母親に優しい国世界一に輝く福祉大国フィンランド。保育園不足や父親の育児参加の少なさなど、多くの問題を抱える日本と何が違うのか。来日したサウリ・ニーニスト大統領にインタビューした。私たちは、どうしたらいいんでしょう?
父親の育休取得率8割(日本は2.3%)
フィンランドは母子の健康や教育、女性の活躍などを評価する「ママに優しい国ランキング(Mother's Index Ranking)」で1位の常連。2015年は2位(日本は32位)だった。
その子育て支援には、幾つかの特徴がある。
一つ目は「ネウボラ(neuvola)」。「アドバイスの場」という意味で、妊娠期から就学まで、子供の成長だけでなく家族全体を支援する公営サポートセンターだ。すべての自治体にあり、医療面の無料検診だけでなく育児で直面する様々な問題を相談できる。
次に「育児パッケージ」。ベビー服や赤ちゃん用のベッド、布団、母子のケア用品など約50点がパッケージとして無料で提供される。民間団体の発案で始まり、1937年に法制化された伝統的な育児支援だ。
この他にも、母親は約1年の産休を取ることが一般的で、子供が3歳になるまでは在宅で子育てし、その後に職場に復帰する権利がある。父親の育児参加を促進する「父親休業」の取得率も8割に及ぶ。日本はわずか2.3%に過ぎない(2014年度)。
なぜ、フィンランドはこれほど子育て支援に手厚いのか。BuzzFeed Newsは、3月に来日したサウリ・ニーニスト大統領にインタビューした。
サウリ・ニーニスト大統領
1948年生まれの67歳。法学修士。警察署長や判事補を経て、1987年に政界へ。2003〜2007年には欧州投資銀行副頭取も務め、2012年にフィンランド大統領に就任した。
課題は一緒、違うのは......
大統領はまず、「日本とフィンランドは似ているところもある」と指摘した。
女性が出産する子供の平均数を示す出生率はフィンランドで1.8、日本の1.4よりもかなり高いが「十分ではない」という。また、日欧共通の課題である高齢化についても「フィンランドは欧州最速のペースだ」。
少子高齢化という課題は共通している。ではなぜ、フィンランドは日本と異なり、世界一の子育て大国なのか。
「フィンランドの伝統なんです」と大統領は何度も繰り返した。育児パッケージの政策は、1930年代に実現した。「貧しかったフィンランドで、子供とその家庭を支援することが、より良い生活へ至る道でした」
高齢化が進み、その福祉予算が肥大化している現代ではどうか。子育て世代への福祉を圧迫するのではないだろうか。
「両者を対立構造で考えてはいけません。政府は子育て世代も、高齢者もみんなの面倒を見ないといけない。単純なことです」
だが、人数が多く、投票率が高い高齢者の声の方が政治に反映されやすいのでは。
「世界中で一緒ですね。高齢者は投票率が高い。だから、年金改革は難しい。自分の権利を守るのに熱心です。同時に、フィンランドの高齢者は育児支援にも熱心なのです」
最後に、なぜ、育児支援が大切なのかを聞いた。
「子供たちこそが、私たちの未来だからです。私たちの社会の未来です。子供たちがいなければ、未来はありません」