若者を虜にするSnapchatはなぜ消える?――インターネットの逆を行く話

    プリクラは意識した?

    最近よく見る「犬」のセルフィ。このブームを生み出したのが、Snapchatだ。

    Snapchatを立ち上げると、カメラの画面が出てくる。そして、犬や花かんむりなど可愛い加工から、一緒に写っている人と顔面を交換できる変な機能まで楽しめる。

    フィルターを使ったり、友人と顔を交換することもできる。

    ひとことで言うと、「ネタになる写真や動画を撮って友だちに送る」アプリだ。くだらない写真でいい。なぜなら、Snapchatで送られたコンテンツは、開封後10秒ほどで消えてしまうから。

    その場限りで消えてしまうことと、写真加工の面白さが人気を集め、10代〜20代に支持されている。6月、アメリカでは1日あたりのアクティブユーザー数でTwitterを超えた。

    ちなみに、CEOのエヴァン・スピーゲルは1990年生まれの26歳。トップモデルのミランダ・カーと婚約したばかり。

    エヴァンCEOのゴシップは別として、これほど勢いがあるのにSnapchatは謎ばかりだ。日本法人はないし、Twitterの投稿もゼロ。

    そこでBuzzFeed Japanは、アメリカのSnapchat本社にコンタクトを取ってみた。第一声は「日本のメディアで僕たちにアプローチしてきたのは、君たちが初めてだ」。



    どうやら日本メディア初取材らしい。答えてくれたのは、コミュニケーション部門で働くノア・エドワドソンだ。



    「日本のプリクラに似てるけど、意識してるの?」

    犬のギミック以外に、肌がキレイに、目が大きくなっている。

    サンフランシスコで出会ったアメリカ人記者が「Snapchatは、目が大きくなったり顔がアニメみたいになるのが新鮮」だと語っていた。どうやら、アメリカではアジア各国で人気の「写真を盛るアプリ」は普及していなかったようだ。

    「プリクラに影響を受けていると思ったけれど?」と聞くと、ノアは来日時にプリクラを撮ったことがあると答えた。

    「正確に影響を受けたとは言えない。でも、自分の顔が変わるのはやっぱり楽しいのはわかる。目を大きくして可愛くさせたり、あえて変顔みたいな加工をしたりね」

    ネットが普及した今だからこそ、Snapchatは「消える」ことを選んだ

    冒頭で書いたようにSnapchatは友だちに送った写真やテキストが消えてしまう。Facebookなんてお節介にも「4年前の今日のあなたの投稿をシェアしましょう」とまで言ってくる。

    ログこそがネットの良さでもあるのに、なぜこのようなギミックを選んだのだろう?

    彼ら曰く「デジタルなログは便利ではあるものの、不健全な部分もある」からだ。

    例えば、Facebookにテキストや写真を投稿すると「残る」。すると周りからの反応や、ネガティブな反応が来ないかとモヤモヤとした懸念が湧き上がるだろう。本来、考えなくてもいい不安が幽霊のようにつきまとう。

    「誰かに話しかけた言葉は次の瞬間なくなる。短命なんだ。リアルでは、ほとんどの体験が儚い。だから消えて無くなる方が、自然だと思うんだ」

    とはいえ、最高の写真や動画はやっぱり保存しておきたい。Snapchatは自分で撮ったものは「ダウンロードボタン」を押せばローカルに保存できる。TwitterやInstagramに流れる犬の投稿は「動画を作って→ダウンロードして→再アップ」したものだ。

    Snapchatが"説明不足"な理由

    さらに不思議なのが、「右にスワイプ、ここをタップ…」というような使い方の説明がほとんどないことだ。だから一瞬混乱する。

    "説明不足"なのも理由がある。それは「友だち同士で使い方を伝授しあって欲しい」から。説明がないからこそ、「ねーねー、Snapchatの使い方を見せるからさ、始めてみてよ」という具合に、会話のきっかけが生まれるのだ。

    「僕たちのサービスが話のネタになるってクールだと思うんだ」とノアは笑う。

    非公式なものも含め、ネット上にはSnapchatのハウツー記事はごまんとある。自分が発見した新機能があれば、きっとすぐに試して友だちに報告するだろう。ほら、会話のきっかけができた。

    最近、方針転換した?とも言われたけれど

    今月Snapchatは「Memories」を発表した。気に入ったスナップを保存して、振りかえったり再投稿ができるようになる機能だ。「消える」点が差別化だったのに、なぜ方向転換をしたのだろうか?

    「"消えること"は、僕らにとってまだまだ重要」としながら、「選択肢を増やしただけ」という。

    確かに、旅行やイベントって振り返りたくもなる。 "消えていい"おしゃべりもあれば、"消したくない"ものもある。彼らにとって「消える」ことは、選択肢のひとつにすぎなかったのだ。どう使うかはユーザーに委ねられている。

    似ているアプリがあっても気にしない

    最近では、類似アプリも流行ってきた。例えばLINE関連会社発のSNOWなどは本家よりも「盛る」機能などが充実している上に、UIもそっくりだ。

    「確かに似てるアプリはある。でも、Snapchatの方が直感的だと思うんだよね。似ているものがあったとしても、Snapchatの体験の方が、クールだと思っているよ」

    では、彼らの言う最高にクールなアプリとは何なのか。

    「世界で最もパワフルなコミュニケーションカメラになりたいし、友だちとおしゃべりするのに最高のプラットフォームを目指してる。ユーザーがコンテンツを作りやすい環境を用意してあげるだけさ」

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    アップデート

    SNOWをLINE発と記載しておりましたが、LINE関連会社発に変更いたしました。