安倍首相、加計学園問題をめぐり国会 で「印象操作だ」を連発 委員長が注意

    理事長と昭恵夫人の関係性などを指摘された。

    「総理のご意向」などと記した文書の存在をめぐり、議論を呼んでいる学校法人「加計学園」の問題。野党は前川喜平・文科前事務次官の証人喚問や文書などの再調査を求めているが、与党や政府側は応じていない。

    6月5日午前の国会、決算行政監視委員会では関連した質問が民進党など野党から相次いだ。安倍首相が「印象操作」だと繰り返し、議長に注意を受けた。

    その火種になったのは、1枚の写真だ。

    2015年12月、安倍首相と学園の加計孝太郎理事長(左端)とともにワイングラスを掲げる写真。安倍昭恵夫人のFacebookに掲載されている。

    加計学園で監事を務めていたことについて、宮崎岳志議員(民進)から問われた安倍首相。質問に答える前に、写真が印刷されたパネルを出されたことを批判し、強い口調で「印象操作だ」と何度も繰り返した。

    たとえば、こんな内容だ。

    「重ねて申し上げますが、友人であることと、この政策に関与したことは別問題。そういう写真を出して印象操作を一生懸命しておられるが、賢明な国民はこれが別だとよく理解している」

    「だいたい、本当に悪巧みをしようとしたら、そんな写真なんか出しませんよ。3秒くらい考えればわかることなんだろうと思います」

    さらに宮崎議員が掲げたパネルについて、こう批判した。

    「ずっとテレビに映してね。そこに写っている他の方々に印象を被せることは、普通常識があったらしていない。Facebookで出すことと、NHKの中継に出すことは違う。最低限の人間としての常識は持とうじゃないでしょうか」

    最後質問への答弁に至るまでに時間がかかったため、玄葉光一郎委員長(民進)からは2度「質問にお答えください」との注意があった。

    もともとの質問に対する答弁は、こうだ。

    「20年以上前のことだからはっきりした記憶はないが、当選当初から数年間監事をしていた。1年間に1〜2回意見を申し上げた。報酬は1年間で14万円。記憶では確定申告もしっかりした」

    政府専用機に同乗したことについては…?

    宮崎議員はその後、特区の作業部会の中で出された加計学園側の提案書は2枚で、京都産業大の提案書が20枚だったことについて、「熟度が高い提案はどちらか」と質問した。

    これは、内閣府が「今治市の提案のほうが京都府と比べて熟度が高かった」としていることを受けた質問だ。

    安倍首相は再び、「その前にいい加減なことベラベラ言われましたから反論したい」と主張した。

    まずは、加計理事長が2013年5月、安倍首相のミャンマー外遊に同行していたことについてだ。

    宮崎議員は、この質疑の前、加計理事長が政府専用機に同乗していた点を指摘。料金の支払いについて、「所定の料金を支払った」との答弁を得ていた。これについて安倍首相は、こう語った。

    「ミャンマーの同行については、経済界あるいは学校への支援なども含め広く応募があった。加計学園だけではなく、名古屋大や立命館大などからも応募があった」

    「また、加計学園にはミャンマー人の留学生をたくさん受け入れており、日本語弁論大会もやっている。さらに現地に職員もいるし、支局もある。参加するのは当然のこと」

    昭恵夫人との関係については…?

    もう一点は、昭恵夫人と加計理事長の関係についてだ。

    昭恵夫人は2013年、加計学園とフィリピンの日本語学校との協定調印式に理事長と参加していた。また、加計学園系列のチラシにコメントをしたり、アメリカにある関連小学校を訪問したりしている。

    さらに、昭恵夫人はミャンマーで教育支援をしているNPO法人の名誉顧問で、加計学園はこのNPOと事業提携を結んでいる。多くの接点があることがわかる。

    宮崎議員は質疑で「加計学園と昭恵夫人は持ちつ持たれつの関係だ」と指摘した。これについて、安倍首相はこう反論した。

    「加計学園が良いことをやってるのだから、それを一緒にやるのは当然のこと。『持ちつ持たれつ』は印象操作だ」

    民主党時代から検討されていた?

    そのうえで、安倍首相の答弁はこうだ。

    「福田政権、麻生政権で対応不可だった提案は、鳩山政権から速やかに検討となった。提案には設置母体は加計学園と明記されている」

    「加計学園が申請し続けているのが事実。そういう経緯があれば、熟度が増しているという(内閣府の)答弁で問題がないのではないか」

    文科省は今治市と愛媛県が加計学園誘致のために2007〜14年まで計15回申請していた「構造改革特区」への申請をすべて断ってきた。

    その後、第二次安倍政権下で生まれた「国家戦略特区」に再申請し、2015年12月に認定されているからだ。この特区を決める内閣府「国家戦略特別区域諮問会議」の議長は、安倍首相が務めている。

    ただ、安倍首相は加計学園が対象となった獣医学部新設の規制緩和は、民主党政権から検討が続いていると主張。

    「公募のため総理の意向もない」「加計学園ありきではなく、しっかり諮問会議で議論した」とも指摘し、野党側の批判を「印象操作だ」と批判している。

    これに対し、宮崎議員は「構造改革特区と、今回決まった国家戦略特区は別物。混同させるのは印象操作そのもの」と反論している。

    「これはスキャンダルではない」

    安倍首相はこの問題に関して2017年3月、答弁で問題について「働きかけがあれば、責任を取る」と明言している。

    この点について宮崎議員が、「働きかけが証明されたら責任はどうとるのか」という質問に対しても、別の説明を始め、「質問に答えるよう」委員長から注意がされた。

    そのうえで、答弁はこうだった。

    「私の責任をとる。中身については申し上げる必要はない」

    今治市に新設される獣医学部の土地(評価額36億7500万円)は今治市から無償で、さらに事業費の半分(96億円)が市から提供される。また、私学助成金も毎年支給されることになる。

    そのあとに質疑に立った青柳陽一郎議員(民進)は、冒頭、こう指摘した。

    「これはスキャンダルではなく、税金の使い道の問題です」


    BuzzFeed Japanでは、この問題をめぐる各紙の報じ方について【「加計学園」主要5紙はどう報じたか 立ち位置くっきり、社説を比べてみた】という記事にまとめています。