絵だ。

自由時間も他の収容者が午前と午後で計6時間のところ、パットさんは約4時間短く2時間のみ。他の女性収容者とは自由時間がずらされているため、面会以外では職員以外の誰とも、ほぼ会えない状態だ。

支援者によると、このような処遇でパットさんは「自傷や自殺未遂を繰り返すほど追い詰められている」という。

パットさんの代理人弁護士である高橋ひろみ弁護士はBuzzFeed Newsの取材に対し、「複数の被収容者と同時に面会をする時に話していても、他の被収容者が同じ自由時間であることを嫌がっている様子もありません」と話し、入管の処遇に疑問を呈した。

日本各地の38団体からも処遇改善など求める嘆願書

この日、署名と共に提出された嘆願書には、東北から沖縄まで各地のLGBT支援団体や外国人支援団など計38団体が賛同している。

嘆願書では、ジェンダー・アイデンティティを理由として隔離することを批判。他の被収容者との交流の制限などの処遇を改善し、早期に仮放免を出すよう求めた。

出入国在留管理庁の警備課担当者は6月、トランスジェンダーの外国人の入管での収容や配慮について、BuzzFeed Newsの取材に対し、こう説明していた。

「トランスジェンダーの人々を含む全ての収容者に対し、人権に配慮した適切な処遇をとっています。トランスジェンダーの収容に関しても、戸籍上の性に関わらず、保安上の支障がない限り、本人の要望や考えなどを聞いて配慮しています」

また、隔離についてはこのように話していた。

「その方の身体的な特徴やお考え、ご意向など情報を集め、他の収容者への配慮も必要なため、双方に配慮した上で規律や秩序を大切にしつつ、総合的に判断しています」

「そのため、個室に入るという処遇をしている人もいますし、戸籍上の性の収容者と共に収容されている人もいます」

「本人の問題だけでなく、社会全体の問題」

パットさんは、保持している在留資格の期日をすぎて、不法に日本国内に留まっている状態のオーバーステイ(超過滞在)などを理由に入管に収容されている。仮放免申請を繰り返しているが、これまでは却下が相次いでいる。

フィリピンでは、トランスジェンダー女性を標的にした殺害事件や暴力事件も頻発しており、パットさん自身も学生時代、フィリピンで性的暴行を受けた経験があるため、強制送還は望んでいない。

高橋弁護士は、今回の仮放免申請で署名や嘆願書を提出したことで「本人の問題だけではなく、トランスジェンダーや社会全体の問題であるということが伝わるのではないか」とし、今後については、在留特別許可を得ることを目標にしていくと語った。


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