「息ができない」警察官に首を押さえつけられた黒人男性が死亡。現地では抗議デモが激化

    警察官に首を押さえつけられたアフリカ系アメリカ人の男性が死亡した事件で、現地では警察に対する激しい抗議活動が続いている。

    アメリカ北部のミネソタ州ミネアポリスで5月25日、警察官に首を押さえつけられたアフリカ系アメリカ人の男性が死亡する事件が発生した

    事件の様子を捉えた動画がSNS上で拡散され、現地では警察に対する激しい抗議デモが続いている。

    「息ができない」

    ミネアポリス市の発表などによると、亡くなったのはジョージ・フロイドさん(46)。

    通行人が撮影した動画には、警察官によって路上に組み伏せられ、膝で首を押さえつけられたフロイドさんが「息ができない」と訴える様子が記録されている。その後、フロイドさんは意識を失い、搬送先の病院で死亡が確認された。

    ミネアポリス警察は発表で、警察官たちは偽造通貨に関する通報を受けて、捜査をしていたと説明。

    自身の車の中にいたフロイドさんに出てくるよう指示した際に、フロイドさんが「抵抗を示した」ため手錠をかけたところ、フロイドさんの「体調に異変があった」としている。

    今回の事件に関わった警察官4人は、懲戒免職となった。

    「黒人の命には価値がある」

    アメリカでは近年、警察官がアフリカ系アメリカ人の市民に暴力を振るい、死に至る事件が相次いでいる。

    2014年にはニューヨーク市で、黒人男性のエリック・ガーナーさん(43)が警察官に逮捕される際に窒息死する事件が起き、警察による残虐な行為に抗議し、「Black Lives Matter(黒人の命には価値がある)」と訴える社会問題となった。

    ミネアポリスのジェイコブ・フレイ市長は26日に開かれた会見で「アメリカで黒人だということが、死刑宣告であってはならない」と事件を強く非難した。

    「5分間の間、私たちは白人の警察官が黒人男性の首に、膝を押し付ける様子を目撃した。5分間もの間だ。誰かが助けてと訴える声を聞いたら、助けなくてはならないはずだ。あの時、あの警察官たちは、人間として最も基本的なことができていなかった」

    さらに、フロイドさんの首を押さえつけていた警察官は「罪に問われるべきだ」と言い、管轄の検察官に意向を伝えたと発表した

    フロイドさんのいとこはCNNの取材に、警察官たちは殺人罪で問われるべきだと言い、こう語った。

    「警察は市民のために働き、市民を守るためにいるのに、現場にいた警察官は、彼が助けて欲しいと訴えている間もピクリとも動かなかった。警察官は誰一人として、彼を救おうとしなかったんです」

    抗議デモが激化

    事件が起きたミネアポリスでは連日、抗議デモが続いている。

    フロイドさんが事件当時に訴えた「I can’t breathe(息ができない)」という言葉は、2014年に窒息死したガーナーさんが口にした言葉でもあったとされる。

    そのため、デモでは多くの市民が「I can’t breathe」「Black Lives Matter」などと書かれたプラカードを手に行進した。

    一部では、警察との激しい衝突も発生している。CNNによると警察署に物が投げ込まれ、窓が割れるなどの被害があり、警察側は催涙スプレーで応戦したという。

    また、警察署の近隣のスーパーマーケットなどでは、商品の略奪なども発生していると報じられた

    ミネソタ州のティム・ウォルツ知事はTwitterで、デモが行われている一部地域は「非常に危険な状況になっている。すべての人の安全のために、該当地域を離れ、消防隊や救急隊が現場に駆けつけることができるよう協力してほしい」と呼びかけた。